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1話 2つめの街

〈勇者は聖女を仲間に誘った。〉

〈勇者は聖女を消してしまった!〉


 ステータス画面のログを見て、賢者と魔法使いは顔を見合わせた。

「……どういうことだ」

 魔法使いの男が呟く。

「神殿に行ってみるしか無いやろ」

 賢者の少女が言って駆け出した。


 ここは、「2つめの街」。この街の神殿には聖女がいる。勇者一行は、聖女を仲間に加えるためにこの街を訪れていた。街に着いてから、勇者は一人で神殿に行ったのだ。



 青年は途方に暮れていた。勇者である。

 聖女を仲間に誘っていたら、その聖女が突然消えてしまったのだ。

「ちょっと、勇者! どないなっとうねん!」

 賢者が駆けつけてきた。

「いや、俺もよく分からなくって」

 困り果てて言うと、

「ログは⁉ 何て書いてある⁉」

 賢者が勢いよく尋ねてくる。

「えーっと……あ、これ」

 勇者は自分のステータス画面を見せた。


〈勇者は次元転送を使った!〉


 次元転送は、相手を次元の狭間に消し飛ばすスキルだ。レベル100にならないと使えないはずの。

 賢者は驚いて、改めて勇者のステータスをじっくり見た。


〈勇者 レベル10

 HP 500/500  MP 20/20

 攻撃 100(+20)  防御 50(+20)

 スキル(オート) 通常攻撃強化 

 スキル(MP消費) 一閃(10) 二連撃(10) 次元転送(40000)〉


「いや、おかしいやろ! 何で次元転送なんか使えるん⁉」

「俺が知りたい! 聖女と話してたらいきなりステータス画面に湧いて出てきたんだ!」

「そんで、出てきたからって使ったんか⁉」

「使ってない! ログ見るまで発動したことも知らなかったんだぞ!」

「勝手に発動した言うんか⁉ んなアホなこと……」

 賢者と勇者が言い合っていると、

「2人とも、ストップ」

 遅れてやってきた魔法使いが止めに入った。



「最悪や」

 賢者は顔をしかめて言った。手には「導きの書」を持っている。

「導きの書」は賢者が女神から与えられた本で、勇者一行が習得可能なスキルや行くべき場所などの情報が事細かに載っている。

「回復スキルを使えるようになるんは聖女だけ。聖女がおらんと魔王と戦うなんか無理や」

「どうしたら良いのか、女神に聞いたりは出来ないか?」

 賢者の言葉に魔法使いが言った。

「無理や。女神と交信できるんも聖女だけやねん」

 賢者は言って、嘆息した。何か手はないかと、「導きの書」のページをめくっていく。

「……ジョブチェンジを利用するとか」

 勇者が言った。

 ジョブチェンジは、3つめの街の神殿の神官が担う。適正のある別の職業に変えてもらうことができるのだ。

「聖女に適正ありそうな人を連れて行って聖女にするんか……」

 悪くない、と賢者は思った。

 聖女は1人と決まっているが、現在、聖女不在である。適正さえあれば、誰でも聖女になれる状態なのだ。

「適当に何人か女の子を見繕って連れて行こう」

 魔法使いの言葉に、

「いや駄目だろ、誘拐じゃないか」

 勇者が反対する。

「あんたが言い出したんやろ」

 賢者が勇者をジト目で見て言った。

「ほら、俺は誰のステータス画面でも自由に見られるだろ? だから、現在の職業が回復系の人に声をかけて……」

 勇者が途中まで言った時、爆発音がした。

「何や⁉」

 賢者が慌てて神殿から飛び出す。

 外では、怪物が暴れていた。魔王の手下だ。

「嘘やろ、ありえへんって」

 その怪物を見て、賢者は目を見張った。

「4つめの街に出て来る奴やんか!」

 その言葉を聞いた勇者と魔法使いは

「え、何それ無理」

「……見なかったことにしよう」

 逃げようとした。

「アホー! あんたそれでも勇者か! 放っとったら街が滅びるんやで⁉」

「いや、だって、無理だろ。俺たちのレベルで敵う相手じゃない」

「そういう問題とちゃうっちゅうねん! あー、もう! 私は1人でも戦うで⁉」

「……どうやって?」

 魔法使いの問いかけに、賢者はハタと気付いた。

「そうやった……私、攻撃手段無いやんか……」

 賢者は補助職である。消費MPの軽減やバフ、デバフなどを担うのだ。

「はぁ、しょうがない」

 魔法使いが溜息を吐きながら、

「自分があれを倒して見せよう」

 前に出た。


〈魔法使いは氷柱を使った!〉

〈魔王の手下を倒した!〉


「出来るんやったら早よやれー!」

 落ち着きを取り戻した街に、賢者の声が響き渡った。




「そこの薬師のお嬢さん、聖女になる気は無いかな?」

 勇者が話しかけると、その薬師は警戒の目を向けた。

「何かの怪しい勧誘ですか」

「ちゃうねん、こいつの言い方やとそう思われてもしゃあないけど」

「勇者をこいつ呼ばわりするなよ」

 勇者がボソリと文句を言うと、

「ジブンが何したか忘れたんか⁉ あの行動のどこが勇者やねん!」

 賢者は思い切り勇者を睨みつけた。

 その間に魔法使いは薬師に説明をし、了承を得た。



 その後も勇者一行は声かけを続け、5人の聖女候補が集まった。

「魔法使いのステータスがおかしい」

 勇者が唐突に言った。

「何やねん」

 賢者は冷ややかだ。

「俺たち皆レベル10で、大した攻撃力じゃないはずなのに……魔法使いの攻撃力だけ桁が違う」

「ああ、逃げようとした直後に突然上がった。意味が分からない」

 魔法使いは賢者にステータス画面を見せた。


〈魔法使い レベル10

 HP 400/400  MP 20/30

 攻撃 1200(+20)  防御 40 (+20)

 スキル(オート)  

 スキル(MP消費) 火炎 (10) 氷柱 (10)〉


「確かに桁違いやな……それで勝てたんか……」

 賢者は困惑した顔で言った。

「早よ誰かを聖女にして、女神に聞かなあかんな。何が起きとんですかって」


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