抗生物質の反応。
処方された薬は抗生物質の他に痒み止め二種類と、保湿の為の塗り薬だった。二週間分。抗生物質ってこんなに長い期間、服用するものなのかという疑問もあった。相談と報告をしたくて薫子に電話すると、驚いた声を出した。
「抗生物質が二週間!?多すぎるよ!それに、抗生物質を出すってことは、根本的な治療をしようとしているとは思えない。」
感じの良い医師だったが、脱ステロイドの治療としては、どうやら違うらしい。やっと医者にかかって、これではなんだかガッカリだ。
薫子のアドバイスだと、抗生物質の服用はしない方が安全だが、どうしても服用したいなら3日ほどで止めておいた方が良いということだった。
まあ、薬のことはともかくとして、アトピーという診断を受けられたことは進歩だ。
今日で薬を服用を開始してから一週間。変化は二日目から現れ始めている。ジュクジュクだった肘の内側が乾燥しだした。できていたカサブタが剥がれ、元の皮膚に戻った部分もある。しかし困ったことに指まで乾燥してひび割れが始まった。保湿の塗り薬はこの為のものだったようだ。しかしこれはできるだけ使わないようにしようと決めて、エッセンシャルオイルのメーカーが販売している傷口用の軟膏を使うことにした。ひび割れのところへ注意深く塗る。軟膏などで保湿するのは気が進まないが、抗生物質を飲んでいる間だけはひび割れの部分にだけ塗ることにした。
痒みは相変わらずある。しかし現在のそれは乾燥からくるもののように思える。
薬の加減で夜は眠れるようになったのはありがたいが、眠っているうちにかき壊してしまっている。朝起きると、視界に入ってくるのは、皮膚が剥けた腕と、カサブタがびっしりと詰まっている爪だった。おかげで寝起きは毎朝凹んだ。
そして、鍼灸師の先生にも相談した。この先生、もともとは薬剤師だったので相談しない手はない。
「薬剤師の知識から考えると、二週間も処方されているのなら、せめて一週間は飲んだ方が良いと思いますよ。」
「今日で一週間なんですけど、続けて飲むか止めようか迷っているんです。」
「患部が少し乾いてきているので飲みながらもうしばらく様子を見た方が良いと思います。」
「朝と夜の服用なんですけど、夜だけ飲むことにしたいなあ。」
「回数を減らすと、体に負担がかかるだけで効果が得られなくなるから、飲むなら回数を減らさずきちんと飲んだ方が良いですよ。」
薬を全く良く思っていない薫子と、薬をあまり使いたがらない薬剤師の見解は、異なっていた。
薬の加減で夜ちゃんと眠れるのはありがたい。患部が乾いてきていることに関しても薬の効果が感じられる。しかし、将来的に薬の影響が現れることを思うと、1日も早く服用を止めたい。しかし細菌はきちんと殺しておきたい。
かき壊してヒリヒリする腕を見つめながらため息が出てしまう。見た目には悪化していても「昨日より今日、今日より明日。」と信じて脱ステロイドを続けて来たのだ。しかし、今回の細菌感染は無視できない。
鍼灸師の先生の話を含めて薫子にまた相談した。
「私なら飲まない。でも、どうしたいか決めるのは七帆自身よ。」
薫子はそう言った。決めるのは最後は自分というのは、薫子が常に言っていること。薫子の意見も、鍼灸師の先生の意見も決して間違いではないと思う。
私が決めればいいんだ。




