序章〜始め1〜 終話
迫る時刻。
確か、余裕を持って直ぐに支度を整えてから寮を出て。本当なら数時間で学園に着くはずなのに、いろんな事が有りすぎて結局。はあ。
ため息が自然と漏れ、固く閉ざされた門が全てを物語っていた。
「受付、終了してる」
そうとしか言えなかった。閉ざされた門の向こうにある建物からの光源が無く沈黙していた。
ため息を漏らしながらこれからの事を考えて帰ろうとすると、端末が鳴り響き慌てて画面を見るとそこには目的の場所までの順路が表示されていた。
現在地と異なる場所からのルートを示していて、選択の余地は無かった。
正直、半信半疑だった。一縷の望みを抱きながら順路を辿れば、どう見てもそこには越える事の出来ない高い壁しか無く、騙されたという考えが頭を過ったときに壁の反対側から呼び掛ける声がした。
そうして、壁の一部が迫りだし、左右に開くとそこには、何処かで見たような女性がいた。暗くてよくは見えなかった。
「今から東西館へ行っても間に合わないからコレを使って」
差し出された手には小さなカードが在ってそこには何かが書かれていて一番下には丸い枠が有った。
「君のサインを此処に書いてくれる。それで手続きは終わりよ。心配しないでこれは中央に繋がっていているから」
そう言われても、書くものなんて持っていない。そう言おうとしたら、逆の手からペンを差し出された。
受け取って急いで書いて一安心していると今度は別の方から声をかけられた。
振り向くと背格好を見て多分、男性なのだろうと予測したけど暗い場所にいるせいで誰かは分からず身構えていると懐から何かを差し出してきた。暗くて見えづらかったけどそれは一枚のチケットだった。
これを使って帰れと言いたいらしい。
凄い疲れていたので有り難く貰っておいた。
それからどうしたのか。
貰ったチケットを使って最短距離を選んだはずなのに何故か外周区間通路に入ってしまいまた、紆余曲折を経て帰りついたのが結局、入学式当日の深夜だった。