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Heart of 6 〜黒と試練〜  作者: 十ノ口八幸
序章
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序章~始め2~第2話

入った部屋には男性一人と腰かける老人と空のケージ。

「はじめまして、州環君。僕はこの学園顧問審査委員のヴィレルタルハといいます。ああ、フルネームだよ。ヴィレで区切るとかヴィレルで区切るとかなく。普通にヴィレルタルハと呼んでもらいたい。」

出会ってそんな事を言われた。

「ほう、面白い。何かあるとは考えたがな、これ程とは思いもよらなんだ」

椅子に座っていた老人が僕を見ながらそう言った。続けて、

「心せよ、小僧。、これからお前にはあらゆる事が襲いかかるだろう。が、それを乗り越えたときにお前には何物にも変える事の出来ない何かを手に入れるだろう」

何処かで聞いたような文句を言われて、はあぁ、としか言えなくて、それで、

「それじゃ、これを持ってくれるかな」

そう言ってヴィレルタルハさんが差し出したのは空っぽのケージ。首を傾げながらケージとを交互に見ると、それを察したのかこう答えてくれた。

「なに、これから君のクラスを決めるための選別試験をするだけさ。これを持つだけて構わないからね」

この時言っていることが理解できなかった。クラス。選別試験。

普通こういうのは事前に行われるものではなかろうか。どうしてこんなタイミングで。と質問したと思う。だって数ヶ月も前だし。

でも、たしかこう言われた。

「それは簡単だ。君に試験を行おうと幾度も君の住居に行ったんだけどね。その都度、君は不在だ。彼らに即日に言っておくように通達したのに何処でこうなったのか。最後まで君が捕まらず最終的に入学式当日に決行となったのさ。」

た、確かにそんな話は聞いていなかった。

「まあ、時間もないし早速これを持ってくれるかな」

ケージ。小動物等を観賞するために閉じ込めておく檻。目の前にあるのは鳥を観賞するための何処にでもある品物。

不思議だった。誰でも思う。この場に合わない、と。空のケージがある事の異様さに。

どうしてそう思ったのか知らない。でも、そのケージから漂う異様な気配と空気がまるで品定めをする豪商のように僕を観ている感じがした。

それでも意を決してそれを掴んだ。


僕のクラスは一期で六番目。則ち、末端の教室になった。

そこは騒がしく明るい教室だった。

でも、区別される普遍の教室だった。



いつの世にも見えないけれども暗黙の規則があるもので、今の時代にもそれはハッキリとある。

単純に3つにわけると、上位。中位。下位。

上位、世界にあらゆる影響を与えるモノ。

中位、上位ほどでは無いにしろ相等の干渉力をもつモノ。

下位、どんなに努力してもどうにもならない絶望の中でいるモノ。

以上が大まかな区分。本当はもっと細かく分かれているけれども今は大体こんな感じ。

云ってしまえば階級なんだけど。



さて、何の躊躇もなく扉を開け、あの部屋を出る時に渡されたカードに記された席へと座り、そのまま夢の中に落ちた。

どうもこの時は、色々ないざこざに巻き込まれて疲労が抜けないでいた。

眠気と疲労だけならまだ良かっけど数日の間の出来事との関連で大量の書類を作成して期日内に提出。何処にと聞かれても知らない。どうしてかと云うと、書類の提出はデータ上で行き先は不明だから。体裁で一応は管理統括部らしいけど、少ししてからそういう部所は無いと知らされた。

と、こんなどうでも良い事は今は置いといて、耳に入る騒々しさが適度に心地よく僕の夢に一つの花を添えていた。


夢はいつも良いタイミングで覚める。この時の夢は知らない影を相手に追い詰めて最後の一手で覚醒(めざ)めた。


目が覚めて最初に見たのは機械人形に写っている教師。

「うえ」

『放課後、この場所に来なさい』

画面に写し出された場には何処かで見たような気がしていたけど、寝起きの頭で理解出来ず、少しして合点がいった。

「ああ」

そう言って、眠りに堕ちた。


沢山の夢を渡り見て、憎しみと怒りと憎悪、そして恐怖と悲しみ。


揺り動かされた体の振動で目を覚まして相手を見ると、指を何処かに指していた。

その方向の先を見ると時間が夕方になっていた。

「うあ、ああ。うぅん、と、ふう」

頭を振り、目を擦りお礼を言ってから教室を出て、帰宅しようとした。

「ちょっと待って」

眠い意識で振り向くと、

「州環くん、君、先生に呼ばれているのに行かなくて良いの」

それを頭で反芻して、ああ。と思い至って再びお礼を言ってから場所を忘れた事に気がついて焦っていると、相手が教えてくれた。


別れとお礼を言って僕は指定された部屋の前にいた。

行ったのに扉は開かなくて、仕方なくその前で待っていた。一息吐いて、左右を確認して首を傾げて、思考が至る前に、

「待たせて、ごめんなさい」

複数の人影がいた。

人影に促されるままに部屋に入り、椅子に座らされた。


「さて、なぜ君は授業中だけではなく入学式でも眠っていたのかな。正当な理由がなければ厳重な処分を科さなければならないが。」

嘘をついても何のメリットもないので正直にこれまでの事を全て話した。

「その物理的証明はできるかい」

「証明は、わかりません。でも、これだけは言えます。探す時間が有ればなんとか出きると思います。」

「そんなものは信用できないな。今のご時世、信用した者は終わる。と、云うからな」

この時、直ぐに諦めた。

「それにしても驚いた。本当に入学出来るとは」

「うっふふ。そんな事、判りきったものだし気にする必要なんて無いわよ。今さら」

皆さん何故か頷く。

「そう言えば、君は特別に寮外居住を認められたのだったな。驚いたよ。どんなことも例外無く寮に入らないといけないのだがねぇ」

そう言われても僕は知らない。

「さて、君の事情は把握した。しかし、話だけでどうにもならない。ここは上に聞くしかないかな。少しの間、君には学生寮の一室に居てもらう」

拒否する気もないから頷いた。

手に枷を填められ、仮面を付けられ、外套を着せられ、俯かせられながら、何処かの建物に入った。


多数の視線が全身を突き刺し、奇異と興味を注いでいる。

広い場所で少し待たされ、階段と廊下をいくつも歩かされ、鍵の()く音と(ひら)く音、耳元で入るように促される。

静かに部屋へ入った。


扉が背後で閉まり、鍵を掛けられた音と同時に部屋の灯りがついた。

そこには、ベッドと脇机が備え付けてあるだけの簡素な室内だった。取り敢えず、ベッドに腰をおろして、そのまま横になって眠りについた。


自然に目覚めて、制服のままで寝ていた事に気づいたけどしょうがないと思いそのままにしておいた。

眠気が取れていなくて、気を抜いたら瞼が暫く開かないだろと思って両頬を思い切り叩いた。

痛覚が寝ぼけた思考を覚醒させ、体の凝りを軽く解して、脇机を見ると、見たこともない模様が書かれていて直ぐに消えた。

この現象か何かは分からないけど放っておいても別に害があるとは限らないのでこの事は忘れていた。


ベッドから立ち上がって伸びをして扉を開けるために手を伸ばそうとしたらいきなり開いて、そこには知らない生徒が立っていた。

「おはよう。州環くん。」

相手はどうも僕の事を知っているようで遠慮なしに部屋に入ってきて、手に持っていた物を僕に差し出してきた。

それは、制服だった。それも新品で。

言葉を発する前に、「昨日はよく眠れたかな。本当は別の人が君を迎えにくる手筈だったけどね、急な私用が入って代わりに来たんです。」と、説明された。

この時、納得して目的の場所まで案内してもらった。


道中に自己紹介され、

「ヨサカ・レイ。と云います。一応、クラスメイトですよキミの」

「へえぇ。」

それだけを言って、黙って歩く。

「あ、あれ。それだけですか。普通、もっと驚くとか興味をもって色々な事を聞くものじゃないかな」

視線だけを合わせて、「ああ、そうかな。ゴメン。正直、初対面の相手に無遠慮に聞くのは失礼かと。そんな事をして印象が悪くなるのはこれから先、同じ空間で勉学に勤しむのにお互いに気まずいだろうし、大変だろうと思っていたけど」

「それは酷いな、そんな事、気にしないよ。どうせこれから同じ部屋になるかもだし」

ん。

「え、それ初耳だけど、僕はてっきり」

「後で聞いておくよ」

その後は雑談を軽くして目的の場所に着いて僕は中に入って別れた。


「それでは、昨日の続きをしようか。とは言えだ、上に確認したところ君に関しての事情は把握した。それでだ、やはり、暫くは学生寮に入っておいてくれないか。上の了承は得ているから」

その理由を聞くと、

「キミには幾つかの試験と検査を受けてもらうわ。簡単に終わるからそんなには掛からないけど、長くて一月くらいかな」

短くても数日。と言っていた。

「これが、試験と検査の内容よ。目を通しておいて」

差し渡された端末には筆記から実技。検査にも物理的なものから物質的なものまで数えるのも嫌になる項目が記載されていた。

「これを今から全て受けて貰います。出席については免除される事は無いから後で補習を受けてもらうけどね」

いや、ね。じゃ、ないでしょ。


それからは毎日、試験と検査を受け続け、帰る時には空は暗く、街灯を頼りに自分の部屋がある寮に行って、入るとベッドで直ぐに眠っていた。

早朝に迎えが来て、あらゆる施設であらゆる事をして疲れた体を引きずり寮に。それが何日も続いた。

そんなある日に起こった一つの出来事が非常に厄介な事に繋がっていく事に。


その日は僕の試験と検査は全て無く、早朝の迎えもないから何時もより長く眠れることに幸福感を味わい眠っていると、体を揺さぶられ、起こされた。

「うんん。何」

「州環君。今日は早く行かないと行けないから先に行くね。あ、朝食はテーブルに有るから食べてね。食器は流しに置いておいてね。最後に、絶対に遅れないようにね。それじゃ、行ってくるよ」

「ふぁい」

そのまま二度寝に入った。


また、夢の中にいた。この時は幾つもの大きな存在が僕を囲み、何かを言っていた。そして、大きな衝撃が僕の体を突き抜け、体から僕の意識が剥がされ何処かに閉じ込められた。激しい憎悪と後悔。疑問とアイツという言葉が頭を過り、意識が、消えていく。


耳を突き刺す音が響き、意識が覚醒した。時間を見ると言われていた時間はとうに過ぎていて、全身をえもいわれぬ感覚が覆い、急いで支度して部屋を出た。

走っても良かったけど、考えたら遅刻確定しているし、諦めてユックリと学園に向かった。


門に着いたとき妙に静かすぎ、それでも眠さが残っていたので気にせず校舎に入り、靴を履き替え、自分の教室に歩いて向かっていると、異様な光景が飛び込んできた。


ある角を曲がると人の壁が綺麗に並び、全員が少しのズレもなく頭を下げていた。

「きも。こわ。」

気持ち引きながら教室に行こうと歩いてると、その人の中から恐怖や戸惑いの声が聞こえた。でも、僕は気にすることなく欠伸を噛み殺しながら出掛けに包んだ朝食を食べ、お腹を満たす。

すると、ざわめきが周囲から起こり、包みをポケットにいれ損なって拾おうと屈むと上から言葉が聞こえた。

「おい。お前は何故中央で頭を屈めている。この大事な行事を潰すつもりか。下位風情が」

「どうしたのマカナツ」

「はっ。坊っちゃん何もありません。グズ虫が邪魔をしていただけなので直ぐに排除いたします」

この言葉が終わると強烈な一撃が横から入り、壁に側面を強打。痛みがあまりしないのは人の壁のお陰で衝撃が緩和されたからで痛みは無かったけどこの時、意識が飛んで、気づいたら肩で息をしている大勢の生徒達。壁伝いにいた人が居なくなっていて見つけてみれば遠い所に固まっていた。

首を傾げて思い至って、何かがあってこの状況になったのだろう。

「おい。この様な事をして、大事な主事を。許さないからな」

「・・・・・・」

「この事は、父に報告しておく」

「・・・・・・・・・」

「後、キサマのルームメイトも同罪だから。うん僕のオモチャにしようか」

「・・・あ・・・」

それから僕は包みをポケットに入れて教室に向かった。すると肩を掴まれ、「キサマ、何を無視している。御曹司の言葉を聞いているのか」

「・・・・」

「お前は判っているのか。この方を無視することは」

「それ、僕には関係無いですよね。何処の誰か知りませんけど邪魔とか何だとか止めてもらいたい。僕は普通に学園に来て授業を受けに来ただけです。やっと受けることが出きるんです。逆に邪魔しないでとは僕が言いたいですね。それじゃ僕は急いでいるので」

「待って。」

ああ。遅刻して更によく分からない輩に絡まれ時間を無駄にした。だから急ぐために速度を上げようとした。

「待て」

「は」

「『は』じゃないよ。キミは僕の、僕のための行事を台無しにしたんだよ。謝れ今すぐに。じゃないと世界にお前のいる場所は無くなるから」

「うんん。まだ小腹が空くな」

「は」

「ん」

相手に向き直り、

「ああ、はいはい。そうですね。それでは」

息を吸い、「お前が何者か興味ない。うざい。うるさい。くく。お前の姿を見てると今までどういう生き方をしてきたか分かるな。昔の人は云いました。『お山のサル』。だったかな。うん、君に当てはまる言葉をあげよう。そうだな。・・豚に悪いし・・・これもな・・まあ、いっか。うん。」


「・・・つ」

「は、何て言ったのかな」

「うん。貧弱妄想。あ、これ、貧弱と妄想に失礼かな結局は」

「どういう意味かな」

「うん。でも、やっぱり、これか、愚鈍な怠惰」

間が有り、瞬時に空間を覆うほどの重い空気が支配する。

「はあ、」

何処からか何かを取り出して、何処かに連絡をしている。それが終わると口端を上げ、「皆、コレを好きにしていいよ」

その一言で周囲の視線が恐怖から殺意に代わり、状況が理解できず狼狽えている僕を見て、「はは。全ての権利を剥奪したのさ」

その意味を理解するのに時間が掛かり、その間に全身を強烈な痛覚が走る。

そして、気を失う前に何処からか声が聞こえ、「もし、戻してほしかったら、僕と賭けをしよう。簡単さ。今年の新入生限定会に出て規定の数に達したらそちらの勝ち。無理だったら永遠に僕のオモチャにしてあげるよ」

それから、意識が飛んでいく。次に目覚めた所は、何かの集積所だった。


今更ながらだけど、よく、気絶するなあと。

取り敢えず今の自分を見てると服がなかった。正確に云えば、裸だった。

何故だろうか、不思議と恥ずかしさがなく、逆にシックリと落ち着いていた。

自分の回りを見ているとそこには堆くつまれた無言を貫く器だった。


空は明るく、まだ其ほど経っていないだろう時間だと考えて、これからどうしようかと考えていると、

『やはり、此処にいたか。』

見たこともない一人の男が存在していた。その男は、深い溜め息の後

『こうなると判っていてどうして何もしない。それは待て、話を合わせるともっと前に来られたのでは、は、これが限界。知るか戯けが』

よく分からない事を更に続けて怒りながらまた、一息。そして、その男は言った。僕の目を観ながら。

『いいか、よく聞け、これからお前には更なる災厄と最悪か降りかかるけどな、お前はそれをどうにかしないといけない。その方法はお前が自分で見つけて対処しろ。これは助言だ。じゃあな』

どうしてか言葉が出てるはずなのに、それが、音として耳に聞こえない。

男は云いたいことを言い終わったという表情をして次第にその姿が消えていく。

口は、確かに動いている息が喉を振るわせ、言葉を出している。それなのに聞こえない。僕は焦り、立ち上がろうともがいても、どうしてか動かない体。心は立ち上がれと想っているのにどうして。

そして、男が消える瞬間に見せたその表情はとても優しく、懐かしく、心臓が大きな鼓動を一つ打った。

そして、「あああああああぁぁぁあああぁああああああぁあああぁぁぁあああぁあああぁぁああああああぁぁぁあああぁあああああああああぁぁぁあああぁあああ・・・」

張り裂ける声と、抑えられない涙が溢れだす。



意識が浮上し、

「あ、ああ」

そこは、何処かの部屋。

『大丈夫かい』

状況を呑み込もうにも身体は動かない。

唯一動く目を動かしてみる。

『どうやら混乱しているようだね』

少しの間、

『心配しないで大丈夫。さあ、まだ寝ていなさい。あと少しで終わりますから』

そして、全身の力が抜けていく、瞼を閉じて、意識は次第に夢の中。



暫くの間、僕はまともな授業を受けられなかった。正確には、受けさせてもらえなかった。

あの後、僕は学園の敷地から放り出され周囲から命を狙われ、どうにかして、寮に。あ、この時はずっといた寮にではなくて元の寮に。

数日掛けて着いたとき、寮は静寂に包まれていて、それでも、中に入ろうとして大きな音と一緒に後ろへと引っ張られ、そのまま倒れる。

起き上がって再度挑戦しようと思ったら看板が建っていた。

難しく尊大な言葉を並べていたけれど要約すると、本日をもって僕は退寮になった。そして、本年度の新入生限定会は連休明けに開催する。と、こう書かれていた。

どうにか雨風を凌げる場所を確保して、その日まで息と身を潜めていた。

そして、あの看板には意味は分からないけど、規定数が4と書かれていた。

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