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第11話イヴィルVSイヴィラ 1

 階段を下った先には扉があった。


 俺はその扉を開けた。

 そして、俺の目に飛び込んできたのは、部屋の奥に置かれた黒い球だった。


 それを見た瞬間、俺は確信した。


 これだと、この黒い球が俺を呼んでいると。


 しかし、その黒い球からは、禍々しい気配を感じる。

 触ったら呪われても不思議じゃない。

 そんな怪しい球、絶対に触るべきではない。


 そう思っても、俺はもうその球から目が離せず、体はどんどん近づいてく。


 これは、自分を強く持った程度で抗えるものじゃない。

 触ったら、絶対にヤバいことになるのは目に見えているのに、止められない。


 そして、俺の指先が、黒い球に触れた。


 その瞬間、俺は何かに飲み込まれた。






 気がついたら、辺りは真っ暗だった。

 自分がどこにいるのか、どういう状況なのかが分からない。

 浮いているのか、落ちているのか、立っているのか。

 何も分からない。


「どこだ、ここは」


 もしかして、夢か?いや、夢という感じはしない。

 もしかしたらあの黒い球には、触った者をここに転移する術式でも書き込まれていたのかもしれない。


 それは流石にあり得ないか?いや、魔法なんて言うものがあるんだから、あり得ない話じゃないか。


 やっぱり、ロクなことがなかったな。なんとかして元の場所に戻る方法を探るか。

 にしても、こうも暗くちゃ何も分からない。

 本当にここはどこなんだ?


「ここは私の精神世界よ」


 !?

 いきなり後ろから女性の声が聞こえた。

 俺はとっさに振り返った。


 そこには、20代くらいの女性がいた。

 髪は黒く、長く、頭から曲がったツノが2本はえており、背中からは黒い翼が生えている。


 見た目の印象は、悪魔のコスプレをした女性、と言ったところだ。

 いや、こんな世界だ、コスプレじゃなくて本当の悪魔かもしれない。


 それにしても、こんなところに人がいるとは思わなかったな。


「こんなところとは失礼ね」


 ・・・は?何を言っているんだ?・・・いま、俺は話していたか?


「いいえ、話していないわよ?」


 まさか、俺の心が読まれている?


「いいえ、心を読んでいるわけじゃないわ、言ったでしょう?ここは私の精神世界、精神世界では考えたことがそのまま相手に伝わるものなのよ」


 考えが伝わる、だと?

 ッチ、なんて最悪な場所だ。

 はぁ、ここでは取り繕っても無駄なのか。


 それにしても、この女はこの世界について詳しいようだ。

 当然か、私の精神世界なんて言っているんだ、ここがどこでどういう空間なのかは詳しいに決まっている。


 もしかして、この女が俺をこの精神世界に引きずり込んだのか?


「ふふ、正解よ」


「お前は何者だ?」


「人に尋ねるときは、まず自分から名乗るのが礼儀というものじゃなくて?」


礼儀?(そうだ)馬鹿じゃないか?(よな、すまなかっ)なぜ貴様ごときに(た、俺の名前は)礼儀を払わねばならん(イヴィル・ハウントだ)


「ん?なに?」


それに先ほどの発言は(ん?聞こえなかったか)俺に名乗れと言ってい(?ならもう一度言うぞ)るようなものだ(俺の名前は)礼儀を語るなら貴様が(イヴィル・ハウントだ)先に名乗るのが、礼儀(、さあ名乗ったぞ、お)じゃあないのか?(前の名はなんだ?)


「え、え?」


なんだ?名乗らないの(なんだ?名乗らないの)か?(か?)やはりお前の方が(やはりお前の方が)礼儀知らずじゃないか(礼儀知らずじゃないか)。」


「・・・私はイヴィラ、かつてリアン皇国を滅亡させた、悪魔よ」


 リアン皇国を滅亡させた?


「へー」


「・・・え?それだけ?それだけなの?反応薄くないかしら!?あのリアン皇国よ!?凄いのよ!私すごいことをしたのよ!」


「ふーん」


「まさか、信じてないわけ?まあ、当然よね、あのリアン皇国を滅ぼした悪魔が目の前にいるだなんて、信じたくないわよね」


「いや、別に疑ってないぞ」


「え!?信じてるの!?信じていてその反応なの!?もっとあるでしょ!?なんてやつだ!とか、」


 まずリアン皇国を知らないし。


「え!?嘘でしょ!?あのリアン皇国よ!絆の国よ!・・・もしかして、もうそれだけ時間が経っている?確かに外への干渉はしやすくなってきていたけど・・・」


 まあ、国を滅ぼしたんだもんな、凄いよな。

 でも、愚か者は国を滅ぼすとか言うし、よく馬鹿が足を引っ張って国を滅ぼしていたりしてるから、ああ、そう言うことか。


「凄い凄い、凄いよお前は、国を滅ぼすほどの馬鹿だとは」


「・・・え?・・・違うわよ!確かにリアン皇国を滅ぼしたのは馬鹿どもだけど!私がやったの!」


 あ、自分で認めたな。

 リアン皇国を滅ぼしたのは、馬鹿ども、私がリアン皇国を滅ぼした。

 つまり、私は馬鹿と。


「ちがーう!」


「なら、今からテストしてやろう」


「テスト?」


「ああ、俺がお前に問題を出す、その問題にどれだけ答えられたかで、貴様が天才か馬鹿かがわかる、受けてみるか?馬鹿?」


「私は馬鹿じゃないわ!良いわよ、受けてやろうじゃない、私が天才ってことを教えてあげるわ!」


「なら最初の問題だ、2の5乗×3は?」


「え?2の5乗×3?5乗ってなに?」


「早くしろ、こんなものに時間を使うのか?俺の中では常識だぞ?」


「え?えっと30!」


「96だ、馬鹿か、なら第2問、H2O、これはなんの分子式だ?」


「え?分子式?え?」


「早くしろ」


「え?えっと、ハハオ!」


「水だ、愚か者、なら第3問、春、夏、秋、冬、1年の中で一番日数が多いのは?」


「え?どれも同じ長さじゃないの?あ、分かった!全部ね!」


「1年に決まっているだろう」


「え?何が?」


「文章をきちんと読み解け、子供でもできるぞ、なら、」


 俺は知る限りの問題を出し続けた。

 しかし、この馬鹿は1問も正解できなかった。


「第45問、徳川家康は江戸幕府、又は徳川幕府を立ち上げた最初の将軍だが、その子供である徳川秀忠は、第何代目の将軍か?」


「知るわけないでしょー!」


「2代目だ、結論、貴様は馬鹿だ」


「う、うううっ、酷い!酷いよ!私が知らないことばかり!」


「なぞなぞは単なるひらめきだし、後半は、文章を読み解けば自然と答えが出るようにしたはずだ、知識はほとんど必要ない、それに貴様が何も学んでいないからこそ答えられないんだ、お前には知識が無い、つまり馬鹿だ」


「な、なら!私が問題出すわ!それに答えられなければあなたも馬鹿なのよ!」


「いいぞ、出してみろ」


「言ったわね!後悔させてあげる!第1問!・・・」


「早くしろ」


「わ、分かってるわよ・・・」


「お前は咄嗟に1問目すら問題が出せない、俺は何問もすぐに出した、つまり貴様の方が劣っていると言うことだな」


「そんなことないわ!なら、この空間はなんでしょう」


「お前の精神世界」


「な、なんで知ってるのよ!」


「・・・マジで言ってるのか?」


 本格的に馬鹿なのか?ネタじゃなくて馬鹿なのか?恐ろしいほどに馬鹿なのか?


「馬鹿にするんじゃないわよ!馬鹿じゃないわ!それに、馬鹿っていう方がバカなのよ!バーカバーカ!」


 ・・・こいつ、自分から私は馬鹿だと名乗っているぞ。

 馬鹿っていう方がバカ、この馬鹿は何回馬鹿と言った?さっきの発言だけで6回ほど馬鹿と言っている、つまりそれだけ自分は馬鹿だと宣言しているってことだ。

 馬鹿だな。


「違う!私は馬鹿じゃないわ!あなたが馬鹿なのよ!だって今も貴方は馬鹿って7回も言ったもの!私が6回馬鹿って言ったかもしれないけど、貴方は7回も馬鹿って言った!つまり私を馬鹿にしている貴方の方が馬鹿なのよ!分かったかしら!馬鹿!」


「今8回言ったな、それに俺は言ってはいないぞ?」


 俺は思っただけだ、発言はしていないぞ馬鹿、馬鹿って、言った、やつが馬鹿なんだ、言っていないから俺は馬鹿じゃない、しかしお前は発言している、つまり馬鹿だ。


 ただ、ここは精神世界、思ったことが相手に伝わってしまう場所だ、俺はただ、純粋に、心の底から貴様を馬鹿にしているだけだ、言葉に出していない。


「キィィィィ!!!!むかつくむかつむかつくー!!!」


「なら問題で俺を打ち負かしてみろよ」


 お馬鹿さん。


「ギィィィ!」


 ゴブリンかな?


「あんなのと一緒にするんじゃないわよ!見ていなさい!貴方が絶対に答えられない問題を出してあげるわ!」


 絶対に答えられない問題か、俺は古今東西あらゆることを熟知している。

 俺に答えられない問題なんてほとんどないが、そんな俺でも、答えられない問題があるとするなら、この馬鹿に関する問題だけか、俺はこの馬鹿についてはほとんど何も知らないようなものだからな。


「・・・っふ、ふふふ、そう、そうなのね!分かったわ!貴方が絶対に答えられない問題!私の問題を出してあげる!」


 こいつチョ、なんだって!そんな問題を出されたら、答えられるはずないじゃないか!


「あーっはっはっは!自分の無知を晒すが良いわ!第1問!私の名前はなんでしょう!」


「分からん、」


「あら?こーんな簡単な問題も分からないわけ?私の中では常識よ?」


「分からない、答えを教えてくれないか?」


「そう、分からないのね!なら、無知な貴方にこの天才な私が教えてあげるわ!私の名前はイヴィラ!覚えておきなさい!」


「だが、まだ一問だけだ、45問間違えたお前より、俺は頭がいい」


「なら私は46問出してやるわよ!それで貴方の方が私より馬鹿だって証明できるわ!」


「やってみるといい」


「ふふふ、その余裕、いつまで続くかしらね!」

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