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第12話 イヴィルVSイヴィラ 2

「第2問!・・・えっと、」


 イヴィラの見た目から分かる問題が来たら俺でも答えられるだろう、だが、もし見た目からは分からない問題、例えばイヴィラの能力の問題が出たら不味い。


「っ、ふふふ、第2問!私の特殊能力はなんでしょう!」


 くっ、俺の分からない問題をピンポイントで出してからだと!?イヴィラは天才か!?


「そうよ!私は天才なの!」


「く、分からない、答えを教えてくれ」


「ふっふーん、私の特殊能力は、邪操心蝕、無身影幻、悪心誘引、そして、精転喰心よ!」


 くっ、また答えられなかったか、邪操心蝕?やばい、この能力の詳細を問題に出されたら、答えられないぞ。


「第3もーん!邪操心蝕の能力の詳細はなんでしょう!」


「くっ、分からない」


「答えはー、私の幻影、または私の半径数メートル以内に存在する生物に、私の悪心を送るか、その人間の悪心を私が食べる力でーす!」


「・・・要するに、他者に自分の悪心を植え付ける力と、他者の悪心を自分が喰らう力、ということか?」


「そうよ!まあ、でも悪心を送るのは時間がかかるから、数ヶ月くらい送り続けてあげないと、目に見えて効果は現れないんだけどね、その逆に、悪心を喰らうのは数日程度で済むわ!」


「悪心を喰われた人間はどうなるんだ?」


「別にどうともしないわ、悪心を喰らうといっても、基本的には全て喰らうわけじゃないもの、ちゃんと少しは取っておいてあげるから、そうね、今までより少しだけ綺麗な心を持つってところかしら」


「なら、全部喰われたものはどうなる?」


「あー、一度間違って全部の悪意を喰らっちゃった奴がいたんだけど、なんかすぐに自殺しちゃったわ」


 は?自殺?


「自身の悪心が全て無くなって、心が綺麗すぎる人間になったから、今までの自分の行動を受け入れられなかったんじゃないかしら?」


 ・・・そう、か。まあ、そうだよな、当然だ。受け入れられるはずなんかないよな。


「そういうものかしら?まあいいわ、なら次の問題ね!第4問!・・・」


 ・・・ん?ああ、そうか、邪操心蝕については分かった、だが、無身影幻については何も知らないなんてイヴィラにバレたら、その能力の詳細についての問題が出されてしまう。


「第4もーん!無身影幻の能力の詳細はなんでしょーう!」


 扱いや、なんだと!くっ、俺の分からない問題だ。


「分からない」


「こーんな簡単な問題も分からないのー?君、ヴァァァァカだねぇぇぇぇぇ!!!!」


 ・・・っ、・・・


「なーんにも言い返せないのねー!ふふふ、ふふふふふ!!」


「答えはなんだ?」


「しょーがないわねー、無知な君に私が教えてあげるわ!無身影幻はね、私の幻を現実世界に表す力よ!」


「現実世界に?」


「そう!私はね、現実世界に体を持たない精神体存在なの、私の本体は常にこの私の精神世界の中にあるのよ!」


 本体が精神世界に?精神体存在?そんなものが存在するのか。


「そうよ、そして、無身影幻の幻に現実の者が干渉するすべは何もないの!私の幻は物理的な壁も、魔法的な障壁も無視できるわ!ただし、肉体を持っているときは使えない力だけどね」


 なるほどな、イヴィラの幻はどこにでも現れることが可能ということか。


 確か、邪操心蝕は幻からでも使える特殊能力、そんな能力を持っているなら、確かに国を滅ぼすことも可能だろうな。


「ふっふーん、やっと信じたのね、やっと理解したのね!私の偉大さが!私の凄まじさが!そして、私の!」


 馬鹿さが?


「そう、私の馬鹿さが!」


 うん、よく分かるよ。


「ふふーん、ん?」


「さあ、次の問題を出してくれ」


「待って、ねぇ、待って、今何か」


「早くしろ」


「う、うん、じゃあ、第5問!」


 悪心誘引、どんな能力なんだろうな?


「悪心誘引とはどんな能力なんでしょう!」


 ・・・ちょっとは自分で考え、くっ、どんな能力なんだ!分からない!


「分からん」


「答えは、強い悪の心を持つものを、自然と惹きつける能力のことよ!」


 ・・・これか、この能力の力で、俺はあそこに引き寄せられたのか。


「まあでも、この力はそれほど強くはないけどね、右と左で迷った時、どっちに進んでもいいという状況なら、私がいる方に進む程度の力よ、強制力なんて微塵もない程度の力ね」


「なに?」


 俺はあの時、抗いがたい強制力を感じた。

 決して逃れられない力だった。


「それでも、私は生物の悪心が主食だから、あったほうがいい能力よね」


 ・・・どういうことだ?あの時の力は、この能力とは別の力か?


「じゃあ、次の問題よ!第6問!」


 考えるのは後だな、後、俺に分からないものは精転喰心の能力の詳細だけか。


「精転喰心の能力の詳細はなんでしょう!」


 こいつ本当にチョロなんて奴だ!こんな問題分かるわけないじゃないか!くっ、やはり天才だったのか?


「ふっふーん、ようやく分かったのね!」


「分からない」


「え?」


「答えを教えてくれ」


「ん?あー、問題の方ね、いいわよ!精転喰心は、私の幻、または体が触れた、現実世界の精神を持つものを、私の精神世界に転移させる力のことよ!」


 ・・・なるほど、つまりこの力のせいで俺はここに連れてこられたということか。


「そうね、もうだいぶ宝玉の力も弱まっていたもの、それくらいは可能よ!」


 そうか、俺がここにいるのは、やっぱりイヴィラが原因か。


「それと、私の中に転移させた対象を喰らって、その生物の体を乗っ取る力よ!私が既に肉体を得ている場合は、相手の肉体を自分の体に取り込む事ができるわ!」


 ・・・、やはりそんなところか。


「喰らうとは、俺の体をお前が直接バクバクと食べるのか?」


「そんなことしないわよ!言ったでしょう、ここは精神世界、だから精神と精神の喰らい合いをするのよ!」


「精神と精神の喰らい合い?」


「そう、互いの精神を喰らいあうの!」


「精神力勝負という事か?」


「そうよ!より深い想いを、より強い願いを、より純度の高い心を持つものが、この精神世界では強いのよ!つまり、沢山の生物の悪心を食べ続けた私が、この世界では誰よりも強いということよ!」


 その瞬間、イヴィラの体からドス黒いオーラが噴き出した。

 怨み、妬み、憎悪、恐怖、不安、劣等感、焦燥、後悔、苦しみ、悲しみ、無念、嫌悪、軽蔑、罪悪感、嫉妬、殺意、そして絶望。


 その全てを黒く煮詰めたかのような気配を感じる。

 だが、だが。


「どう?私は誰よりも精神世界では強いのよ!誰にだって負けないわ!」


「なるほど、さっさと俺を喰らわなかったり、わざわざ自分の情報を開示しているのは、自分に絶対的な自信があるからか、つまり、単なる油断だな、ふ、本当に愚かだな、イヴィラ」


「・・・なに?」


「ああ、確かになかなかの悪心じゃないか、そして、その悪心を制御出来ているのは素直に認めよう、まあまあ、やるじゃないかと、な」


「貴方、なに?なんでそんなに余裕そうなのよ、今までこの状態の私を見たものは、誰もが私に恐怖したわ!それはあのハウントだって例外じゃなかった!」


 ハウント?


「なのに何故そんなに余裕そうなのよ!」


「余裕、か、本当はダメなんだろうな、分かってるさ、そんな事、だけどな、お前の悪心は・・・ぬるいんだよ」


「ぬるい?そんなわけないじゃない!私は沢山の悪心を食べてきたのよ!いわば悪意の集合体なのよ!もう怒ったわ、本当なら46問まで出して、貴方を馬鹿にした後に、ゆっくり食べてあげようと思っていたけど、今すぐ喰らってあげるわ!私を怒らせたことを後悔しなさい!」


「・・・ふ、ふふ、フハハハハ!ああ、そうかも知れないな、だが所詮それは程度の低い悪意の集合でしかないんだよ、見せてやる、本当の悪心とは、こういうものだってな!」


 俺は、今まで無理やり抑えつけていたものを、解放した。


「っっっ!?え!?そ、そんな、うそ、でしょ、私が、震えているなんて」


 イヴィラの体が震えている。ふ、ふふふ、ああ、いいな、恐怖に震える相手を見るのは、本当に気持ちがいい!


「どうした?この世界では、誰よりも強いんじゃなかったのか?イヴィラ?」


「っ、そうよ、私は強いのよ!私は誰よりも強い!貴方なんかには負けないわ!私には邪操心蝕があるもの!貴方の悪心を私が喰らえば、私のほうが強くなるわ!」


 ふ、無様だな、小さなものが必死で背伸びをしているようで、その背をへし折ってやりたくなる。


「やりたいならやってみればいい、貴様に、この悪心が耐えられるのならな」


「ふん、私を誰だと思っているの?私は悪魔よ!悪心が主食である悪魔が、悪心に耐えられないわけないじゃない!・・・ヒィッ!」


 ふ、ふはは、フハハハハ!


「どうした?やらないのか?」


「な、なによ、これ、なんなのよこれ!貴方、なんで生きているの!なんで正気を保っていられるのよ!あり得ない、あり得ない!」


 俺は、一歩イヴィラの方に近づいた。

 物理的にじゃない、精神的にだ。


 イヴィラは互いの精神を食い合うと言っていた、つまり、イヴィラの精神を飲み込めば俺の勝ちというわけだ。


 俺は精神的な距離を、また1歩詰めた。


 俺が一歩近づくたびに、イヴィラの恐怖心が伝わってくる。


「や、やめて、来ないで!」


「イヴィラは多くの悪心を喰らったと言っていたな、その中に、あったのではないか?恐怖が、不安が、絶望が、そのせいで、イヴィラは感じやすくなっているんだろう?」


 実に、ああ、実にいいぞ!恐怖に震えるその表情!

 楽しい、ああ、楽しいなぁ!


「嫌、私は死にたくない!死にたくない!」


 生にしがみ付くその思い、惨めで、醜くて実にいい!


 だが、いつまでも楽しんでいるわけにはいかないか。

 この時間がずっと続けばいいとは思っているが、終わらせよう。


 イヴィラは俺の本性を知ってしまったんだ、目的の為には決して生かしては置けない、ゆっくりと、確実に、楽しみながらその精神を飲み込んでやろう。


「いや、いやぁぁぁぁぁーー!!!」


 俺は、イヴィラの精神を飲み込んだ。

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