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「仕方ない、仕方ない。」

「イテテ…。あ。またひび割れかぁ。」

指が腫れている痛みかと思って指を視ると、治りかけのひび割れのすぐ近くに新しいひび割れができていた。一難去ってまた一難とはまさにこのことであろう。

ひび割れができてもどんどん治っていこうと頑張っている。治るスピードも早くなっている。体が元気になってきているということだと思う。それはありがたい。しかし、こうしてまた新しいひび割れを見ると気分が少し落ち込む。落ち込んでいても引っ掻いても、見つめていても、瞬間的にふさがるわけではないのに、ついつい見つめて、焦ってカサブタを触ってしまう。触らない方が良いとわかっていながら触ってしまう。

寝覚めに指が痒い時は、一日中痒かったら嫌だなどと考えてしまい、起きるのが億劫になる。

「仕方ない、仕方ない。ま、いっか。」

そんな日は、しばらく布団にくるまったまま、手を掻いてウダウダしてから、そう思い直して起きる。

すぐに治るものではないことはわかっているのだ。わかっているのに、魔法みたいにある日突然キレイに治ってくれないかといまだに願ってしまう。脱ステロイドを決意したときから、時間がかかることは覚悟の上のはずだが、それでも期待してしまう自分がいる。

ひび割れが次々にできていく毎日だが、できたひび割れは治ろうとしている。昨日まで痛かった傷口の痛みがなくなっている。このアトピーの要因はメンタルが大半を占めていると言われている。それが本当であれば、できていくひび割れを悲観するのではなく、治ろうとしていることを感謝すること。大げさかもしれないが、それでも生きていられることに感謝すること。次々にできていくひび割れを受け容れることが必要だと感じている。治ろうとしているのは、私の体が努力しているのだから。


最近の私は子供の頃のつらかった記憶を思い出すことが多い。つらくて、蓋をしていた記憶だ。努力をして、結果を出してもそれが期待に満たない結果だったときに親に罵られた記憶。

「これで貴方は満足なの?お母さん、納得いかない!認めないから!」

この言葉はどれだけ私を傷つけたか。もっとも母はそんなことは記憶にないだろう。それに関しては「仕方ない、仕方ない。」と思う。母はそういう人なのだから。私は、自分に母のような言葉を投げつける気はない。それでいいと思っている。


病気というのは、自身と向き合うための機会でもあると言われている。それを思えば、この状況でそれをやたら思い出すのは納得である。このような記憶に蓋をしたまま一生を終える人も多い中、向き合うチャンスが来て、それに気づくことができたということは、恵まれていることであり、神様からのギフトともいえよう。


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