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「なんか文句でもあんのか、このゴミ」
「いえ、ありません」
「じゃあさっさと仕事して、今夜はあそこで寝ろ」
「……」
「聞いてんのか!」
「わかりました」
「おせえんだよ、この鼻くそが!」
上司は今度こそ立ち去った。
俺は上司が見えなくなると、目の前の空間を十発くらい殴ってから、客のところへ足を向けた。
日が暮れたころ、最低限の荷物を持って、おれは例の物件に足を入れた。
――ほんと、気味悪いんだけど。
俺は子供の頃から、お化けとかそういった類のものが苦手なのだ。
――こうなりゃさっさと寝るに限るな。
安眠できるかどうか不安でいっぱいだったが、無理やりにでも寝てしまおうと思った。
そして寝袋に入った途端、金縛りにあった。
――うそっ!
金縛りなんて十年ぶりくらいで、人生で二度目だ。
前回はただ金縛りにあっただけで何も見なかったが、今回は違っていた。
その全身がこれでもかと言わんばかりに青白い男が、上から俺の顔を覗き込んできた。
この顔は資料で見たことがある。