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怪物少女、邁進す 〜魔法のある世界で腕力最強無双〜  作者: 平塚うり坊
1章・リブレライト臨時戦闘員編
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34 人災少女とマッド博士

 某日某所、とある地下空間で交わされた「人災少女」と「マッドな博士」の会話――


「ドック! ドックドックぅ! 大変大変大変だよドーック! ちょー大変なんだから!!」

「うるっさいのう! そう叫ばんでも聞こえるわい! 耳の遠いボケ老人かおぬしは!」

「なに言ってんのさドック、老人はドックのほうでしょ! あたしピチピチ!」

「おぬしにゃ皮肉も通じんのか、ワシとて年寄り扱いされる歳じゃないわい! そんなことより、何が大変なのかとっとと教えんか」


「あ、そーだった! これ見せよーとしてたんだった。見て見てこれ見て!」

「んー? 新聞か。それもリブレライト紙じゃないか。これがどうしたんじゃ」

「この記事だよぅ! 読んで読んで!」

「なになに……ほう、『暗黒座会壊滅、大捕り物! 首魁死亡』か。殺しておきながら大捕り物とはの……何にせよあの鼻たれ、死によったか。まあ、遠からずこうなるとは思っとったが。で、これがどうした?」


「だから! 暗黒座会が潰されたんだよ! あたしが協力してた暗黒座会が! これは由々しきことだよドック!」

「ううむ? ワシの記憶が確かなら、おぬしとっくに手を切っておったろうが」

「とっくにじゃないよ、ついこの前! もうプレゼントするのも飽きたから連絡を絶った、その直後にこれだよ!?」

「それがどうしたんじゃい」


「とうの昔に手を切ってたならあたしだって何も言わないよ、でも切った直後に潰されたんじゃ、まるであたしまで失敗したみたいじゃない! それも餞別代わりに聖冠を贈ってあげまでしたんだよ!? なのに後味悪いよ、こんな見計らったようにさあ!」


「はあー……おぬしの言うことはよう分からんわい」


「分からなくていいいから手を貸して! 報復準備だよ!」

「今やっとることはどうする? 放り出すのか? ま、いつものことだがの」

「……そうだった。とりあえずあと一個しかない『暴化の種』をさっさと使っちゃおうっと」

「またこれじゃ。せっかくの完成品を遊び半分にばらまきおって……これまでの四つは全部無駄かい」

「無駄じゃないよ、最初にあげた子以外はみんな退治されちゃったみたいだけど、それなりに暴れてくれたじゃない。でもやっぱりそこらの雑魚を強くしたって高が知れてるって分かったし、今度はもっといいのを選ぶつもりだよ!」


「目途はあるのか?」

「うん! 最後ってこともあって、今度はきちんと下調べして選んだからね! きっと面白いことになるよー、保証する!」

「おぬしの保証ほど当てにならんのも珍しいがの」

「種を蒔いて、それから暗黒座会が誰にやられたか情報収集だね!」

「誰にも何も、リブレライトの治安維持局じゃろ。ここにそう書いとる。『リュウシィ・ヴォルストガレフ局長の華麗なる大活躍』とな」

「あっ、ホントだ! 気付かなかった!」

「節穴にもほどがあるぞい」


「でもやっぱり新聞に書いてあることだけじゃよく分からないよ、暗黒座会の残党とかどっかそこらへんに落ちてないかなー」

「捨て犬じゃあるまいし、そんなんで見つかるわけがないじゃろう。治安維持局の檻の中でも探すほうがましじゃの」

「その手があったか! 処刑されてないのがまだいれば手っ取り早く話を聞けるね!」

「とはいえハードルは高いがのう。持っている情報もピンキリになるじゃろうし」

「幹部とかなら大丈夫でしょ! そういや、前にいた博士の助手もあっちに移ってけっこう上の地位についたらしいじゃない? 探してみよっか!」


「あいつは死んだらしいぞい、知らせが来とった」

「えー!? 死んじゃったのぉ!? じゃーダメか……ん、知らせって誰から?」


「あいつの拾った女の子じゃよ。名はキャンディナじゃったか……覚えとらんか? 一時期はお姉ちゃんと呼んでおぬしも仲良くしておったろう」

「あー! 思い出した、キャンディナお姉ちゃん! そっかそっか、助手さんについていってたかあ! まだ生きてるの?」

「さてのお。あいつの後釜として幹部の座についたらしいことまでは知っとるが、その後どうなったかまでは……大体死んだらもう知らせを寄越す者もおらんしの」


「確かに! でもかけてみる価値はありますぜ、ドック!」

「あるかの……?」

「あるある! キャンディナお姉ちゃんを治安維持局から奪取する! そんでもってどうやって暗黒座会が潰されたのか詳細をゲット! そこから嫌がらせ方法を考えよう!」

「勝手に決めおって……これもいつものことだがの」


「手始めに透明になれるアイテムでも作って!」

「気安く言うでないわ! 手始めに作れるもんかい!」

「なんでなんでー! ドックは大天才でしょー! あたしの欲しい物全部作ってくれるんでしょー!」

「新しいのを作ってほしいなら与えられたものをもっと大事に使わんかい! 毎度のように使い捨ておって! 洗脳キャップも溶解香も中毒植物も! ここ最近だけでもこんだけ台無しにしとる!」


「そんなこと言ったって、面白く使わなきゃ意味ないじゃん! ドックこそまた同じ物作ってくれればいいのに、絶対に一回しか完成させないからあたしだって困っちゃう!」

「あほう、こういうのは一期一会のインスピレーションが大事なんじゃ! 前に作った物をまた作るなんてなんの楽しみもないわい!」

「そのインスピレーションの手助けをあたしがしてるんだから文句は言わせないよドック! だいたい、作るだけ作るからその使い方はあたしに任せるって最初に約束してくれたのがドックじゃない!」


「そりゃ言いはしたがの……。まったく、口ばかり達者になりおってクソガキめが……」

「事実を言ったまでですー。あたしは敬虔なる真実の使徒ですー」

「ああもう、分かった分かった。潜入に使えるアイテムを用意してやるわい」

「やった! 大好きドック!」

「ワシは嫌いじゃ」

「またまた~。ドックったら分かりやすいんだから!」


「はーあ、疲れるのお。ところで暗黒座会が壊滅したとあったら聖冠も回収されとるじゃろ。キャンディナだけじゃなくそっちも狙うかの?」

「んー、別にいっかなー。見つけたはいいけどドックのアイテムほど面白い使い方が浮かばなかったんだよね。だから最後の支援としてオードリュスにくれてやったんだー」


「そういえばそうじゃったな。まあ、おぬしが扱うなら同じ七聖具にしても聖杯か聖衣あたりが良かろうな……手に入るかは別にしての」

「えへ、欲しくなったら手に入れるよ、何がなんでも! だってあたしだもん!」

「そうじゃの……おぬしにはそれが出来る。じゃからこそワシの協力者に相応しいというものじゃ」

「でっしょー? さ、ドックも作業に入ってよ。あたしが仕込みを終えるまでに完成させてね!」

「無茶言うでないわい。あまり急かすと老人虐待じゃぞ」

「こんな時だけ老人になるの狡いなぁ!」


 以上会話終了――



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