表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/36

第19話 三流暗殺者

 朝目が覚めた俺は、朝食を取り、とりあえず部屋に帰ってきた。


 残念ながら、非常に残念ならが、栄養重視にしてもらった食事も美味かった。

 仮にも領主の家で働いている料理人だ、腕は確かなのだろう。


 味自体は、昨日食べた肉よりは劣っていた。

 だが、イヴィラの、


(うん!これはこれで悪くないわね!)


 と言う発言がとても不愉快だった。


 まずい飯が食いたい。

 思わず悶絶してしまうほどのゲキマズ料理が食いたい。


(多分そんなことを思う人なんて、あなただけじゃないかしら?)


 そうか?


(そうよ、よくここまで価値観が歪んでるわよね)


 褒めてもなにも出ないぞ?


(褒めてないわよ!あ、そういえば、昨日あんた、近いうちに死ぬって言ってたわよね!あれって何!?どう言うこと!?)


 どう言うことも何も、そう言うことだが?


(あんた病気か何かなの!?それとも自分の死ぬ未来でも見えるわけ!?)


 そんな訳ないだろう。


(ならなんで死ぬのよ!)


 ・・・そうだな、イヴィラは俺の精神内にいる、イヴィラをどうにかする算段がつかない内は、ずっと共にいることになるんだから、伝えておくか。

 俺の目指す道筋を。


(え!?私をどうにかする算段を立ててたの!?)


 今の俺の精神状態ががどうなっているかは分かるか?


(無視!?無視なの!?)


 わ、か、る、か?


(え、ええ、分かるわよ、・・・本当、不思議よね?これほどまでの正義感と悪心が同居しているなんて)


 普通じゃ、ありえないのか?


(そうね、ある程度小さな正義感や悪心なら、誰でも持っているものだけど、これほど巨大な正義感と悪心が、両方同時に存在することなんてよっぽどないわ、たとえあったとしても、普通はすぐにどちらかが飲み込まれたり、どちらかに染まったり、もしくは精神が崩壊するものよ?)


 そうか、そうだな、だが、俺は正義感も悪心も、どちらも満たす目標を掲げて行動している。そのおかげで精神崩壊や、片方に染まると言うことがないのだろう。


(正義感と悪心を同時に満たす目標?そんなものがあるの!?)


 ある、それは、自己犠牲だ。






 その後、俺はイヴィラにどうしてこのような精神状態になったかを説明した。


 元々は悪心だけを心に抱いていたこと。

 そして、数日前正義感の強かった前世の記憶を取り戻したこと。

 そのせいで、心に正義と悪を抱えることになったこと。


 己の心に従い、悪を成すことは、前世の価値観が許さない、しかし、誰かを助け、感謝される生き方は、己の心が許さない。

 相反する2つの思いを持った俺が見出したのは、自己犠牲の道だったことを。


 俺はイヴィラに、自己犠牲がいかに他人を不幸にするのかを、好感度が高ければ高いほど、助けた人間がどれほど不幸になるのかを、そして、これほど他人を不幸にしておきながら、これは人助けではあることをイヴィラに聞かせた。


(ふ、ふふふ!面白い考え方ね!)


 自己犠牲を行う際、誰かを助けて死ぬのがベストだ。そして、助けた奴の俺に対する好感度が高くなければ、なんの意味もない。


 だから、今は他人からの好感度を稼ぐことを目的としている。


(いいわね!気に入ったわ!自己犠牲、最高じゃない!)


 そうだ、だから俺はあまり長く生きられない。

 自己犠牲ができれば死ぬことになる。

 それに、自己犠牲のタイミングがなくとも、時間が経って己の精神が悪側に寄りすぎれば、俺は自殺する。


 どちらにしても、少なくとも俺が老人になるまで生きることはないと言うことだ。


(自己犠牲で終わる最後、そんな死に方も悪くないわね)


 そうか。

 できれば、死にたくない!まだまだ生きたい!と無様にわめき散らしてくれても良かったんだが、まあいいか。


(でも、自己犠牲ってすごいわね!正義でもあり悪でも・・・待って!誰かいるわ!)


 またか?またあの三流暗殺者か?


(多分、そう、でも昨日よりあなたに対する憎悪が増えてるわよ)


 それは少し気分がいいが、俺がなにをしたって言うんだ?

 まあいい、イヴィラ、どこにいる?


(えっと、ベットの左の床に寝そべっているわ)


 今度は床か。


 俺はイヴィラに言われた場所を見てみた。

 相変わらず俺には何にもわからん。

 ここに人がいると言われても、全く違和感を感じない。


 ここか?


「おい、今度は何の用だ?」


 ・・・


 おい、早く返事しろよ!俺が部屋で独り言を言う痛いやつになるだろうが!


「何もないなら、もう行くぞ?」


 面倒だし、三流暗殺者はもう無視しよう。


 今日は、まずはブロンドの娘、ブロン子探索だ。

 あ、今思ったが、ブロン子より、ブロン娘の方がいいか?


 いや、別にどっちもブロンコだし関係ないか。


(アハハ、暗殺者を前にずいぶん余裕なのね)


 別にこの3流暗殺者が俺を殺そうと思えば、逃げられないのは前と変わらないからな。


「・・・待て」


 やっと出てきた。


「今度はなんだ?今度こそ俺を殺すのか?」


 目の前の三流暗殺者は歯を食いしばり、何かを耐えている様子だ。


 本当なんだこいつ?


「・・・一度だ」


 は?


「一度だけ、貴様に俺の力を貸してやるっ!」


 は?

 マジで意味がわからない。何こいつ?精神異常者か?


「なぜだ?」


「感謝などしないからなっ!」


 聞けよ!

 俺は理由を聞いてんだよ!勝手に話してんじゃねぇ!だいたい三流暗殺者の助けなんているか!


「あとっ!俺の娘に手を出したら、殺すっ!いいか!必ず殺してやるからなっ!」


 そう言って、三流暗殺者は目の前から消えた。


 ふっざけんな!自分の言いたいことだけ言って消えやがって!娘って誰だよ!知るかよ!


 マジでなんだあいつ!?


(まだ窓の外の木の上からこっちをジィーッと見てるわよ)


 マジでなんだよ!?消えるなら消えろよ!鬱陶しい!


 まあいい、あんな奴を気にしていても仕方ない、街に行くぞ。


(変な人に目をつけられたわね)


 全くだ、朝から気分が悪くなる。


 俺は、三流暗殺者を無視して家を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ