なんで、こんな目に?
薫子のサポートのもと始まった脱ステロイド生活は、並大抵ではなかった。
浸出液、痒み、ひび割れ、腕と指、手の甲の腫れ。口の周りもひび割れと浸出液に支配されている。朝目覚めると顔が腫れている時もある。そして食欲も減退した。
「なんで、こんな目に?」
鏡の中の私に、黄色いカサブタに覆われた手に、何度も問いかける。
手も顔も普通の状態ではない。そのため、化粧もできない。アクセサリーどころか腕時計すら着けられない。指先も思うようにならないので、コンタクトレンズも着けられない。
外出時はアームカバーを着けるが、浸出液が出ているうちは、アームカバーの生地が皮膚に張り付き、外すときにできかけのカサブタを剥がしてしまう。口元もマスクで覆うが、こちらも浸出液が多いうちはすぐにマスクが黄色く染まった。
しかし、ステロイドを長年常用してきた人の体験談を思えば軽い方だった。心が折れそうになる度に、そうやって乗り越えてきた人もいるんだと、自分に言い聞かせた。
食事についても、薫子から指導を受けた。
皮膚の修復のためには、普段よりもずっと多くのだったタンパク質を摂ることと、ビタミンやミネラルなどは現代人は慢性的に不足しているので、今私はそれ以上に摂らなければならないとのこと。しかし先述のように食欲がない。
「流し込んででも摂らないと治らないよ!」
そう言われて、好きではないがサプリメントや食事に置き換えられる栄養のあるシェイクを取り入れることにした。シェイクを飲むことも最初は抵抗があったが、食べたくない時にこれを流し込めばいいんだと思うと意外にすんなりと飲むことができた。
メンタル面においても、薫子は言った。
「七帆は頑張りすぎ。今回のアトピーはメンタルの要因、つまりストレスが大きいと思うよ。」
大人のアトピーはストレスがかなり関係してくるものらしい。それは私自身もそのような一文を本で目にした。しかし、そんなに私、頑張ってない。
「自覚がないだろうけど、緩められるところは緩めなきゃ。泥のようにグウタラするつもりにならないと、いつまでも治らないよ!」
薫子、怖いこと言うなあ…。