それぞれの理解。
「それで、具合はどうなの?手の甲は少し良くなってるみたいだね。」
丸椅子に座った翔は私の腕をじっと見ている。
「手の甲は良くなってるよ。患部が皮膚の柔らかいところに移動してきてる。」
そう言って手首の内側を見せると眉をひそめた。
「いつ頃に治りそうなの?」
「わからない。」
そう。予測はつかない。ステロイドがどのくらい蓄積しているか
、また、本人の身体のポテンシャルや栄養状態、メンタルの状態など、個人差があるので本当に予測がつかないのだ。
「時間がかかる自然治療を選択していること、どう思ってる?ステロイドはその場は良くなるけど、症状を一旦閉じ込めるだけだから、こうして踏み切ったんだけど。」
良い機会だと思ったので切り出してみた。ステロイドの副作用についてもさらに少し補足説明をしたところ、驚いた表情を見せた。
「正直、早く治る方法を選択してほしい本音はあるけどさ、ママがそう考えているなら尊重しようと思うよ。それにステロイドがそういう物なら、怖いよね。」
よかった。手伝いという協力が得られないのは痛いけど、反対されていなくって。
「…まあ、食卓がさみしいけどね。」
翔がニヤリと笑う。確かに私はメインのおかずと味噌汁の他に煮物と生野菜添えることが多かったが、このところはメインのおかずや生野菜を多めにして、実家からデリバリーがあった日以外、煮物は食卓に上らなくなっている。煮物は作っても、できるだけ包丁を使わないメニューにしている。
煮物については、どちらかというと梨乃の方がさみしがると思っていたので意外だった。
「ごめんね。」
「まあ、仕方ないよね。そうだな。から揚げの日をもっと増やしてよ。」
翔はそれだけ言うと自室に引き上げていった。
実は数日前のこと。莉乃からは、あるスクリーンショットの画面が届いていた。どんな内容かというと。
『1.「アトピーを◯◯に治してもらう」ことをやめる。
2.アトピーの誤解を捨てていこう。
3.厳しい食事制限は必要ない。
4.お風呂で石鹸やシャンプーは要らない。
5.保湿をやめることで肌の回復力は高まっていく。
6. ステロイドをやめると、アトピーが改善できる。
7. 心配を手放すとアトピーは良くなる。
8.「〜しなくてはいけない。」は必要ない。』
という内容だ。
私の言ったことを鵜呑みにせずに、彼女なりに調べて私にも情報をくれたのだ。梨乃には入浴の補助もしてもらっているので、このスクリーンショットが届いた時、本当にホッとした。
私の場合、外野の声はあるものの、子供たちの理解を得られているので、本当に恵まれていると思う。
単身赴任中の夫にもメールで知らせておいたが、彼は発症してからの状態をまだ見ていないので、この両腕を見たら驚くことだろう。




