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第20話 エメラ

 俺はブロン娘を探すために、街中を適当に歩いて、色々な人にブロン娘のことを聞いて回っていた。


 しかし、結果は芳しくない。

 みんなブロン娘のこと話題に出した途端に、顔に恐怖を浮かべて、逃げるように去って行く。


 まあ当然か。だが、なかなか楽しいな。恐怖に怯える奴らをみるのは。


(その、ブロン娘?って子は何をしたの?街の人、みんなブロンドの娘の話をした途端に怖がって去っていくけど?)


 ブロン娘が何かしたと言うよりも、ブロン娘と関わって、豚に目をつけられるのが怖いんだろうさ。


(豚?豚って何かしら?)


 ああ、豚はお父様のことだ、豚がブロン娘に関わった者は処罰するって言っているからな、もし俺にブロン娘のことを話して、ブロン娘と関わったなんて思われたくないんだろう。


(そう、ねぇ、ブロン娘ってどんな娘?)


 正直、あまり知らない、名前すら知らないからな。


(え?ブロン娘って、名前じゃないの?)


 名前じゃない、ブロンドの娘を略しただけだ。


 前世の記憶を取り戻した後は一度もあっていないからな。

 一応前世の記憶を取り戻す直前に会ってはいるが、あの頃は使用人に興味をほとんど持っていなかったから、容姿くらいしか知らないな。


(ふーん、それじゃあ探すの大変そうね?)


 そうだな、だがどうしても見つけたいわけじゃない。

 勿論見つかった方がいいのは確かだがな。


 そうやって、俺はイヴィラと心の中で会話しながら街中を適当に歩き回り、街の中央あたりの広場を通りかかった。


 そのとき、とある絵が俺の目に飛び込んで来た。


「あれは、ブロン娘?」


 その絵は、ブロン娘が描かれていた。

 かなり上手い。写真、とは違うが、間違いなくかなり腕の立つ芸術家が書いたに違いない出来だ。


 細かな容姿の特徴等は覚えていないが、かなり細部までしっかりと描かれている。


 そして、その絵の横に、張り紙があった。


 張り紙には簡潔に、こう 書いてある。


 この、ブロンドの娘に関わった者は、ジョンヒアドー・ハウントの名において処罰する。


 ジョンヒアドーは、豚の名前だ。

 なるほど、こうやって街の人間に広めたのか。


 広場に似顔絵があるとなれば、豚の恐怖を知る人間なら必ず一度は見に行くだろう。


 知らず知らずのうちに関わっていて、家族が不幸になりました、なんてなると堪ったものじゃないだろうからな。


 そう言えば、ブロン娘の名前は書いてないのか?


 そう思い、もう一度絵を見てみると、絵の下に名前が書いてあった。


 エメラ・ブロンドと。


「っ!?」


(な、何これ!頭が、っっ!!)


 そのとき、俺には不思議な光景が見えた。






 グサッ!


「・・・ぇ、え、めら?」


「ずっと、ずっとこの時を待っていました」


「な・ん・・・・で・・・・・」


 バタッ!


 ・・・


「・・・なんで、なんでだよ!エメラァァァァァァ!!!!!!!」


「ご主人様、言ったはずです、私は復讐に生きると」


「っ!ーーーーは関係ないだろう!」


「関係あります、ーーーーは教皇の娘です、」


「っ!そんなのなんの関係もない!ーーーーが何したってんだよ!?」


「ーーーーは教会の者です、私は、両親を罠にはめて殺した教会を、決して許しません」


「っ!友達、だったんじゃなかったのかよ!あれだけ楽しそうに話してたじゃないか!」


「・・・ですが、私は復讐に生きると決めたのです、もう、私は戻れません」


「・・・ふ、」


「なんで、こうなっちまったんだよ、」


「ふはは、」


「なんで、なんで!なん・・・で、」


「フハハハハ!」


「・・・なんで笑ってんだよ!イヴィルゥゥゥゥ!!!」


「これが!これが笑わずにいられるか!ふ、ふはは!ふはははは!!!!!あぁ、最高だ!最高の道化だなぁ!?エーメーラァァ!」


「道化、ですか?」


「ああ!そうだとも!騙されて、なーんの関係もないーーーーを殺したんだからなぁ!道化以外の何者でもないじゃないか!」


「騙されて?ーーーーは、教会の者です、決して無関係では」


「だぁかぁらぁ、教会が、無関係だって言ってんだよぉ!」


「え?」


「お前はなぁ、最初っから騙されてんだよ!ふ、ふはは、ふはははは!いいこと教えてやるよ!お前の両親を罠にはめて殺したのはなぁ、教会・・・じゃない」


「なにを、言って」


「教会じゃないんだよ!そう、お前の両親をハメて殺したのはな、」






「っ!?」


 なんだ、今のは!?

 頭に、直接映像が流されたかのような、忘れていたものを思い出したかのような、そんな感覚だった。


「っ!くっ!」


 頭が、酷く痛む。


(なに、よ、この痛み、それに、さっきの風景はなに!?)


 っくぅ、イヴィラも、見たのか?


(っ、ええ、でも、何か、変だったわよね)


 変?何もかもが、変だろう、俺の知らない奴がいたし、何より俺が青年になっていて、エメラもこの絵より大人になっていた。


 変なところを上げて言ったらきりが無いぞ。


(でも、もっと、何か決定的におかしかったような)


「ねぇねぇ?大丈夫?なんでうずくまってるのー?頭痛むの?なんでー?病気ー?ねぇねぇ、なんで?」


 っ!?

 ひどい頭痛で全く気づかなかったが、いつの間にか、俺の隣に昨日会った少女がいた。


 確か、カラウ、だったか、カリュだったか、そんな名前だった気がする。


「病気じゃない、ただ、頭が痛むだけだ」


「ねぇ、なんで?なんで頭が痛いの?カリュは頭痛くないよ?なんで?ねぇなんでー?」


 お前の話ししてねぇだろ!?


 っ!・・・ただでさえ頭が痛いってのに、こんな頭が痛くなる奴と話なんてしたくない。

 だが、好感度を稼がなければならない関係上、邪険に扱うわけにもいかない。


 はぁ、仕方ない、頭は痛むが、相手をするか。


「あ、もしかして!おばぁちゃんなの?」


 は?

 なぜこのガキは俺を見ながらお婆ちゃんと言った?

 目が腐ってんのか?


「おばぁちゃんも、よく頭が痛いって言ってるよ?くっ、ふーいんされた、かつての記憶がー目覚めようとしているー、まだじゃー、まだそのときではなーい!とか、よくいってるよ?それと同じ!」


 やめろ、俺をそんな厨二病患者と一緒にするな!


「それとは違うな」


「なんでー?おばぁちゃんもイヴィル君も頭が痛いよ?カリュは痛くないよ?だからイヴィル君はおばぁちゃんだよ?」


 決めつけんな!俺はそんな厨二病患者の老害じゃねぇ!


(子供って、訳がわからなくて面白いわよね、そう思わない?イヴィルお婆ちゃん?)


 やめろ!ふざけるな!イヴィラは傍観者だから面白く感じるだけだ!こんなガキとまともに会話しなきゃならない俺の身にもなれってんだ!


 にしても、こいつまた一人か。


「今日もお姉ちゃんと逸れたのか?」


「えー?なんでー?おねぇちゃん、今日は家のお手伝いでしょ?」


 でしょ?って言われても俺が知るかよ!

 こいつには、いちいち真面目に相手する意味がない気がするな、適当でいいか。


「そうなのか」


「えー?なんで知らないのー?カリュは知ってるよ?朝おねぇちゃん言ってたよー?ねぇなんで?なんでー?」


 うっざ。


「俺はカリュじゃないからな、俺は俺だ」


「へー」


 そうだ、ちょうどいいから、エメラ・ブロンドについて聞いてみるか。


「なあ、カリュ、俺はエメラ・ブロンドっていう人を探しているんだが、見たことないか?」


「だれー?カリュはカリュと、おねぇちゃんと、おじぃちゃんと、おばぁちゃんと、おとーさんと、おかーさんしか知らないよ?あ、あとイヴィル君!」


 ま、知らないか。


「そうか、もしエメラ・ブロンド、この絵に描かれた人を見かけたら、今度俺に教えてくれ」


 そう言って、俺は絵を指差し、踵を返した。

 これくらい相手をしてやったんだから、もういいだろう。


 ああ、頭が痛い。

 さっきの映像が頭に流れたせいで、今日はもう探索する気分じゃなくなった。

 まだ早いが、家に帰るか。


「あ、この人見たことあるー」


 ・・・意外なところに手がかりがあった。

 タイミングの悪い。

 これじゃあ流石に帰れないか。


 はぁ、手がかりが見つかったことを喜ぶべきなのか、それとも頭痛がひどいのに家に帰れないのを嘆くべきなのか。


「どこで見たんだ?」


「えっとね、カリュのおねぇちゃんがよく行くあの店の横で見たよ?」


 そんなんで分かるわけねぇだろうが!


「その場所まで案内してもらえるか?」


「うん!いいよー!こっちー!」


 そう言って、カリュは走り出した。


 早いって!こっちは頭痛いんだからゆっくり行かせてくれよ!


「待ってくれ!」


 俺がそう声を掛けても、残念ながらカリュは止まる気配がない。


 聞こえてないのか、無視したのか。


 はぁ、見失わないように走るしかないのか。

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