第27話 魔石とインフラ
俺は書斎で本を漁っていた。
黒髪の少女が落ち着くまで、しばらくはここで過ごそう。
さて、何を読むか。
「[魔石とインフラの関連性]?なんだこれ?読んで見るか」
[魔石とインフラの関連性]
皆は不思議に思ったことはないだろうか?
何故、街灯は光っているのか?何故、噴水から水が溢れ続けているのか?何故、スイッチを押すと水や火、冷気や暖気、お湯が出てくるのか?何故、街に魔物が寄ってこないのか?
何故、何故、何故?
そういった疑問を持ったことはないだろうか?
私はある。故に、調べてみた。
これらの現象が起こる理由は全て、魔力の込められた魔法陣によって発動する魔法の効果である。
しかし、魔法陣は、魔力を込めなければ効果を発揮しないにもかかわらず、ただスイッチを押すだけで火や水が出たりするのは何故か。
それは、各町の冒険者ギルドの地下には、巨大な魔石があると言われており、その魔石から魔力を流す導線が、無数に伸びており、各魔法陣に繋がっているからである。
その巨大な魔石は、ドラゴンの魔石だと言う噂もあるくらいの巨大な魔石らしい。
実物はギルドの上層部と、国の一部の人間しか見ることができないため、実際の大きさはわからないが、かなり大きいのであろう。
今、我々の生活は、ギルドにある巨大な魔石によって成り立っていると言っても過言ではない。
つまり、前世で例えると、魔力が電気で、ギルドが発電所で、そのギルドにある巨大な魔石というのが原子力発電みたいなもので、魔力を流す導線っていうのが電線で、魔法陣が冷蔵庫やエアコンなどの機械で、魔法が化学反応みたいなこと、ってところか。
もっと簡単に説明してくれればいいのに。
(なによ、その電気だの化学反応だのって言うのは?)
魔法の代わりのエネルギーみたいなものだ。
(ふーん)
・・・
(・・・それだけ!?続きは!?)
無いな。
(いや、もっとこう、何かあるんじゃないの!?詳しく教えなさいよ!)
そんなものはない、・・・説明がめんどくさい。
(それがあなたの本心ね!?)
はいはい、俺は続きを読むから少し黙っていろよー、本を読んでいる人の横で騒ぐのはマナー違反だぞー。
(適当にあしらうんじゃないわよ!そんなマナー知らないわ!それに、横じゃなく中で騒いでいるもの!なんの問題もないわね!)
はいはいはいはい。
(面倒なの!?私、めんどくさい女なの!?)
うん。
(即答!?躊躇なし!?酷いわ!泣くわよ!?貴方の中で泣き続けてやるわよ!?よよよ、よよよよよ)
・・・さて、続き読むか。
我々の生活に、魔法は密接に関わっている。
しかし、魔石と言うものは、内蔵されている魔力がかなりあるものの、無限ではない。
使い続ければ、いつかは枯渇する。
私は研究のために大小さまざまな魔石を買い取って、一体どれほどの魔力貯蔵量があるのかを実験してみたことがある。
詳しくは[魔石の魔力含有量調査実験レポート]を読んでほしい。
結論から言うと、思ったよりも魔石に含まれている魔力量というのは少ないのだ。
勿論、少ないとは言え、結構な魔力量ではある。
だが、我々民が生活で使用する魔力の総量を考えると、微々たるものである。
ギルドは積極的に魔石を買い取っている。
それは、おそらく巨大な魔石の魔力の消耗を抑えるためだと思われる。
魔石は魔物の体の一部だ。
だから、魔石を壊さずに魔物を倒せば、魔石は手に入る。
しかし、一般的な魔物討伐では、魔石を破壊する事が多いため、倒される魔物の数よりも、手に入る魔石は圧倒的に少ない。
その辺りのことを詳しく書くと、とても長くなるため、興味がある方は[魔物の生態、動物との違い]や、[一般的な魔物との戦闘方法]、[魔物の弱点]などを読むとわかりやすいであろう。
魔石はギルドが高価で買い取るため、一部の冒険者は、魔石や魔物の素材を売って生活をしていると聞くが、しかし、それでギルドが手に入れる魔石の魔力の総量が、我々民が日々の生活で使う魔力の総量を下回っていることは確実だろう。
だから、その下回った分を、巨大な魔石が補っているという事だと、最初は思っていた。
しかし、よく考えて見ると、この魔石は最低でも300年ほど昔からギルドの地下に存在する。
正確な数値は分からないが、300年以上昔であることは間違いない。
何故なら、私が生まれた時から、もうすでにギルドは存在していたからだ。
いくら巨大な魔石とは言え、300年以上、魔石を枯らすことなく使用し続けるのは、不可能なのでは無いかと、私はそう考えた。
もしくは、もう枯渇寸前なのでは無いかと。
勿論、私の知らない技術や、なにかしらの画期的な方法で、魔石の魔力消費を抑えているのかもしれないが・・・。
私の頭には、一つの考えが浮かんでしまい、それがこべりついて離れない。
これを書いてしまうと、ギルドへの批判となってしまうため、ここには書かないが、次は私はギルドについて詳しく調べて本に記そうと思っている。
もし、これから私が失踪をしたり、これ以降私の本がなければ、いいや、よそうか。
単なる憶測で物事を語るべきでは無いな。
話を戻そう。
平民は基本的によほど裕福でもなければ魔法は学べないため、魔法を使える平民は少ない。
しかし、平民だからと言って、魔法が使えないからといっても、我々の生活の身近なところに、魔法が深く関わっている。
我々は魔法無くしては生きていけないのだ。
だから、いくらでも使えるからといって、水を出しっぱなしにしたり、平民の一人一人が無駄な魔力を消費し続ければ、いずれギルドの魔石の魔力が無くなり、今のインフラが全て停止してしまい、この快適な生活が送れなくなるかもしれない。
それが百年後なのか、千年後なのか、はたまた1年後、もしかしたら明日にでも、魔石が枯れてしまうかもしれない。
だから、一人一人が魔力を節約す
飽きた。
(ちょっと!こんなところで終わりなの!?)
いや、まあ良いだろう?
(あなた、気持ち悪くならないの?こんな中途半端で?)
別に、気持ち悪く無いな。
それに、飽きたんだから仕方ないだろう。
(あなたって飽き性ね)
治したいところではあるが、面倒だ。
さて、次の本でも読むか。
・・・飽きた。
もうそれなりに時間は経っているし、黒髪の少女のところに戻るか。
黒髪の少女の部屋に向かう途中、ふと窓から外を見てみると、庭の掃除をしているエメラとエルミの姿が見えた。
その姿は対称的だった。
エメラは、とても慣れた作業といった感じで、スムーズに、一度たりとも止まることなくサクサク掃除しているのに対して、エルミは、まだ慣れていないからか、あまり速度は速くない。遠目から見ても手や肩に力が入りすぎているし、一部の掃除が終わった後に、周りをキョロキョロして考え込んでいる時間が長い。
しかし、必死にやっているというのは伝わってくる。
どっちが頑張っているか?と聞かれたら、エルミの方が頑張っているのだろう。
だが、掃除の速度は圧倒的にエメラの方が早い。
体も年も、エメラの方が小さく、エルミの方が大きいのに、この景色を見ていると、雰囲気が落ち着いているエメラの方が大人に見える。
エルミは、必死に頑張っているのはわかるんだが、小さな子供が精一杯背伸びをしている感じがする。
あ、エルミが俺の存在に気づいた。
軽く手でも振っておくか。
さて、いつまでも見てないで、行くか。




