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第7話 姉妹

 俺は考えた。どうすればブロンドの娘と呼ばれていた使用人が見つかるのかを。


 それで、取り敢えず2つほど考えついたことがある。

 まずは、情報収集の相手を切り替える事だ。


 今まではブロンドの娘と呼ば・・・ああ、面倒くさい、ブロン子でいいや。

 ブロン子の居場所を知らないかと、大人に聞いてきたが、それを子供に切り替えたらどうなるか。


 子供は無知だ。

 街の大人は皆、豚(お父様)を怖がって何も話してくれないが、子供には、豚のなにが怖いかがわからない奴も居ると思う。


 だからそういった、バカな子供に標的を変えれば、ブロン子の情報が集まるかも知れない。


 しかし、ブロン子のことを気にして居るであろう大人とは違い、何も気にしていない子供なら、見たとしても覚えていない可能性のほうが高そうだ。


 ブロン子の容姿を伝えようにも、俺のブロン子の印象は、金髪に使用人の服を着ていた、というものだけだ。


 金髪なんていくらでもいるし、今も使用人の服を着ているとは考えづらいから、金髪の女性を探しているなんていっても、違う人間のもとに案内されるだけだろう。


 取り敢えず保留だな。


 そしてもう一つ、俺が探して居るのは情報。

 なら、情報屋に聞いて仕舞えばいいじゃない、と考えた。


 しかし、情報屋なら、今かなり目立って居るはずのブロン子の情報は確実に持っているであろうが、それを話してくれるかは別問題だ。


 念のため、豚から渡されたお金も持ってきているが、関わるだけで処罰される人間の情報を、果たして売ってくれるのか、そこが問題だ。


 それともう一つ、俺には情報屋の場所がわからない。

 いや、それどころか、情報屋なんて存在しているのかすら定かではない。


 前世の価値観ではでは、魔法のあるような世界なら、情報屋があるものだという認識があるが、果たしてこの街にあるのかどうか。


「一応探すだけ探すか」


 まずは情報屋を探そう。

 情報屋を探すだけなら、街の大人も口をつぐんだりしないだろうから、大人から情報屋について聞き出そう。


 そう思い、周りを見回して見たが、ちょうどこの近くには、ものすごい強面のおっさんと、やんちゃそうなガキと、杖をついてゆっくりと歩く年老いたジジイと、俺と同い年くらいの、気弱そうな女の子しかいなかった。


 どうするか。


 強面のおっさんには、関わらなくていいだろう。

 明らかにヤのつく人の気配だ。

 いきなり懐から拳銃を取り出しても不思議じゃない。


 いや、この世界で拳銃なんてあったら、不思議の塊でしかないが、雰囲気の話だ。


 だから取り敢えずやめておこう。そんな人間に関わる必要はないしな。


 次にやんちゃそうなガキだが、考えている間にどこかへ走り去っていった。つまりもう不可能だ。


 落ち着きのないガキだな。


 そして、年老いたジジイだが、明らかにボケていそうだ。

 無駄な時間を使う意味はないだろう。


 個人的にはボケた年寄りは大好きだ。

 だってあいつらは生きているだけで周りに迷惑をかける、最高の人間だ。

 是非とも長生きしてほしいと俺は心から願っている。関わりたいとは微塵も思わないが。


 前世の価値観でも、老人は自分よりも長く人生を頑張って生きてきた先達者達だから、敬意も払うべきだし、できるだけ長く生きて、余生を満喫して欲しいという願いもある。


 考えていることは善と悪で真逆だが、共に長生きして欲しいという願いを持っている。


 関わりたくはないが。


 というわけで、残りは気弱そうな女の子しかいない。


 しかし、正直この子に聞いても、まともに答えてくれる印象を抱けない。


 こんな子供が情報屋について知っているのかも定かではないし、それに、よく見てみると、この女の子は今にも泣きそうな不安そうな顔をしていた。


 だから、情報屋についてはこの子から聞いても意味が薄い気がする。


 だが、この女の子の不安そうな顔が気に入った。

 もっと不安にさせて、泣かせてやりたいとは思うが、好感度を稼ぐことを優先しよう。


 困っていそうな女の子がいたら助けるものだと、前世の価値観も言っている。


 俺の場合、困っている女の子がいたら、さらに困らせてしまいたくなるが、ここは我慢しよう。


 それに、気弱そうな奴は、前世の記憶的に声が小さいと相場が決まっている。

 たとえ感謝してきても、気のせいという事に自分を誤魔化しやすい。


 つまり、助けるのにうってつけだろう。


「・・・おねぇちゃん・・・どこ・・・」


 ああ、迷子か。

 そして、予想通り声が小さい。

 完璧だな。


「どうしたんだ、何か困っているのか?」


 はぁ、しかし、今から俺は人助けをしようとしているのか、最悪の気分だ。


「え?だぁれ?」


「ん?俺はイヴィル・ハウントだ、お前は?」


「カリュ??カリュはカリュだよ?」


 カリュ、言いにくい名前だな。


「そうか、カリュ、お姉ちゃんと逸れたのか?」


「え?なんで知ってるの?なんで?ねぇ、なんでカリュがおねぇちゃんとはぐれたこと知ってるの?」


 ウザッ。


「さっきのカリュの独り言が、たまたま聞こえたからな」


「え?そうなの?でもカリュはおねぇちゃんどこ、しか言ってないよ?なんではぐれたって分かったの?ねぇなんでなんで?」


 ウザッ、ウルサッ。


「カリュが不安そうにしていたからな、はぐれたんだろうと思ったんだ、俺も探すのを手伝うよ」


「なんで?なんでカリュのおねぇちゃんを探すの手伝ってくれるの?カリュのおねぇちゃんはカリュのおねぇちゃんだよ?イヴィル君が探す意味ないよ?なんで?ねぇなんで?」


 ウッザァァァー!!!!

 こいつウッザァァー!!!!


 俺がせっかく嫌々ながら好感度のために手伝ってやろうって思ったのに、んな意味のわからんことを聞いてくんじゃねーよー!

 なんだよ、カリュのおねぇちゃんはカリュのおねぇちゃんって、当たり前すぎて逆に訳分からねえよ、は?


 ううー、我慢我慢、子供のたわごとにいちいち反応するなんて無駄だ無駄。


「カリュは、お姉ちゃんを探していたんだろう?だから、俺はカリュのお手伝いをしようと」


「カリュのお手伝いをしてくれるの!?なんで?カリュ、イヴィル君に会うの初めてだよ?カリュ、イヴィル君のこと知らないよ?なんで?ねぇねぇ、なんで?」


「カリュが困っていそうだったからな、困っている人を助けるのは、当たり前のことじゃないか」


 うぇぇぇ、きっつ、つら、こんな馬鹿みたいなこと言わないといけないの?


 好感度稼ぎって大変だな。


「えー?なんで?なんで当たり前なの?カリュは」


「あ!いたー!勝手にいなくなって!どこに行ってたの!?もう!」


 遠くから、大きな声を出しながらこちらに走ってくる人が見えた。

 多分カリュの姉だろう。


「えー?なんで?なんでカリュが怒られるの?おねぇちゃんがいなくなったんだよ?ねぇなんで?なんでカリュのせいなの?」


 どうやら、姉と無事に合流できたようだな。

 カリュの姉はほとんど同じような見た目をしている。

 唯一にして最大の違いは髪の毛の色か。


 カリュの方の髪の毛の色はピンク色で、姉の方の髪の毛の色は紫色の髪の毛をしている。


「私はお姉ちゃんなのよ!だから私は悪くないわ!」


 ふ、なんだそのとんでも理論。


「えー、なんでー?なんでおねぇちゃんはカリュのおねぇちゃんなの?」


「それはね、私がお姉ちゃんだからお姉ちゃんなの」


 なんだこいつらの会話は?訳がわからない、俺がおかしいのか?

 これはいつまでも聞いてたって仕方ないな。


 話をぶった切ってでも声をかけるか。


「えー?なんでー?なんで、」


「良かったな、カリュ、お姉ちゃんが見つかって」


「うん!ありがとう!イヴィルお兄ちゃん!」


 ッチ、ウザ、こいつまじうざい。

 他人に感謝するなんて真っ当な人間かよ。

 さっきまで、なんでなんで、としか言ってなかったのに、急に感謝してくんなよ、はぁ、気が滅入る。


 だいぶ気分が悪くなってきた。

 キッツイ、もうベットで休みたい。


 こいつ見た目も仕草もモジモジとしてていかにも気弱そうで、感謝とかも、聞こえないくらい小さい声でしか言わないだろうな、って思ったから助けようとしたのに。

 ふっつうに大きな声で感謝してきやがった。


 教育がなってない!

 感謝なんて、相手に聞こえてしまったらダメだろうが!


 当てが外れたな。


「ちょっと!カラウ、お兄ちゃんって何!私がカラウのお姉ちゃんなんだから!あんた誰よ!」


「俺はイヴィル・ハウントだ」


「そう、私はメギーリア・ルゥよ!いい!カラウのお姉ちゃんは私よ!誰にも譲らないわ!」


 譲らなくて結構だ。


「でも、迷子のカラウの相手をしてくれてたことには・・・その、そう、褒めてあげてもいいわよ!」


 いらん、マジでいらん、本当にいらん。


「えー?なんで?なんでカリュが迷子なの?迷子はおねぇちゃんだよ?」


「違うわ!カラウが逸れたのよ!私じゃないわ!」


「えー?なんで?なんでカリュなの?おねぇちゃんがフラフラ何処かに行ってたんでしょ?ねぇなんで」


「ついてこなかったカラウが悪いのよ!」


「えー?なんで?なんで」


 これを俺はいつまで聞かされるんだ?

 もうカリュの姉は見つかったし、別の場所に行ってもいいか。

 そうだ、ついでに情報屋について聞くだけ聞いてみるか。


「メギーリア、この街に情報を取り扱っている店はあるか?」


「え?何よいきなり?情報?情報屋のこと?それなら街の西側の方にある、黄色い屋根の大きな建物に入って左側の方に行くとあったはずよ」


 マジか、こんなに簡単に情報屋の場所がわかるとは思わなかった。


「分かった、・・・もう逸れるなよ」


「はーい!」


「当然よ!」


 感謝する、その一言を言葉にすることができなかった。

 やっぱり、俺は他人には感謝できないんだろうな。


 俺はこの姉妹と分かれて、情報屋のある街の西側に向かった。

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