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Heart of 6 〜黒と試練〜  作者: 十ノ口八幸
終章
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終章〜試練とはなんだろう〜第1話

起きるとか眠るとかは光魔には関係なかった。

この数日の途切れた記憶とかを何とか整理しようと勤めたが、それは徒労に終わり、自分の部屋に寝そべっていた。

途切れた記憶のせいもあり気分が晴れない。

腹の底と胸の奥に沸き上がる感情が押さえられそうになかった。

周囲に聞いても自分が風邪で体調を崩して一月休んでいた事に成っていた。

更に終わりかけていた課題も又、増えていた。

視線を腕で隠し深いそれは深い溜め息を吐いて、山のように積まれた課題を持って外出の準備を始める。


外の空気は微かに寒く。安定してはいないが時期的にはまだましな方だった。

手入れをして雑草が生え放題だった玄関口を含めて全てを刈り取り、ゴミを庭の隅に置いたままにしている。亀裂の入っていた壁もどうにか修理して見栄えも良くなっている。

まあ、そんな事は関係ないのだが、少し着込んでゲートへと向かう。


ゲートに着くと何人かの人々が声を荒げていた。

随分と前に見た光景と似ているが、その内容は違っていた。

それでも光魔は思う。

そう言った類いの抗議は役所が違う。と。

そんな事を思いながらも口に出さず。ゲート近くの施設に入っていく。


中は多少の混み具合はあれどそんなに待たず、整理券を持っていると職員が呼んでくれる。

窓口に行き簡単な手続きをして通行券を貰い、外に出ようとすると奥の方から呼び止められてしまい。時間を取られてしまった。

無下に断れず諦めて窓口の奥へと足を運ぶ。


飲み物を出され、腰掛けるように促され座る。

「いやあ。すみませんね。毎度慌ただしくて。」

「いえ、そんな。僕は気にしてませんよ。」

「そうですか。それは良かった。」

「で、僕に何か聞きたいことでも」

「おや。直球だね。近況とか聞いてからにしようと思ってたけどね」

「そんな前降りは要りませんよ。で、何が聞きたいんですか」

飲み物を一気に飲み干す。

「いえね、ほら少し前にあったでしょ。あの世界に公表された」

「ああ。あの禁止された何かの実験とか、ですか」

「そう、それ。何でも秘密裏に処理する手筈だったのが、死人は出なかったけど重傷者がかなり出てね。現場指揮をした偉いさんが更迭とか減俸とかで大分揉めたらしくて。」

「へえ。それはまた。どうでも良いことを聞かせるんですね。回りくどいのは無しにしてください」

「そうかい。なら聞くけどね。あの公開された映像には、て、君は知っているのかい」

「ええ、あれだけ連日放送していたら誰でも知っていますよ」

「そうだよね。何せあれだけの大事だし。それでもあれの根本的な目論見が未だに解らないのも不気味だし。」

「なんて言いましたっけ。その名前」

「『狂喜の教団事件』だよ。」

「そうでした。」

空の器を見ながら物思いに耽る光魔。

その事件は三週間程前の事。それは唐突にしかし、前触れもなく事件の翌日に政府から発表があった。

それは、非人道的な行いをしていた。そしてその中には不明者も含まれていたのだが、その変わりように縁者の中には、発狂する人。卒倒し現実から逃げる人。泣き叫ぶ人。笑っている人等々、幾つもの混乱が何日か続いた。

当たり前のように政府に治るかの質問はあったが、その回答は無慈悲なものだった。

「あの発表も何か急いているような感じはしましたね。」

「そ、うですね。確かに何かに追われるような感じはありました。」

「それで。君はあの場に居たのかい。」

「唐突に戻すんですか。さっきの意趣返しですか。まあ、そうですねそれは、居なかったと思います。」

「思います。とは、またザックリとした回答を。」

「うん。僕もその辺りの事はどうしてか朧気で、何かが有ったとは思うけど。でどうしてそんな事を。何か根拠が」

「ああ、その。そうですね。やはり見てもらった方が早いのかなあ。」

席を立つと個室へと案内される。


自動で扉が開くと室内の灯りが点く。

「それでは中へ。直ぐに用意しますから。あ、飲み物は適当にどうぞ」

色々な種類の飲み物がテーブルの上に用意されていた。

仕方なく自分で適当に飲み物を注ぎ、目についた近い席に座る。


「さて、待たせたね。今から視てもらう映像は件の映像だよ。加工は一切してないと先に述べておくよ。」

「ふ~ん。そうなの」

「ええ。これは言っておいた方が説明しやすいかなと。では視てもらおうかな。」

器械を操作して映像を映し出す。


その映像はあの事件と云うか、実際は強制軍事介入時の内部映像。

最初の方では武装した何処かの部隊が侵入し何かの工作を行う様子が収められていた。

少し退屈な映像が続くと画面が揺れ部隊が慌ただしくなる。

各所に配されている映像が複数の画面に切り替わり、同時間の映像となる。

その1つの画面には外に続くと思われるエリアに複数の隊員が一人の人間に武器を使用し、撃ち続けている。

「この映像は発表のあった部隊の1つということです。」

普通なら全身に穴が空くほどの銃弾を浴びても不思議でない状況なのに、その体に触れる遥か前に床に散らばる弾丸。

「これは力の1つとの見解で一致しています。ですが、この力がどの系統であるかは議論が分かれています。」

「な、何かいきなり泣き出したけど、あ、笑ってる。」

「この時、この者は説教をした後に、口で説明するより見てもらった方が」

映像に集中する。


その仰々しくも怒りが込み上げる仕草を見ながら、続きを見てみると。

その姿が消えたように見えた。

光魔の目には容赦ない物理的な力の行使が行われている映像が見えていた。

で、悲鳴と血飛沫と骨が折れる音が殆ど同じように画面に撮られていた。

最後には動かない隊員と笑い泣きながらゲートの向こうへと姿を消していく。

最後に残るのは、無惨で慈悲の無い動かない屍のような人の赤いであろう絨毯。

「と、この映像を解析したのがこれなんだけど。解析して初めて認識できる。速すぎて見えないの。」

疑問符が光魔の頭に浮かんだ。

口にはなぜか出さなかったが。

「それで、その解析した映像がこれですか。」

そう言って見せられたのはやはり光魔が見た映像だった。

「すごいですね。あの瞬間に全員の腕と足の骨を折り、さらにどう使ったのか知りませんが、十人以上を切り裂いています。そうですね。そしてこの階の映像はこれで途切れてしまいました。」

たしかに言った通りに映像が意識が切れるように黒くなる。

「そして次の映像がこの地下の映像で。」

その映像は何かの区画なのか。扉が両側に所狭しと付けられた長い廊下。その廊下を数人の隊員が警戒しながら歩いている。

「これは調べたところ随分と深い位置にある階層だってさ。これも暫く続くよ。」

本当に続いていた。が、等間隔で何かを設置している。

「これは、何をしているんですか。」

真っ当な疑問だろう。

「ああ。これは作戦本部に映像を送るための装置だよ。でも、この映像は秘匿されていてね、それだけに上も批判の的になっていて」

「秘匿とはまた大袈裟というのか大仰というか。秘匿する理由が見当たらないからですか。それとも見せられない画でも映っていたのですか。」

「それは何ともいえないね。情報が優先度特殊の守秘になっていて誰も手が出せないのさ」

無理に聞いても得られる情報は無いだろうと知り、それ以上は聞かなかった。

映像は続いていく。

長い廊下を注意しつつ進んでいく。

そして、変化が唐突に訪れた。

班の前に上から何かが落とされ、動きを止める。

落とされたのはあの映像を送るための装置の1つ。そのあと変なしゃべり方をする声が響いてくる。

何処かにいや、本部に連絡を取る隊員。フル装備で顔は分からないが判断を仰ごうとしていたのだろうかフルフェイスに内臓されていた通信機で繋げるも一人が凶刃に倒され、武器を使用する間もなく、あの地上の映像と同じかそれ以上に悲惨な光景となっていった。

「この先の映像はかなりキツイ映像になるけど、どうする。」

何を言っているのだろうかこの人はという顔を向けると。何かを納得して停めていた映像を再生させる。

その映像は悍ましく、衝撃的な光景だった。

それは一人は足先から裂け、筋肉が捻れ切れる者。腕が意志と関係なく自分に向き、武器で頭を撃ち抜く者。腰に仕込んでいたナイフで腕を切り落とす者。相手に殴り掛かり、最後は壁に全身を何度も打ち付けてそのまま動かなくなった者。そうして何人もの隊員が自傷行為などを行い、床に倒れていった。

そして、最後に残った者は何とか逃げようとその場から走り、それでも何処から現れたのかその背にのし掛かり防具など無きが如く全身を殴り続けて、動かなくなっても殴り続けて、最後には笑いながら体から離れると少し戻ってから其々の通信機を全て踏み壊した。

そして、何事も無かったかのように廊下の奥へと姿を消していった。

後に残されたのは無惨な隊員達であった。

「と、これがこの階の映像だよ。本当に容赦ないね」

「で、まだ続きが」

「あるよ。まあ、時間は少し飛ぶけどね」

画面の左上に標された時刻はまだ太陽が昇るかどうかの時間を示していた。

「で、次の映像がこれなんだけどね」

そういうと、再び建物の外を映している。

静かに何かのオブジェのように様々な機材が太陽の光に照され地面に長く大きな陰を幾つも作り出していた。

また、長く変化の無い、映像が続くのかと思っていると直後に画面の奥、聞くと橋が駆けられている部分辺りから砂煙を巻き上げ近づいてくる1つの陰が見えてくる。

「これは、なんですか。」

「情報では最新型の武装車輌みたいだね。詳しいことは知らないけどさ」

そうですか。と、呟くと画面に注視する。

近づいてくる車輌は機材の間を走り抜け、そして玄関前へと停車する。

「実はさっきも言ったけどね。映像には一切手を加えていないよ。絶対にだ。」

其ほど強調するには理由がある。それは直ぐに分かった。

車輌のドアが左右同時に(ひら)くと二つの影が飛び出していた。

そしてその後、車輌に何かの細工をしていたのか、それとも誰かが乗っていたのかそのまま近くの機材に高速で突っ込み爆発炎上した。

しかし、問題は其処ではなかった。

何故なら言っている事が本当ならば可笑しいのだ。

二つの影の1つはあの部隊とは違う服と装備をしているがちゃんと細部まで映像に映っているのだ。

それに対してもう1つの方には全体が黒を基調とした数色の重く淀んだ、まるでその部分だけが世界から隔絶したように画面に映し出されている存在。

「本当に何もしていない。これは確かだよ」

その言葉が耳に届かなくなっていた。

吸い込まれるように画面に映し出される映像に集中していたのだ。


その映像から見える光景は、一言で表現するなら正に『地獄』と云うのが当て嵌まるものだった。

この映像の前に映し出された光景が何かの罰を与える。そんな使命感が視てとれた。

だが、今視ている光景にはそのような感情とか一切無く、そこにあるのは絶対的な絶望と屈辱的なまでの蹂躙だった。


正面一階から入ったであろう存在は流れるように建物内へと進入していく。

あの陰惨な光景を目の当たりにしていても、ーそれは画面からだがーその状況は酷く非情で非道なものだった。

入るや否や入口近くに立っていた警備を迷いもなく行動不能に至らしめ、それを口火のようにその階は時間も掛けずに制圧してしまった。

「この存在が何かは解析を急いでいる所。それでも言えるのは、この存在には人、違うかな、それ以前に生物としての感情が無い。感応者に言わせれば獣人の方が遥かに分かりやすい。だって。」

その言葉は適切だろうと納得した。

映像からはゲートを潜る先に居る人に対しても、情け容赦なく動けないようにしていったのだ。それも相手が小さな子供を盾にしても女性や既に負傷している者達で有っても関係なく潰していった。

涙を流し悲鳴を挙げ逃げ惑うとしても追いかけ追い付き、そして床に沈めていった。

それは本当に殺人兵器と行っても過言ではない。そんな光景だった。

「1ついいですか。」

「どうぞ。」

「これはを見る限り死人、出てますよね」

「そう、思うでしょう。でも、ここまでして実質、死人は出ていない。重傷者は膨大にいるけどね。」

納得する気は無く考えてしまう。それはどうしてか自分にも判らず、考えを頭の隅に一時的に置いておく。

「それじゃあこの人達は今は」

「この施設の人達は特別な場所で取り調べを受けていると聞いてる。軍の人達は、ほら前半にいた部隊の人達なんだけど。あの人達は突入前に調合された強化薬を接種して大事には至らなかったんだけど。ほらこの映像を視て」

云われて画面を視ると、隊員の着ている服や装備が異なっていた。

「そういえば、違いますね」

「そうだね。言ったようにこの重装備の隊員はこの日のために選ばれ、特殊な訓練と知識を持った強襲部隊。対して、此方の隊員が装備する物の部隊は世界府庁直轄部隊。それも精鋭と噂されて、『不動の何か』と呼ばれている。その一部の部隊らしい。それがこのように」

画面には同じように挑み、そして同じように無力化され床に沈められていく映像が流されている。

「この圧倒的な力は力有る者ではないかと一部では囁かれているけどそれは推測の域に」

「え、でもこの人達は実際にその眼で見ていたんですよね。なら、この人達に聞けば」

「それはもうやっているよ。でもね全員口を嗣ぐんでしまったのさ。正確には上からの」

「どんな世界でも縦社会は有るんですね」

「結局調査は打ち切り、これに関する資料全てが」

「特秘されたんですね。」

「アッタリー。そんなんだよねぇ。だから各種報道から、色々な事が、ね。」

「ああ。それは判りましたけど、最初の質問で僕がこの場に居たという理由は」

「それね、ある伝を使って入手した情報では少年。表面上風邪で一月休んでいたんだって。でも本当は数日間行方が分からなかった。そう聞いているよ」

「そうらしいですね。実は僕もその辺の事は何か頭の記憶に鍵を懸けたように全く思い出せないんです。」

「そうかい。それは残念だね。本当はもっと深く聞きたかったんだけど、その様子じゃ無理みたいだね。諦めるかな。」

「それだけで僕を呼び止めたんですか」

「うん。そうだよ。それ以外あるかい。少年には余り近づくなと云われているからね」

「ああ。例の判定が決まったんでしたか。まあ、それは良いんですけど、聞いていいですか」

「何をだい。」

「気になっていたんですけどね。さっきから」

「気になる。何をかな」

「どうしてこんな所にそれも、当たり前のように働いているのかなと」

「あ。聞いてないのかい。それはね。急な人事異動だよ。」

「人事異動て何でこんな中途半端な」

「簡単さ。」

「あの発表の影響ですか。それとも上の方での揉め事の煽り」

「どちらかと言うと後者かな」

「大変ですね」

「ん。そうでもないよ。知ってるでしよ私の力は」

「あれ、でも、それは海の領域のみで」

「え、違うよ。あれはそのままの意味でね文字通りの全領域さ」

「そうなんですか。はあぁ。で、何でこんなゲート管理の役所にいるんですか。」

「人事異動。だけじゃ少年は納得しないだろうね。」

「あ、言えないなら別に」

「いやね。ほらあの不思議な団体がいたでしょ」

「不思議な団体て」

「ほらあの、聞いた話じゃ進行を実際に進めていた人がいたじゃん。あの人に何か昔から知っていたような」

「あ、先生達ですか。」

「先生。ああ、そうか少年の」

「ええ。管理人をしている寮の住人ですよ」

「そう、先生なのか。そか。」

「で、それと関係が」

「あ、うん。あの人達の一人の助言でね。一時的に此処の仕事を紹介してもらったんだよ。」

「ふうん。そうですか。でも、この先の事は」

「心配無用。今決めたから」

その光魔を見る目には何かを決めた強い意志が見えたからそれ以上は聞かないことにした。

「で、続いているこれは何時まで」

「あ、ごめん。切ったほうが」

「構わないですけど。どれだけあるんですか。」

「編集とか一切してないからね。このまま見ていたら後半日は」

「そうなんですか。でも全部じゃないにしても、大体完全無双状態で全滅させていくんでしょ」

「そうだよ。うん。この存在が何かは分析結果待ちだけど。大変なことにはなるかな。あ、そうだ。最後だけ見ていくかい」

それは最後に重要な事が映っていると察して頷く。

機器を操作して早回しをする。

「随分と古い機種ですね。」

「そうなんだよ。これしか合うやつが無くてね手間がかかるけど外部からの妨害は先ず出来ないからその点は安心できるね」

言いながら早回しされる映像は確かに酷く悍ましいことこの上ない。常人なら視ているだけで発狂してしまうだろう。

だが、異なる常に身を置かざるを得ない光魔にはそれは児戯にしか感じられなかった。

最も、それは無自覚にであり意識してはいないのだが。


「と、この辺りかな」

早回しをすること長く、目的の映像直前で早回しを停める。

その場面は何処かの一室だろうか。

人が二人。俯瞰視点で映っている。

何かを話ているのだろうか、音声は拾えていないが手前の人物が何かの質問をして、奥の人物が答えている。その様に見える。

「この映像が何か。二人の人物が話をしている。それだけの事ですよね」

「そうだよ。でもねこの手前の人物は調査中だけど。この奥の人物は」

「大物、ですか。」

「そうだよ。それもある組織の生き残りさ。」

「へえ。そんな人が何でこの場所に」

「それは知らないけどね。まあ、視ててよ続きを」


二人の会話の内容は分からなかったが、それでも大物と呼ばれる人物は余裕で相手をしている。何かこの場から脱出する方法が有るのだろうか。

「そうだね。この人物を逃がしたのは痛いけどね」

「て、結局逃げられたんですか」

「いんや。正確には逃げられたんじゃなく。まあ、視ていなよ。その意味が分かるから」

映像に映る二人。

余裕で話をしている大物はしかし、ある時を境に表情と態度が一変する。

少し経つと手前に黒い霧のような物が現れた途端に明らかな狼狽え、後退り、驚愕の表情をしていた。

そして、その黒い霧のような物が大物に重なると映像が消えてしまった。

「これで終わりだよ。どうやらあの黒い何かはあの大物に取っての天敵みたいな存在じゃないかと上の方は睨んでいるみたいだね」

「ふうん。それでこの大物とか云われている人の行方は、分からない。そんなとこですか」

「そうだよ。そして少年。君に対して上から依頼が有るんだけどね。どうする。言っておくけど今の映像とは別件だよ。捜索は別の人達が担当しているからね。」

「なんでいきなり話の腰を折るように。まあ依頼。それは僕の探し物を条件にですか。」

「さあね。それは知らないけど。一応、少年の端末には送っておくから後で目を通すと良い。と時間を大分取らせたね。次に会った時には面白い話を聞きたいな。勿論、仕事抜きにしてね」

そう言いながら飲まずにいた飲み物を飲んで二人で部屋の外に出る。

出口まで見送るというので一緒に向かう。


外はもう日が陰り出していた。

「これから学園かい少年。すまないね予想以上に時間を取らせてしまって」

「別に構わないですけど、どうせ変わらない地獄が待っているだけですから」

その言葉には諦めが滲んでいた。

「それじゃあ近い内に」

「ええ。それでは次に会えるまで気を付けて下さいねレイファさん」

「ああ。」

そして光魔は渡された通行券を持ってゲートの向こう側へと姿を消していく。

「やれやれ少年。面倒事に巻き込まれるのが少年の運命ならそれに抗うのも1つの道だよ」

と、誰に聞かせるともなく一人呟き、手を鳴らして仕事に戻っていく。

日は陰を落とし闇を纏わせていく。

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