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第一話 

ニーモ島にするか結構審剣に悩みましたが、まぁ漢字の方が良いかなって


「おはようございます。皆さん席に着いて下さーい」


 担任の先生がそう言うと同時に朝のチャイムが鳴り響く。

 なんともタイミングの良いものだと関心しながら、読書を止めて前を向く。その数秒後には思い思いに話していた級友も全員席に着いていた。


「では日直さんお願いします」


「起立、礼、着席」


 先生が言うと今日の日直である…名前は忘れたがそいつが号令を掛ける。それに歯向かう奴はおらず、皆素直に従う。


「はい、ありがとうございます。では出席を取りますね」


 先生は名簿を見ながら出席番号順に名前を上げていく。その中には勿論俺の名前も含まれているから順番が来れば返事をする。

 あぁ、ついでにさっきの日直の名前は日高だった。ただ、覚えていられる気はしない。


「全員出席、っと。皆の元気そうな顔が見れて私は満足です」


 昨日も、一昨日も言っていた台詞だ。三日前も言っていたし…まぁつまりは毎日言っている訳で、よく飽きないものだ。


 「では早速ですが、最近夏休みが近いからとはしゃいでいる生徒が目撃されています。その気持ちは分かりますが夏休み前にテストがある事も忘れず、節度を持って行動して下さいね。朝の連絡は以上です」


 その注意を受けて心当たりのあるものは何かしら反応を示すが、先生は特に何も言わない。ようは注意喚起で済む程度の事なのだと予想出来る。大方、制服姿で夜に出歩いていたとかその辺りだろう。

 出席確認、連絡も終わっても朝のホームルームはまだ残っている。この場合は残り時間は自習となり各自で好き勝手する事になる。

 読書は本にもよるが自習と認められているので俺は読書を選ぶ。本はとても良い教材だと俺は思っている。技術書なんかは特に。

 本を読み始めた時に先生は「また後で」と言って教室を出ていった。担任の先生の担当教科は日本史だから次に会うのは三限か。

 その後数分が過ぎて朝から二度目のベルが鳴ると、皆自習をやめて一限の授業――現代文――の用意をする。数秒後には現代文の教師が教室に来た。これから授業が始まり、俺…だけでなく少なくない数の生徒が退屈な時間との勝負となる。

 授業とは如何にして暇を潰すかの時間である、とは誰の言葉だったか。…少し違う文面だった気はするが気の所為という事にしておこう。


「おはよう。じゃ挨拶は良いから授業始めてくぞ」


 教師のそんな台詞と共に現代文の授業が始まった。



「はっ!…夢か」


「お帰りなさい現実世界へ、ってな!」


 一限からずっと寝ていた彼の頭に拳骨が落ちる。

 寝起きにアレは辛い。漫画のような世界だったら確実に目から星が出るような強さだったぞ、今の。

 

「っつぅ…。先生、体罰は訴えられますよ」


「ちゃんと相手は選んでやる。っつーか、今時『はっ!…夢か』なんて言う奴が居るなんてな。そっちに驚いたぜ」


 先生はそう言って教壇に戻っていく。彼は寝起きと拳骨による焦点の定まらない目の中、先程の先生を見ていた。

 その人が数学教師という事に気付き、それは即ち今が五限である事の証明でありそれを理解した様子。それを理解した瞬間に猛烈に腹が空くのは仕方のない事だろう。しかし授業中に飯を食うことが許されるかと言われれば勿論、否。


「うおおおおおお!!」


 だが何を思ったのか彼は叫びながら鞄に手を伸ばし用意していた弁当の箱を開ける。程よい感じに冷めているであろうそれら口に運ぶのに何の躊躇いもなく、まさにバクバクという勢いで飯を食べる。


「突然叫んだと思ったら何いきなり飯食ってんだお前は!」


 数学教師は勿論注意して止めにかかる。だが、それでは遅かった。


「何を言っているんですか先生。私は起こされてから真面目に授業を受けようとしているじゃないですか」


 彼はとても白々しい回答をするが、しかし確かにその通りの状況であった。

 机の上には先程まではあった弁当箱は無く、変わりに数学の教科書とノートが置いてある。ご丁寧に黒板の文字も途中まで移している最中だ。

 勿論、実際には食べていたし教科書もノートも弁当を出す前に置いていたものなのは、言わずとも察して欲しい。

 

「お前…流石にそれは誰も騙せんぞ…」


「いえ、先生。物的証拠が無い以上はそれらを認める事は出来ません。例えば先生が私が食べているのを見たとして、それらが錯覚、幻覚等の類でないと証明できますか?それとも先生は自身が間違えることが無いと断言できる程の人物なのですか?」


「物的証拠も何も、中身の無くなった弁当箱とかあるだろうよ」


「そりゃ、今は五限ですからね。昼休みに飯を食うのですから無くなりますよ」


「…お前らも見ただろ?こいつが飯を食っている所」


 とんでも屁理屈に思わず周りに同意を求める数学教師。

 その気持ちは…分からないでもない。

 周りの反応もどうすればいいのか戸惑っている者が多いが、何人かは頷いている。


「ほら、周りも見たって言ってるだろ?」


「先生。ではここで集団錯覚が起きる可能性を考えて見て下さい。超偶発的にであれ例え1%でもそれがあるのであれば、人間の想像できうる事は常に起こりうると偉い人も言っていました。つまりはそういう事なのではないのですか?」


 何故か頑なにに認めようとしない態度には、流石に数学教師も呆れた様子だった。


「はぁ…お前に付き合うのが馬鹿らしい事が分かったよ。もう何も言うまい」


「よっし!」


「って言うとでも思うか?お前はこの授業中ずっと立っとけ!」


 当然、再びの拳骨と共に罰を与えられた。

 ま、そうなるよな。

 ちなみに、一部始終を見ていた俺も読書に夢中で昼休みが過ぎてしまって昼食を取ってないが、あんな馬鹿な真似は流石にしない。我慢できない程の空腹ではないのだし、放課後にでもと思っている。

 でもあの見事な早食いを見れたのは僥倖だったな。

 体には悪いかもしれないが、ものの数秒で弁当を食い終わったのは素晴らしい技術だと素直に賞賛出来る。いつか使わせてもらう事もあるかもしれない。

 そして授業中ずっと立つ彼を背景に五限は終わった。…彼は授業終了後の休み時間も数学教師に叱られていたが、自業自得だと誰も同情する事は無かった。

 


「では皆さんまた。部活の人はこれから頑張ってください」


「起立、礼、解散」


 日直の合図によって各自好きな様に行動していった。部活もやっていないし、友人も作っていない俺は直ぐ様帰宅の用意をする。

 帰りはあいつらの為に何か買っていくか。って、あぁ先に弁当を処理しなければ。作ってもらった物を食べないのは失礼過ぎるからな。

 流石に放課後の教室で弁当を広げる事は恥ずかしいので、何処か適当な場所を思い浮かべる。

 学校内で人気が無さそうな場所は…屋上は施錠されているし人気が無いといえば無いが、鍵をどうにかしてまで行くのもな。放課後だから使ってない教室もあるだろうが、全く人気がないというのは考えにくいか。部活も委員会もあるだろうしな。

 少し考えてから学校内は諦めて家の近くの公園で食うことにした。人に見られる事にはなってしまうが、知り合いの可能性は少ないからだ。知り合い以外であれば、見られても…まぁ構わないかなと。

 そうと決まればもう学校に居る理由も無く、さっさと昇降口へと向かう。後輩と先輩は勿論、同級生にも知り合いは居ないので何事も無く学校の外に出た。

 と、そこまでは良かったのだが。


「何故ここに居るんだ…」


「お姉様がお呼びです、まこと


 校門前で俺の名前を呼んだのはよく見知った人物、というか同居人の片割れだった。

 カレン。それ以外の名前も持っている為、本名か偽名かは知らないが俺に名乗ったのはその名前だ。金髪碧眼の姉と違い、カレンは銀髪赤眼となっていて姉妹でもかなり容姿は変わるんだなと初対面の時は思ったものだ。

 …それはさておきだ。短く揃えられた髪、切れ長の目、バランスの取れたモデル体型、と容姿端麗の美女のカレンが帰宅する奴が多い放課後の校門前に、俺を待っていたという状況は非常に宜しくない。

 というかそれよりも突っ込みたい事があった。


「何でよりにもよってメイド服なんだよ!目立ちまくりだよ畜生!」


「これはこれからの仕事着です。そんな事より早く行きますよ、お姉さまをお待たせする訳にはいきません」


 質問に答えると、俺を掴んで乗ってきた車の助手席に押し込む。

 というか日本車って…自分の外見を考えろよ。

 明らかに日本人じゃないカレンが、更には今はメイド服なんて着ている。そんな人物が運転席に乗り込むのを見ると違和感しか無い。だからといって外国車で来いとも言えないが。そもそも家に車なんて置いていなかった筈だが…。 

 

「今更抵抗はしないけど、流石にこの状況の後始末ぐらいは頼んでもいいよな?」


 カレンは隣の俺を見た後、外の様子を見る。ちょっとした騒ぎになっているのは誰が見ても明らかである。

 クラスでも冴えない男|(あくまで自分自身の意思による印象操作の結果である)が突然美少女に連れ去られるという状況なのだから、俺だって外野なら驚く。


「はぁ…。これだから俗世は面倒くさいのですよ」


 ため息を吐くとカレンはそのまま車を発進させる。いや、誰のせいだと思っているのか問いただしたいが、ぐっと堪える。どうせ期待した答えは返ってこない。

 答えを聞いていないが、カレンとしても騒ぎになるのは困るだろうから大丈夫だろう。というかしてくれなければ俺は明日どういう顔をして学校に行けば良いのか。

 カレンの様に俺もため息を吐きたくなるが、聞きたいことを聞くほうが先決か。

  

「それで、いきなり迎えを寄越して何処に連れて行くつもりだ?俺の家という訳じゃないんだろ?」


 そうだとしたらわざわざ迎えに来る必要はない。時間が経てば俺は必ず家に帰るからだ。急ぎであれば別だろうが、態々車を使っている辺りそこまで急ぎでも無さそうだった。


「真は新本島にいもとうについて知っていますか?」


 カレンが運転している姿は始めた見たが、中々様になっていた。あまり見ていて気付かれていても気まずいので俺も前を向く。


「あぁ。といってもお前らが話していた内容程度で詳しくは知らないぞ」


「盗み聞きですか。真らしい趣味の悪さですね」


「お前らが勝手に目の前で話していたんだろうが!」


 流石に異論を唱えるが、カレンはどこ吹く風だ。とはいえ流石にそこで会話を終える事はなかった。


「一応説明しますと、新本島は才能ある者を集め保護・管理するのが目的の場所です。…何時の時代でも、世界各地に所謂天才と呼ばれる人物は存在しています。ですがそれが世に出ないのは人知れずこの世を去っているからです。出る杭は打たれるとでも言えば分かるでしょうか?私怨や嫉妬等の人災や、単に不運によるものがありますが、そうやって惜しい人物達を私達は亡くしてきたのです。それを救うための場所が新本島という訳です」


 少し前に聞いた内容と一緒だ。付け加えるなら先日報告された試用施設の結果が上々だったのがきっかけで本格的に取り組み始めた、というのも話していた。試用施設の名前は忘れたけど、若者を集めやすいってことで学園の体を成していた筈だ。

 才能ある者、ねぇ。

 何処に向かっているか予想が出来てしまったが、一応聞いておこう。


「あー、なんだ。つまり今向かっている先ってのは新本島ってわけか」


「お察しの通りです。自虐が過ぎる真でも自分の才については理解しているのですね」


「地味に傷付く言い方だな、おい。自虐してるんじゃなくて謙虚なだけだ。俺よりも凄い奴らを知っているからな」


「…真はお姉様が気にかけているという事をもう少し考えたほうが良いです」

  

 俺からすれば二人の姉妹は極端に言ってしまえば子を褒める母のようにしか思えない。赤ん坊が一人で立てるのを喜んでいる、みたいな感じだ。

 多分これを言ったら不機嫌な様子が更に酷くなるだろうから止めておく。


「俺のは所詮真似事だからな」


「それは貴方が自分で枷をしているからで…。まぁ良いです。傲慢になって暴れられても困りますし、きっと真は今のままが一番なのでしょう」


 カレンの様子はまるで出来の悪い子を宥める親のようで、やはり俺の感想は間違ってないのだと思う。


「傲慢って。そんな自分を見たくないのは同感だ。俺は今の俺を気に入っているからな」


「それは結構な事です。あ、確認するのを忘れてましたけど、これから目的地までは大体数時間ほど掛かります。飲食類は大丈夫ですか?高速道路を利用しますので途中でサービスセンターに寄ることも出来ますけど」


 これは珍しい。車で来ている時点で遠いと予想はしていたが、効率重視のカレンがそんなに時間の掛かる方法を取るなんて思っていなかった。島と言うからには海空のどちらかで行く予定なのだろうが、カレンなら文字通り一瞬で連れて行くことも出来るだろうに。

 まぁ都合が良いと言えば良いかもしれない。弁当を食いたかったし、飲み物と…トイレを済ませておこう。


「じゃあそこのコンビニに寄ってくれ」


「分かりました」


 コンビニに車を止めるとカレンは私は電話していますね、と車の中で携帯を操作し始めた。正直、降りてこられていたら美女とメイド服という素晴らしい組み合わせの格好なので助かった。

 じゃ、俺も用事を済ませるとしますか。

 トイレに行こうとすると先客がいるようで、先に買い物を済ませることにした。

 飲み物は最近気に入っている『普通の水』というのを買った。正直ネーミングセンスを疑う所だが、これが実に…普通の味なのだ。美味しとも不味いとも思えないその味はまさに普通。その微妙な加減が何処と無く気に入ってしまっていた。コンビニでも税込み五十円という驚きの安さなのも魅力かもしれない。ついでにカレンの分も買っておくことにした。カレンはあまり『普通の水』を気に入ってくれていないので、適当な天然水の物とパンを二個買った。

 会計を終えた頃に先客が出てきたのでトイレを済ませた。そこまで切羽詰まってはいなかったが、出来る時にしておくものだ。

 コンビニでの用事を終えて戻るととまだ電話中の様だ。少しストレッチでもしておくか。

 ストレッチをしながら空を見る。まだ夕方には早いが、少しずつ日が沈んでいっているのが分かる。時間的に車の中で夜になるのは間違い無さそうだな。

 というか新本島に行くのは良いが、そこで何をするんだ?管理・保護だとか言っていたが、詳しい内容までは聞いていない。そこで暮らす事になるなら学校もどうなることやら。折角の一年間の積み重ねが無駄になるのかもしれないと考えると、流石に落ち込む。折角目立たず平穏に暮らせていたのに。というか俺以外の奴も当然居るよな。しかもそいつらは絶対に何かしらの才能を持っている、ときたもんだ。

 …将来の助けになる技術が増えるだけで何か損があるという事はない、か。

 


「すみません、お待たせしました」


 ストレッチ開始から数分後に電話が終わった様で、車の窓を開けてカレンが呼ぶ。


「いいよいいよ。じゃ、俺は食い損ねた弁当食うから。あと、一応カレンの分も買っておいたぞ」


「ありがとうございます」


 助手席に乗り込むと俺は鞄から弁当を取り出す。その間に車は発進した。


「何か昼休みにあったのですか?」


「いや、単に本を読んでいたら忘れてたってだけだ」


 弁当箱を開けると流石に中身は冷めてしまっていた。時間が経ちすぎているので仕方ない。


「今日のおすすめはピーマンの肉詰めですよ。昨日の残り物ですけど」


「それは俺が作ったやつだろうが。カレンが何か作った物でおすすめしてくれよ」


 基本的に俺の家では朝はあいつ、昼はカレン、夜は俺が食事当番だ。用事があったりで無理な時は入れ替えたりもする。

 あいつの料理は強制的に味を美味くしているため味は問題ないのだが、見た目が見るに耐えないのが問題だ。その点カレンは見た目も味も何の問題も無く、俺達三人の中で一番料理が上手い。

 そういえば創作物の姉妹は、何故か妹のほうが優れている事が多いのは何故だろう。出来ない姉を持つと反面教師として育つのだろうか?

 あの姉も決して駄目な奴ではないのだが、一部に特化しすぎているのと性格がアレだからな…。

 おっと、考え事をしていて弁当を食うのを忘れていた。一応、すすめられたピーマンの肉詰めを食うか。

 …まぁ普通だな。我ながら美味しいとは思うが、カレンにはやはり勝てない。


「お姉様が作ったお米はどうです?」


「言わなくても分かるだろ」


 米は基本的に朝に炊くあいつの物だ。つまりは、もう見た目が酷い。モザイクが欲しいぐらいのものなのに、それでいて匂いも味も問題無いのが問題だ。目か舌がおかしくなったのかと錯覚してしまう。


「完璧ではなく、どこか劣る部分がある。そんなお姉様が私は大好きです」


「あぁ知ってる。カレンのお姉様LOVEっぷりはいつでも変わらないって事をな」


 カレンは姉であるあいつを大層慕っている、それこそ愛と言える程に、だ。姉のあいつも妹である妹を好きだが、あっちは別に愛とまでは言わない。カレンが異常なだけだ。

 とはいえ姉に対して提案するし、反対する事もある。盲信している訳ではないのが救いだ。カレンだけがあいつを止める事が出来る存在なのだから。

 おっと、考え事をしている最中にピーマンの肉詰めを食べ終えてしまった。

 残りはトマトとレタスで彩られた弁当箱に卵焼きやほうれん草のおひたしが入っている。弁当の中はお米を除けばあとはカレンが作った物だ。 

 …うむ、いつも通り美味い。やはり料理ってのは味だけでなく見た目も大事だという事を姉妹の対比で毎度気付かされる。


「それで、私はいつまで待てばいいのですか?」


「はっ?」


 いきなり何を言っているんだカレンは。待つってどういうことだ?


「馬鹿ですか真。私は今運転をしているのですよ」


「そんなのは見れば分かる。何が言いたいんだ」


「今の私は両手が手放せないのですよ?そして私はお腹空いています」


「つまり?」


「もう、鈍いですね。食べさせて下さいと言っているのです」


 一瞬で、まず何でそんな事をとか。その次に別に片手運転出来るだろうが、とか。手を増やすことだって出来るし、そもそも事故なんて起こさない事も簡単だろうし、いっその事食ったという結果を持ってこようか、とか。他にも色々と言いたいことが思い浮かんだし分からない事だらけだが、それらを全て飲みこんで俺は袋の中のパンをカレンの口元へ持っていく。

 断った方が面倒な事になる未来しか見えなかったからだ。


「ほら、あーん」


「…菓子パンはあまり食べませんが美味しいですね」


「そりゃ自炊が主だからな。金に困っている事は無いが、無駄に使ってもいいとも思えないしな」  

 

 カレンの咀嚼が終わるタイミングでパンを口元に運ぶ。それを何回か繰り返すと一つ目のパンはなくなった。


「お姉様の気分を味わってみようと思いましたが、失敗ですかね。特に何も思いませんでしたし、お姉様は一体何の意図があるのでしょうか」


 そんな理由かよ。確かに偶にあの我儘なあいつに言われる事がある。その姉の気持ちを知ろうとしただけか。

 んでお前はもう少しさっきの理由を貫こうとしろよ。片手運転で水を飲んでるなら絶対にパンも食えただろうが。そもそも窓側を向いていて前すら見てないし、過ぎたことに文句を言っても仕方ないが、流石に言いたくなってしまう。


「俺もお前とあいつの考えが分からん」


「ですが、満足はしました。ありがとうございます」


 美女に笑顔を向けられて喜ばない奴はいない。

 はぁ、俺も現金な奴だな。


「さいですか」


 弁当の残りを平らげると俺も水を飲む。やはりこの普通さがやはり堪らないな。


「そろそろ高速道路に乗ります。食事も終えた事ですし、睡眠でも取っておいたらどうですか?あちらに着いてから予定している事もありますから」 


 小腹が膨れたからか、確かに少し睡魔が襲ってきている。我慢出来ないものではないが、眠っても良いと言われているのだからそうするとしよう。


「それじゃお言葉に甘えさせてもらう。着いたら起こしてくれ」 

 

 座席を丁度いい感じに倒す。車の中だから快適とまでは言えないが、不満もそこまではない。


「はい。おやすみなさい」


「あぁおやすみ」


 そうして俺は目を瞑り、数分後には眠りについていた。

あっち終わらせてないのにこっち書くのは流石に抵抗がありますが 別に良いよね(ボソリ


睡魔と戦いながら書いたため後半は完全に無理に願望詰めてみました サイレント修正するかも

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