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別視点1.エルミ・クライ 2

 早速、先輩に教わりながら領主様の家の掃除を行なっていると、門番に連れられて、客様が来ました。


「おはようございます、領主様はどこにいるかな?」


「領主様は自室にいらっしゃいます」


 領主様の家を訪ねてきた人は、私の妹がお世話になった、医師の人でした。


「もしかして、トゥオールさんですか?」


「君は、確かライカちゃんのお姉さん?」


「はい!お薬、本当にありがとうございました!」


 トゥオールさんは、私の妹を助けてくれました。

 それだけじゃなく、トゥオールさんが居なくても大丈夫なようにと、薬の素材、調合の仕方、飲ませ方、頻度等を教えてくれた恩人です。


 病気の治療と聞くと、みんな真っ先に魔法での治療を思い浮かべると思います。

 私も、魔法以外での病気の治し方は、寝ること以外にないと思っていました。


 ですが、トゥオールさんは、魔法を使わずに病気を治す凄い人です。


「うん、ところで、君はここで働いていたのかい?」


「えっと、今日から働くことになりました!」


「そっか、気をつけてね」


「はい!」


「では、私はこの方を領主様のお部屋に案内します、エルミさんは若様の様子の確認をして来てもらえますか?部屋は覚えていますね?」


「はい!」


「では、お客様、付いて来てください」


「分かりました」


「じゃ、俺は門番に戻るぜ」


 私は、若様のお部屋に向かいました。

 そして、私はそこで、初めて若様と出会いました。






 私が部屋に行くと、若様は目を覚まされていらっしゃいました。


 若様は、黄緑色で少し輝いた綺麗な髪色と目をしており、少し目は鋭いですが、可愛らしい子供です。


 何故あの領主様からこれほど可愛らしい子供が生まれてくるのでしょうか?

 領主様の奥様はさぞ美人ということなのでしょうか?それとも、今はこんなに可愛らしい若様も、大人になればああなってしまうのでしょうか?


 私は若様に水を持って来てくれと言われたので、旦那様に若様が起きられたことを伝えるついでに、水を持って若様の部屋に戻りました。


 その後、水を若様に渡し、トゥオールさんが若様を検診しました。

 若様には、特に異常は見当たらなかったそうです。


「おい!使用人!ザビルに報酬を玄関に持って来させるように伝えに行け」


 え?ザビルさん?誰でしょうか?


「 早くしろ!」


「は、はい!」


 私は領主様の勢いに負けて、ザビルさんが誰かわからないまま、慌てて部屋を出ました。






 そして、私は慌てて先輩を探しました。


 もし、先輩が見つからず、ザビルさんという方がどこにいるかわからなければ、領主様を待たせることになってしまい、最悪目をつけられてしまうかも。


 そう思うと、とても怖かったのですが、幸いなことにすぐに先輩を見つけることはできました。


「先輩!ザビルさんという人はどこにいますか?旦那様から伝言を預かっていて」


「ザビル様ですか?あの方はいつも執務室にいます、案内します」


「ありがとうございます!」


 そうして、私は先輩についていき、執務室にやってきました。


 コンコン、


「・・・どうぞ」


 先輩が部屋をノックして、扉に入っていきました。

 私もそのあとに続きます。


「失礼します」


 部屋に入ると、中には机に向かって書類を書いている、スキンヘッドで強面の、30代後半くらいの、筋骨隆々な男の人がいました。

 怖い、見た目が怖いです。


「し、失礼します!」


「・・・なんだ」


 ひぃ!

 鋭い眼光が私を捉えています。

 怖いです。食べられてしまいそうです。


「領主様から伝言を預かってまいりました、エルミさん」


「は、はい!あの!報酬を玄関に持って来させるように伝えろ、とのことです!」


「・・・報酬、医師のか?」


「はい!」


「わかった」


「では、これで失礼します」


「し、失礼しました!」


 私達は部屋から出た。


「怖かったですか?」


「は、はい、」


「安心してください、ザビル様は、見た目と、雰囲気と、佇まいと、外見と、威圧感と、容姿と、容貌は、確実に人を殺していると言われても納得できますが、恐らく、人を殺したことはないはずですよ、・・・多分」


「多分ですか!?」


「ふふ、冗談です、ザビル様はこの街の政務を全てをたった一人で取り仕切っている訳の分からない人です、見た目は完全に武人ですが、内政寄りの人間ですね」


「ええ!?そうなんですか!?」


 ザ・ベテラン冒険者という姿をしているのに!?


「ええ、この街の治安がそこまで悪くないのも、税が安いのも、全てザビル様のおかげです、あまり知られてはいないようですが」


「そ、そうなんですか!凄い人ですね!あれ?領主様は政務を行なっていないのですか?」


「寧ろ、領主様が政務を行うのは、この街に住む人にとってはよろしくないことかと」


「そうですか、あの、私あまり詳しくないのですが、街の政務って、一人で行えるものなのですか?」


「無理です」


「それを一人で行っているんですか?」


「はい、つまりザビル様は見た目通りの化け物ということです」


「・・・誰が化け物だ?」


「ひぃ!?」


 いつの間にか、私たちの後ろにザビルさんが立っていました。

 全く気づかなかったです!ホラーです!


「ザビル様、新人のエルミさんが怖がっています、今すぐ顔を取り替えてください」


「・・・無茶を言うな」


「なぜそこで諦めるのですか?ザビル様ならできるはずです、諦めずに顔を改変してください」


「・・・なら貴様の顔をよこせ」


「ひぃ!?」


 顔を、顔をよこせって、それって首を切られるってことですか!?それとも顔の皮を剥がされるのですか!?


「おや?ザビル様は女性になりたいのですか?私、いい店を知っていますよ、貴方と同じような、女性になりたい筋骨隆々の方々がいる店なのですが、紹介しておきますね」


「・・・やめろ、俺にそんな趣味はない」


「ご安心を、最初は抵抗感があるかもしれませんが、時期によくなります、連絡入れておきますので」


「やめろ」


「ヒィィ!」


「エルミさんが怖がっています、やめてください、せっかく仕事を押し付け・・・教えた新人なのですから、ザビル様が怖くてやめられたらどうするのですか」


「・・・お前のせいだろう・・・すまなかった」


「あ、いいえ!申し訳ありません!怖がってしまって!」


「・・・慣れている、気にするな」


 そう言って、寂しそうにザビルさんは歩いて言ってしまいました。


「ね、怖くないでしょう?」


「は、はい、」


 確かに、先輩にあんなことを言われても、強く否定するだけで怒りはしなかったので、見た目通りの怖い人ではないと言うことでしょう。


 ですが、よく先輩はザビルさんに軽口を叩けますね。

 たとえザビルさんが優しい人だと知っていても、私にはあんな軽口をたたくのは無理そうです。

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