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一人称短編(古いのも込み)

君がそこにいるのに届かない

作者: 秋雨そのは

……読んでもらえて嬉しいです。

 静かな夕暮れに1つの大きな影


 自分の周りには小さな影がいくつも並んで、1つも動くことはない。

 僕は手遅れだと後で知った、だけど君は先に知っていた。

 ふと、四角の長石に1つの枯れた紅葉が乗った。


「……」


 僕はその焦茶色の葉を崩れないように持ち上げた。

 この枯葉の様に綺麗に咲いてる紅葉の中で君は、1人枯れていったんだね。

 誰にも気づかれずに居たかった。だけれど、本当は誰かに気づいてほしかった。


「僕は君の叫びが聞こえていたのに」


 返事は帰ってこない。声は静かな木々の音に紛れて消えていった。

 時間を巻き戻せるなら迷わず僕は使っていただろう。

 例え決められていた別れだったとしても、君に会いに行っていた。


「もうついてこないで!」


 その1言が自分の中で繰り返し響く。

 些細な、小さな勘違いで僕達は互いに遠ざかってしまった。

 タイムリープでもタイムマシンでもいい、あの時の君に会って。


「ごめん、そして好きだよ」


 それだけが伝えたかった。

 1粒1粒、小さな間隔で石に雨の様に染みを作った。

 謝らくてもいい、告白の返事帰ってこなくてもいい、遅くてもいいから……。


「声を、聞かせてよ……」


 僕は君の墓で、1人で返事を待っているのに。

 手に持っていた紅葉は強く握られた手に耐えきれず、崩れるような音がする。

 自分勝手で、涙もろくて、笑顔が耐えなくて……嘘が下手なのに。


「なんで……なんで、こんな時だけ本当の嘘が上手いんだよ!!」


 誰も居ない所に並ぶ、名前の書かれた石に1人僕は叫んだ。

 視界が揺らいで何も見えない。

 僕が苦しまなければ君はよかったのか! それで僕が納得すると思ったのか!


「君の、答えを、聞かせて…くれよ……」


 僕は膝から力無く崩れ落ちた。

 その際に、手に持っていた枯葉は粉々に砕けていたのか風にあおられて1切れ1切れ音もなく飛んでいった。

 嫌だよ、君の笑顔が見れなくなるのは。


 病気なんて関係無い、寿命が短いなんて関係無かった。

 体が悪いなら一緒に乗り越えよう。寿命が短いなら一緒に想い出を作ろう。



 そう言えたのに……もう全ては手遅れだったんだ。



 白い城で白いベッドで寝ていたお姫様はキスでも、告白でも起きなかった。

 肌は冷たくなっていて、体はベッドみたいに白くなっていた。


「あぁぁ……」


 僕は1人その場でも、今でも変わらない。

 たった1人、ここで泣き崩れる事しか出来なかった。

喧嘩してもいい、手遅れになる前に自分の気持ちを伝えよう。

互いに会えなくなって、もう2度と会えない事が無いように、気持ちがすれ違ったままにならないように。

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