気ままに。
「泥のようにグダグダになった方が良い。」
そう薫子に言われて、調子の良くない時は半月ほど気ままに過ごした。朝は子供達よりも遅く起床。リビングがザワザワする物音で目をさます。朝食は各自。翔のお弁当はパン。莉乃は給食なので心配ない。
調子が悪いというのは、痒みが強くて眠れなかった場合もだが、浸出液が止まらない場合を指す。浸出液が食材や弁当箱に着くのは、その場で食べる場合ならまだしも、時間が経ってから食べる弁当は衛生上いただけない。そんな日は、弁当をパンで我慢してもらい、飲み物も水筒をやめてペットボトルのお茶を持たせる。
起きたら犬の散歩に出る。途中でコインランドリーに立ち寄り、そこの自販機で冷たいコーヒーを買い、備え付けのベンチに座ると、犬に水を飲ませながら、コーヒーをゆっくりと飲んで過ごす。体力が落ちているので、こうして休憩を入れて1キロ近く歩く。運動が必要だが、運動嫌いの私にとって、犬とこうして歩くことは貴重な運動になる。
ゆっくりと過ごして家に着くと、たいていは子供達が登校した少し後の時間になっている。人のいない我が家にホッとして横になる。実は最近の私は話しかけられることが、あまり好きではない。それに翔は私の体調を知りながらも、私が家にいると駅まで送って欲しいと言うことが度々で、今はそんな往復5分少々の用を頼まれることも負担に感じるのだ。そのこともあって散歩の時間を長めにしている。
夜に眠れない分、午前中ウトウトと過ごして、昼頃に買い物に出る。夕食のメインは手を使わないようにするために半調理品かお惣菜のことが多い。できるだけまとめ買いをして、買い物の後に時間があればコンビニか、スタバでティータイムを過ごす。出かけることもままならないので、こうしてティータイムを取ることが気晴らしになっている。
しかしこれも、ショップ内で過ごせる日ばかりではない。人の多い場所に長時間いることは、痒みを引き起こすからだ。調子の良い日はカフェ内でのんびり過ごすが、そこまででもない日は、コンビニでアイスコーヒーを買い、駐車場の車中でのんびり過ごす。
近所のコンビニでは、パートさんと顔見知りになり、手の様子を気にかけてもらえるようになった。その日の状態を見て、アイスコーヒーのカップの蓋を開けたり、何かしら補助をしてもらえるようになった。人に話しかけられるのは苦痛だが、こうして気にかけてもらえることは、外出のままならない私にはとてもありがたいことだ。