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Heart of 6 〜黒と試練〜  作者: 十ノ口八幸
終章
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終章〜試練とはなんだろう〜第4話

私もこんなに速く通るとは思わなかった。

昨日の終業後に上司に書類を出したら、学園の警備と住居を記したデータを寄越されて職場は解雇されて私物も何故か積み終わっていたし。まあ、丁度良かったからそのまま此処まで来たんだけど。


「それって、厄介払いされただけだよね。」

「そうだな。そう聞こえるな。」

「あ、やっぱそう思いますよね。」

あの後、全員が改めて自己紹介をして自然な流れで席に着いた。

それは、立ち話をしても疲れるだけだと思ったからではない。その訳は簡単だった。

「あ、話は済みましたか。なら朝食が出来たので皆さん手伝ってください。」

約一日足止めされ、ご飯も余り食べていないため、それを見越していた光魔は先程からキッチンでご飯を作っていたのだ。

「うん。今日も美味しそうな薫りだ。では、改めてご飯と行こうか」

全員が手を合わせ、礼を言ってから思い思いにありついていく。


「そういえば、なんて呼べば良いんですか。本名ですか。それとも仮名ですか。」

あまりの美味しさに頬を綻ばせながらご飯を食べていたレイファに質問をする。

「ん。んん。ふょうらええ。ほうはへひひほ」

「すいません。僕が悪かったです。口の中の物を飲み込んでからで良いんで喋るのはその後で」

「ん。ほうはい。はあ。」

物凄い勢いで手元の食事を片していく。

最後の一杯で喉を鳴らし胃に流し込んでいく。

「ふ、ふうううう。食べた食べた。いやあ。久しぶりに上手い飯を食ったよ。」

口を濯ぐように含むともう一度喉を鳴らす。

「さて、少年の質問だけどね。常時は仮名で願いたい。」

「ふむ、今の言葉には含みが有るね。何故かを聞いても」

「良いよ。別に深い意味はありませんよ。そうですね。言ってしまえば私は一般の人とは違いまして、簡単に言ってしまうと犯罪者なんですよ。」

「空気を変える前に言っておきますが、この人の犯罪歴は随分と前に帳消しになっていますよ。だから正確には元が付きますからね。」

「うん。補足をありがとう少年。確かにね私は元が付くけど、それでも罪を犯したのは確かだよ。だから帳消しになってもあの領域を護っていたのさ」

「護るとかって何その物言い」

「あら、気に触ったかな。」

「あのですね。僕が説明しても良いですか。というよりはしますね。」

白湯を啜ると息を吐く。

「レイファさん。違いますね。二木さんの元々の職場はこの島の領海内を基本一人で警備するというものです。それは寝ることを赦されず食事を取ることも儘ならない。そんな環境に長く居たんです。」

「それで、」

「僕が調べた所、ここ数年は島内の事件は散発的にはありますけど、島外からの持ち込まれた事件はありませんよね。」

察しが付いたのか。

「二木さんが着任した日からあのアホウの不明期間関連の領外部隊なんかの襲撃事件以前までは一切ありません。」

端末を取り出して画面を操作、テーブルに置く。

「見てください。これがそのデータです。」

そこに記されているのは詳細を書き込まれた事件の情報。

六人が読んでいる間に光魔は席を離れ器を洗いに行く。


洗い終えてテーブルに着くと冷めて水になった白湯を飲み干す。

「で、お分かりいただけましたか。この人のこれ迄の償いを」

「ええ。理解したけれど。それは彼女が罪を償っただけでしょ」

「だからと言って、あの物言いは無いと思うがね。」

「それは謝りますが、言い訳として、性分なので諦めてもらえれば」

更に煽る。

「それを言っちゃうとですね。」

「ふむ。それが君の性格ならば我々がとやかく言うものでもないな。それを直しなさいとは言わないから安心したまえ。」

「そう。なら別に構わないけれど」

「そうだ、何か言ってませんでしたっけ。誰かに斡旋してもらったとか」

「ん、そういやそうだね。でも悪いかな。だってさ、あの職場に結局は数日しかいなかったし。」

「で、誰なんですか、その人は 」

指指すとそれは、

「アナタ。ですよ亀沙早さん。」

「ん、そうだったのかい。覚えておらんな。」

「惚けないでよね。」

「やっぱりあの時の人なんじゃない」

「ふええ。それでもあの会場にいたのはこの人以外にもいたと思うけど」

「ん、そう言えばそうだね。」

「あ、そうだ、それを聞くのを忘れていました。」

「思い出したように言うけどね少年。本当はタイミングを待っていたんだろ」

「それもそうなんですけど。少し気になって」

「そうだね。先ずは誰の事を聞きたい。」


「誰の事をと聞かれても、僕が知っているのは貴女と最初に襲ってきた人だけで、後は名前も知らないですよ。」

「そうかい。なら、少年と長くいたあのじいさんの事でも」

「じゃ、お願いします」


船長と言われていたあのじいさんはあの判定待ちの後は詳細が分からなくなったよ。あ、心配はしないように。あれは元気に生存しているだろうね。短期間だけ地下に潜って成りを潜めているんだろうね。


次は、そうだね。アタシの追ってたあの強力な罪人は少年との交渉で死を免れたけどね。その後は知らないよ。


三人目は初めに襲ってきたとかいうアイツはね。少年の口添えで減刑されて去年の末ぐらいに釈放されたよ。その後は何かの伝で真っ当に働いているらしいよ。

まあ、こんな所かね。

質問があれば受けるよ。答えられる範囲だけどね。


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