第13話 イヴィルVSイヴィラ 3
「ふ、フハハ、フハハハハ!!!アハ!アハハハハハハハ!!!あーっはっはっはっはー!!!!ふふふ!ふは、ふーはっはっはっはっはー!あはははは!あーっはっはっはっ!!!はぁ!はぁ!」
さいっこうだ!最高に楽しかった!
ああ、自らが人を殺すことのなんと心地いい事か!
今まで生きていたこの6年間の中で!圧倒的に!絶対的に!最高の日だ!気分が良い!
やはり、俺が自ら!他者を不幸にする事が一番だ!
ましてや俺が行ったのは!殺し!命を奪うこと!他者の命を踏みにじる事!それは特別の中の特別!
不幸の最上位ぃぃ!!!!
さいっこうだ!ふふふ、フハハ!フハハハハ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「クゥゥゥゥソガァァァァァ!!!」
ふざけるな!ふざけるな!ふざけるんじゃねぇ!
他者の命を奪っておいて!最高の日だと!?最高の気分だと!?俺の外道が!
確かに!生き残るには、俺の悪心を解放するしかなかった!イヴィラは俺の体を乗っ取るつもりだった、だから戦うしかなかった!殺すしかなかった!
だけど!人を殺したら、後悔しなければならない!罪悪感を感じなければならない!良心を痛めなければならない!
喜んで良いはずがないんだ!絶対に!
・・・そう、思っても、俺の心には、喜びしかなかった。
分かってたさ、俺が悪人だってことは。
でも、それを俺は、俺だけは否定し続けなければならない。
そうでなければ、俺は前世を否定することになる。
だから抑える。俺が、俺であるために。
・・・・・・・・・・・・・
俺は、始めて人を殺した。
最高な、そして、最低の気分だ。
確かにイヴィラは悪魔だ。人間じゃない。
だけど、イヴィラには意思があった。
イヴィラとは意思の疎通ができた。
なら、人間となにが違う?なにも違わない。
だから俺は今、最高の気分だし、イヴィラを甚振りながら殺しておいてそんな気分になる自分が、本当に嫌いだ。
・・・
イヴィラを殺して、少し時間が経った。
気分が、精神が先ほどよりは少し落ち着いてきた。
「・・・・・・・・・・・それにしても、随分あっけなかったな、所詮寄せ集めの悪心、真の悪心を持つ俺には敵わないってことだな」
精神が落ち着いてきたとは言っても、俺の心は先ほどまで、最高に楽しんでいた。
だから俺の心は、その余韻に浸っていたいと思っている。
だが、俺の前世の価値観が警鈴を鳴らしている。
何かがおかしいと。
何か、致命的な見落としがあると。
早く気づかなければ、かなりマズイような。
だけど、それが何かがわからない。
情報はもう揃っているような気がする。
だけど、導き出せない。ダメだ、このまま考え続けても、答えが出て来る気がしない。
「しかし、悪魔といえど、この程度か、俺の悪心の前には、赤子も同然だったな、ああ、それにしても、本当に良かった、イヴィラの精神を喰らっている時のあの悲鳴、苦痛、命乞い、素晴らしいものが聞けたな」
・・・精神を、喰らった?
・・・そうだ、俺はイヴィラの精神を喰らった。喰らったはずだ。
なのに何故、俺になんの変化もない?
イヴィラはかなりの悪心をその精神に蓄えていた。
そのイヴィラの精神を俺が喰らって、なんの変化もないなんてありえるのか?
俺の悪心が強すぎて、イヴィラの悪心を喰らった程度で変わるようなものじゃない、と言うことか?
本当にそうか?
それに、イヴィラの精神を喰らっている時、俺は何を感じていた?
イヴィラがあげる悲鳴、苦痛、命乞いに対して、快感を感じていただけだ、それだけだった。
精神を喰らっているという感触どころか、なんの感覚もなかった。
まるで、空気を喰らっているかのような。
あの時は悪心が溢れすぎていて、イヴィラが悲鳴をあげるたびに気分が良くなり、他の細かいことが気にならなくなっていたから、違和感を抱けなかったが、今考えるとおかしすぎる。
もちろん、精神世界はそういうものだという可能性もあるが・・・
・・・認めたくはない、ほんっとうに、認めたくはないが、もしかしたら。
「・・・生きているんだろう?イヴィラ!」
「ふ、ふふ、よく分かったわね」
っち!やっぱり騙されてたか!
俺の前に、無傷のイヴィラが現れた。
さっきまで最高だった気分は、すぐに最低まで落ちた。
「無身影幻か」
「そうよ!」
無身影幻は、現実世界にイヴィラの幻影を作る能力と言っていた。
しかし、この精神世界に作れないとは一言も言っていなかった、騙された!クソ!
心に怒りが満ち溢れる。
「あ、アハハ、まさか私も精神世界に作れるとは、ん、んん、ふふ、残念ね、あなたはあの時、千載一遇のチャンスを逃したのよ」
そうだろうな、今の反応からして、この世界に無身影幻の幻を作れる事をイヴィラは知らなかったようだ。
恐らく、命の危機に咄嗟に使ったらうまくいった、といったところか。
つまり、あの時まで、目の前にいたイヴィラは本物だったという事だ。
しかし、俺は悪心を解放した結果、ろくに周り見えていなかった。
流石に本体が幻影に変わる瞬間は、注意深く見ていれば多少は違和感を抱けたはずだ。
でも、俺は力に酔って、何も気づかなかった。
俺も慢心していたと言うことか。
この状況は、少しマズイ。
俺にはどれが幻でどれが本物かの区別がつかない。
十中八九、俺の前にいるイヴィラは幻影だろう。
こうなると、今の状況は少し不利だな。
「いいえ、少しじゃないわ!あの時、私を喰らい尽くせなかった時点で、あなたの負けは決まったのよ!」
なに?そんなことはないだろう?確かに俺にはイヴィラの本体の居場所はわからない。
だが、イヴィラの精神力は俺よりも下。
つまりイヴィラに俺の精神が飲まれる事はないはずだ。
「そんな事はないわよ、確かに、今のあなたの精神を私が喰らう事は出来ないわ、精神力もそうだし、あなたのその規格外の悪心は悪魔の私ですら制御出来そうにないもの、今のままなら、ね」
今のままなら、だと?
「そうよ、だから削るの、その精神力をね」
イヴィラが指を振った。
俺は嫌な予感がして、咄嗟に横に飛んだ。
その瞬間、先ほどまで俺がいた場所が、爆発した。
「グッ!?ガッ!」
直撃は避けられたが、少し掠めた。そして、俺は爆風に吹き飛ばされた。
っっ!?なんだこの感覚は!?
「言ったでしょう?ここは精神世界だと、ここでのダメージは、精神に直接ダメージが入るの、ふふふ、現実では決して体験できない痛みでしょう?」
っくっ、直撃を避けてこれか、直撃した場合を考えたくないな。
「ここでダメージを負うのは、精神が削られていくようなものよ、つまり、あなたがボロ雑巾のようになるまで私が甚振ってあげれば、あなたの精神は容易に飲み込めるようになる、と言うことよ!ふふふ、さあ、逃げ惑いなさい!いつまで逃げられるかしらね!」
マズイ、イヴィラの本体の場所がわからない限り、俺の攻撃はイヴィラの精神に届かない。
なにか、俺が覚えている魔法で、この状況を打開できるものは。
っ、マズイ、怒りと痛みで、潜在思考ができない。
「潜在思考?」
っち!どうする?悪心をもう一度解放するか?
馬鹿か、状況判断ができなくなるだけだ。
「まあ、いいわ、ふ、ふふふ、ここからは私のワンサイドゲームよ!無様に逃げ惑いなさい!ふふふ!ふふふふふふ!そして、自分の精神が削られていく事に恐怖しながら、最後には私に飲み込まれるといいわ!」
そうして、イヴィラの容赦ない攻撃が、俺を襲い始めた。




