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ラブレター

作者: べんけい

    ラブレター


 高校二学年がスタートして間もない或る日の授業前、僕はいつものように教材を鞄から机の中に移し入れていると、机の中に封筒が有ることに気づいた。

 その途端、「まさか!」と思い、封筒を掴み出して見ると、封筒には何も書かれていないので中身が気になって仕方がなかったが、「休み時間になったら個室トイレの中に隠れてじっくり確かめてみよう」と思い、封筒を学生服の腰ポケットに仕舞い込み、授業中、封筒の中身がラブレターなのか何なのかとわくわくそわそわして先生の講義は上の空になった。

それもそのはずで僕は黒田順子のことを思っていたのだ。と言うのも彼女は細身でスタイルが良いし、ルックスも好みのタイプだし、おまけに休み時間とかに彼女が明らかに僕の方をチラチラ見ながら友達と話す様子を何回も見ていたからだ。

 それで、「ラブレターの書き手が彼女なら最高だ!」と期待を膨らまさない訳には行かなかった。

而して授業が終わり鶴首して待ち侘びた休み時間になった。

 僕はトイレに駆け込みたい所を普段、トイレに行く時と同様に教室を出て、トイレに入り、個室トイレの中に隠れ、封を開け、手紙を取り出し、急いで広げてみると、一発でラブレターだと分かり、「誰だ!書き手は?」と真っ先に文末の方を見ると、「黒江順子より」とあった。

「あれっ?黒田の間違いじゃないのか?でも、そう言えば、黒江というのがいるなあ。あっ、そうだ、黒田のいつもの相手だ。あっ、そうか、僕を好いてるのは黒田じゃなくて黒江の方なんだ・・・」と分かるや、期待は瞬時に昼の朝顔のように萎んで行った。何故なら器量が芳しくなく無論、気になる子ではなかったからだ。

 一応、恋文を読んでみると、「私、実はあなたの事、中学生の頃から、ずっと気になってたんです。それで、あなたと初めて同じクラスになれて近くで見れる様になれて、やっぱり好いなあって思ってしまったんです。そこで聞きたいんですけど私の事、どう思いますか?『付き合ってもいないのにどう思いますか?と問われても・・・』と思うのでしたら私と付き合う気が有るか無いかの返事でも構いません。文面からも分かると思いますけど私、とても焦ってるんです。早くはっきりしたいんです。ですから、どんな事でも、どんな方法でも良いです。是非、返事をください。私と同じ様にお手紙を私の机の中に入れてくれても良いです。」とあり、「うわあ、困るんだよなあ。こういうの。何で、こう、積極的に来るかなあ・・・確かに付き合わなければ、中身は分からんよ。だけどさあ、恋愛の対象として見た場合、まず見た目が良くないと話にならないから付き合ってもいないのにも何も、そんなもん付き合わない内から本音を言えば、ブスだと思ってますと返事をしなければならないが、まさか、そんな返事は出来ないし・・・僕もはっきりしたいのは山々なんだけど断るとショックを与えるし・・・もうこうなったらラブレターは見なかったことにしよう」と思い、結局、返事を出さなかった。

 すると、ラブレターをもらってから一ヶ月位経った、或る日の授業前、僕はいつものように教材を鞄から机の中に移し入れていると、またもや何も書かれていない封筒を手にする事になった。

 当然、「また、黒江からだあ・・・」と僕は鬱陶しく思い、今度は不吉な予感がしたが、兎に角、前と同じ手段で読んでみると、「もう返事しなくても良いです。何故って私、宇治金時が大嫌いだからです。」と書かれてあった。

 案の定、痛い仕打ちを食らった僕は、「やっぱり、そう思うか・・・」と腑に落ちた。そうなのだ。僕はラブレターを見て以来、黒江を無視しようとしても彼女の視線をどうしたって意識してしまうし、彼女に断りたくても断れないのでクラス内で、うじうじしていたのだ。


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