序章〜始め1〜 第2話
人生、どうにもならない事のほうが多い。
力の差。知識の差。金の差。立場の差。等々、考えるだけでも頭が痛い。
まあそんな話、今はどうでもいいけど。
ちゃんと確認しなかった僕が悪いのだけど、少しは警戒して紹介状を見てれば良かったと激しく後悔しています。
その上、抗議しようにも連絡手段がないからこの感情を発散できずにいました。
胸の奥から外に出ようと嫌な感情が少しずつ押し寄せてくるのを感じてそれを必死に抑え、無理矢理に蓋をした。
翌日。来て早々の騒動でこの島の地理が判らないから、探索目的で散歩しようかと考えて寮の外に早朝から出て身震い。
只今の気温は、4度。
寒い。やっぱり、この時、一度戻ってもう一枚来ていれば良かったと少し後悔する。
息を吐くと白く、その向こうには静寂に包まれた景色が広がっていた。手を擦りながら歩きはじめていると何処からか鼓膜を突き刺すような鳴き声が少しの間響き渡り、静寂すら騒がしく聞こえるような妙な静けさが覆い始めていました。
随分と歩いた。そのはずなのに、ここまで一人も見ない。それどころか時間的に見ても一人くらいはすれ違うはずだ。
でも、見ないとか以前に生物の気配が全くない。
そう考えながら先程の声が関係しているのだろうと簡単に納得させてふと、どれ位移動したのか手元の端末を操作する。
端末には周囲の詳細地図と現在位置、状況と近辺の情報が表示されていた。
一応として、この端末を便りに進んでみて、違和感のような所は見当たらず。正直なにかあるかと期待していたのに何も無く落胆した。
結果的には人と出会うまでに随分と時間が掛かり、端末の時間表示もかなり経過していた。
朝食の時間を大分過ぎてたから近くに店はないかと探していた。はずなのに。
何処をどう来てこんな所に来てしまったのか思い出せないけど、これだけは云える。
「道に迷った」
と。
何故、どうして、オウェイ。
心臓がもうね、危険とかのレベルを越えて思考がおかしな方向へいっていた。
とりあえず端末を確認。
でも、画面は何故か真っ黒だった。
精神に炎が灯って握り壊しそうになった。一部壊したけど、後で修理してもらいどうにかなったけど。
再度、端末の画面には許可範囲外と表示されているだけでほかの機能が全部つかえなかった。
途方に暮れて適当に歩いていると、何処からか矢が飛んできて、数えきれない程の矢が色々な物に突き刺さっていった。
慌てて何かの影に隠れて事なきを得たけど、現状は変わらず。仕方ないから何か越しに見るとそこには動物の耳と尾を付けた人や動物の目の模様をしたコンタクトを付けた人が、まるで動物が獲物を定めるように奇声を上げながら僕を囲んでいた。
何処から言っているのか、反響して居場所を特定できないけど、
「貴様、見たところ人間だな。何故この区画に来た。この区画は許可が無ければ入ることは出来ないはずだ。答えろ。」
えと、この時はたしか。
「答えないなら、違反者として処罰する」
状況が判らず、混乱していた。
「返答なしと判断。これより処理する」
全員。という声と一緒に周囲から異様な空気が漂い、行け。という声で土煙が巻き上がり、全ての空気が僕の方へ向けられてきた。
避ける暇もなく、直ぐに拘束され、袋叩きにされた。お陰で、骨折、数えきれず。打撲、同じく。擦過傷、数ヶ所。他等々。
それと最後に意識が飛んで、起きたら見慣れない場所にすごい格好で縛られていた。
恥ずかしいわ、ホント。
凄まじい匂いをさせている枝をくわえた人間が至るところで雑談に教じたり、別の所で寝ていたり、不思議な色をした何かを食べていたりと千差万別十人十色。
あ、まずい、即座に瞼を閉じた。
耳に入ってくる。
「で、アガトさんは何て」
「さあ、知らない。どうも、もっと上で拗れているらしいのは聞いたけど、よくは知らない。」
「しかし、何ですかね、コイツ。情報一覧には掲載されていないらしいとかどういうことすかね」
「知らん。これは、俺たちの預りを越えているからな。情報は上から降りるのを待つしかないだろう。それまで待て。」
「しかしですね」
「忘れたのか。あの時の事を」
どうやらその言葉の真意とかを考えていたのか、少しの間のあと、
「ああ、そうすね」
と、返答があって。別の話に移った。
他には本当に他愛のない雑談とか何故か食べ物の事だったりとかだった。
どれくらいだろうか。いきなり冷たい何かをかけられて瞼を開けてしまった。
正直このときはしまった。とか考えたなあ。でも、違った。
「照会してもお前を確認できなかった。それはつまり、好きにできるということだ。」
あはは。戦慄とか走馬灯とか、あと、死を考えたな。そう言えば。
「そんな、構えなくても、ただね。俺たちに飯を喰わしてくれたら解放してやらんでもない」
「えとぉ。は、はあ」
そう言えば、この時は本当、適当に調理したんだった。味付けも適当。ある味付けをどうにかして整えたんだ。それでも皆うまいと言って食べてくれた。正直にいうと嬉しかった。
なんか知らないけど、戦慄が走った。
「お前を殺す」
突如こんな事を言われて、その矛先が自分に向けられているのに気づかず、目の前の状況に理解が追いつかず四肢が硬直。頬に重い一発を貰って地に叩きつけられた。
考えて、思いあたる事柄もなく残った頬の熱と口内の鉄の味。
頭を上げようにも何かで押さえつけられていてできなかった。代わりに視線だけを動かしても、視界にはたかが知れていた。
「お前は何処の何かはどうでもよい。が、これだけは云える。それはつまり、此処で消えてもどうなっても我らには責められるはなく、此処での事は無かったとしてどうとでもなると言うことだ」
その後は高笑いを放って僕を思う存分それはもうボロ切れのように扱った。
気が済んだのか僕をその場に棄てて何処かへと消えていった。
全身。表も中もボロボロで死を覚悟するのかもしれない。普通ならこんな理不尽に怨みとかを涌き上がり、怒りを喚き散らすのだろうか。
なんか納得して普通に受け入れている自分がいても何故か何かを感じることもなくて、だから、この時はそのまま眠った。次に覚めたらどうなっているのかなんて判らないけど、それでも強烈に眠かった事だけは覚えていた。だから眠った。
どれだけ寝ていたのかは知る手段がないから仕様がないけどこれだけは言えた。状況は変わっていなかった。当たり前だ。
くしゃみをして体が震えて頭も呆けてきた。どうも死にかけているらしい。
「あ、ああ。めんどくさいな。誰も見つけてくれなかったのかな」
口から出たその言葉は誰に対して言ったのか、言葉は虚しさを増し、諦めてため息1つ。
幸いなのかそれともわざとなのかは知らないけど、動かせる腕で周囲を探ると端末は無事だった。だから、動かせるだけ動かして、端末を操作。もう、気力も尽きて瞼を閉じた。
今度こそ死んだかな。
欠伸を噛み殺して今は自室にいた。あれからどうやってここまで帰ってきたのかは後で聞いたところによると、どうやら寮の前で寝転がっていたらしい。それだけだった。
何故か皆さん詮索とかはせずに寝ていた僕をそのまま引きずって部屋に放り込んだとか。もう少し丁寧に扱ってもいいと思うけど、それは過ぎたことで今さらだし、追及しても終わったことだからそのままにしておいた。
正午近くになって、亀沙早さんが1つの情報端末を持ってきた。
「君に届けておくようにと渡されていたのを忘れていてね、すまない」
渡された端末には、
『今年度の入学式は4の月中程とします。つきましては、以下の期日までに返信をお願いいたします』
少し動かすと、
『25640401〜25640409当日正午迄』
と、表示してあって、最後に承認の枠があった。
「どうしたんだい。」
「今日は何日ですか」
「ああ、それを聞くのか。」
妙に渋るなと、じっと見ていると嫌な汗が一筋。
「今日は、九日だ。すまない」
的中した。
全身から冷たい汗が濁流のように流れ、心臓が激しく鼓動し、血流が加速、脳へ膨大な血が集まり、混乱する。
体を揺さぶられ、頬を数回叩かれ、我に返ると、
「気をたしかに持ちなさい、その事には本当にすまないと、しかしその続きを読みなさい。」
震える手をどうにか端末に添えて、画面をスライドさせると、
『なお、期日までに確認できなければ以下記載まで直接お越しくださいますよう願います。』
更に進めると、
『当該。桜学園敷地内東西館地下二階統合受付八番窓口。なお、期限は11の終日までとさせていただきます。これを過ぎましたら如何なる理由であろうとも一切の受付を致しませんのでお早めに手続きをお済ませください』
それ以上は進まなかった。
大急ぎで身支度を整えて、学園へと向かうことにした。
「ああ、もう。なんでこんなことになっているのかな」
誰とも知れない、別に返答を期待していなかった。ただ、この時の理不尽さに声を出してみたかったんだ。
「暑い」
この日の気温は、三十度近くになっていた。
「えと、学園までの道筋は」
教えてもらった道は簡単だとか言っていたけど、結局は幾つものいざこざに巻き込まれていった。
端末に入れてもらった情報には幾つかのゲートを通らないと行けないことになっていた。そして、
「初めのゲート。やっと着いた」
壁に填まった小さな門。この巨大な島を分断している高く聳え立つ長大な壁には、幾つかのゲートが設けられていて区画間を往来可能だとか資料で読んでいたけど、実際には許可が必要で自由に行くことはできない。
最初は自由にできたらしいけど、たった1つの出来事を切っ掛けにして今の制度が作られたと何処かで習いました。
ゲート対面の建物に入ると人で溢れかえっていました。
これもしかして全員。と、思いましたが違った。だって聞こえてくるのは、何処かの誰かが好き勝手に暴れて、区画の一部が使用不能。さらに、修復費用や借宿等々の手配。道路等の補修工事の発注。
全て言うと切りがないけど、とにかく何かがあって周辺住人がここに殺到したのだろう。と考えに至るけど、この建物はゲートの通関管理であってそれ以外は別の部署じゃないかなと疑問が湧いた。でも、それぞれの苦情を適切に処理していて、手際が良かったなあ。
さて、大幅な時間待たされ自分の番が来ました。そして、何故か首根っこを掴まれて受付の向こう側へ引きずり込まれ、表から見えない衝立の影にあった椅子に座らされ、飲み物を用意され暫く待たされたその後、良くわからないまま何処かに連れていかれ質問攻めに合った。
連れていかれた個室で数人に囲まれ、時間が経ち、精神を磨り減らされ思考するのが限界に達した時、一人が外から呼び出され何事かを話していると急に顔面蒼白になり、全身が震え目線を僕の方に少し向けた後、時間が穏やかに過ぎていくみたいに、まるで床が消え、足元から崩れていくようにそのまま倒れてしまった。そして、大慌てで数人がその人を担ぎ、何処かへと運ぶ様子を見ていると、入れ替わるように倒れた人と何かを話していた人が入ってきて、
「申し訳ない。此方の不備で貴方をこのような所に長時間拘留してしまい、本当に」
と、頭を下げられた。
「此方の情報を再確認したところ、貴方の事に関して上の方から降りてきまして、大分言われました。この事で非は、此方にあり」
「え、あの今一状況が判断できないですけど、つまりは、このまま門を通っても良いってことですよね。」
「は、はい。そうですけど。あの」
「それなら早く通してください。」
「それでは、我々には」
「何を言いたいのか判りませんけど貴殿方の事は僕には関係ありませんから。」
「そ、そうですか」
すごい安堵の表情をしていたのが凄く印象に残った。
「じゃ、もう良いんですね」
はい。と答え諸々の手続きを済ましてもらい、僕は数時間ぶりに解放され、目的のゲートの反対側へと行くことができた。
出発する前に、あることを言って次に向かった。
一息吐きながら硬い座席に座り、体を預けて窓の外を見る。
遥か先に見える高い壁。囲いのように、何者をも通さないように築き上げられた壁には、様々な形状のゲートが設置され固く閉ざされていた。
持っていた飲み物を一口含み視線を中に向け、荷物を手探りで手繰り寄せて端末を取り出す。
表示された項目を確認していたら、自動物販機が来て商品を購入。それを黙々と食べ、お腹を満たした。
満腹感で意識が呆けていき、自然と眠りに入った。
そんなに深く眠っていたわけじゃなかった。夢の中で進行する内容とは別に何処からか雑音が混ざっていた。
雑音を1つの背景として夢の物語は進行していく。
ある場面で意識が現実に戻り、視界には充満した煙と壊れた内部。荷物や備品が無惨に散乱していた。
辺りには力なく横たわる人、鳴き声や悲鳴、嗚咽に苦悶。そこは、混沌としていた。
当前ですが、眠っていたので何故この惨状になっていたのか。まずは、知る必要があり、行動を起こす。その前に自分の体の異常が無いかを確認すると小さな傷が数ヶ所あり、それ以上視認できる範囲で見当たらず安堵し、次に位置を把握するため窓の外を確認しようと見て驚き、窓にはまるで塗り潰されたかのように赤くその反対側が見えず、他の窓を確認するため軽く腰を上げたら近くの壁に金属音が鳴り、何処かに当たる音がしてそちらを見ると
それは、モノ言わない肉塊でした。首をかしげ視線を戻すとそこには大きな機銃を背負い銃口を僕に向けた一人の小柄な陰が見えた。
断線したケーブルが火花と火の粉を撒き散らしてた。轟音で言葉は聞き取れなくてそれでも、直ぐに理解した。
ああ、なんだ。占拠されたのか。と。
座席の影に身を潜めて端末を確認すると、時刻がそんなに進んでいなかった。また、耳に声が入ってきた。
相変わらず何を言っているのか分からなかったけど考えられることは1つ。
恐怖。
良く聞き取れないから相手に近づいてみた。
「う、嘘だ。た、たたたたしかに確認した。血の気は失せて、脈もなかった。そ、そそそれなのに。どうして生きている。」
ほうぅ。と思った。だから、持っていた武器を奪って思いっきり殴り倒し、四肢の間接を外して窓の外めがけて放り投げたが、ガラスを破ることなく、触れたら呑まれていった。
後に残ったのは、数えきれない肉塊とただ立ち尽くす僕と散乱した内部。
いきなり何処からか爆音が複数響き僕の体を突き抜けた。
こんなことで混乱しても時間が無駄に消費されるだけなので取り敢えず、出口に向かった。
壊れているから自動で開くことはなく、思いっきり横に引いてみて開かず、仕方なく、本当に仕方なく。思いっっきり蹴り外した。そうしたらその向こうには予想していたようなことはなく代わりに、赤黒い空間が広がっていた。
僕は、足を少し下げて身を引きながら適当な物を拾って赤黒い空間に投げてみると。そこに地面、もしくは床のようなものがあれば乾いた音がするはず、が一考に鳴る気配がなく、このまま出ていたら無限に落ち続けていたと思い背筋がゾッとしたのを覚えている。だからってこのままいても無駄だろうと考え、その場に有ったモノを手当たり次第赤黒い空間にぶち込んでみた。
鈍い音、弾ける音、砕ける音、切れる音。色々な音がするかなと考えていたけれども結局、何の音も響かず赤黒い空間に呑み込まれていった。
このまま飛び出して、いつ着くかわからない空間よりと思い、中に戻った。そしたら足を掴まれ振りほどこうとしてもあまりの強さにできず、諦めてそちらを見れば酷く怯えた少年みたいな人がいた。
「た、た・・」
あまりの事に精神が壊れたのか、それとも。
俊巡の後、少年を見て僕は、掴まれている腕を叩き潰し、思いっきり殴って気絶させた。
少年以外に誰かいないか中を探してボロボロの座席と壁の隙間に一人の生存者を見つけた。
確認すると流血しているけど危険な状態じゃない事に少し安心して、応急措置をして気付けをして起こした。
「う、うあ。ここは」
「良かった。大丈夫ですか。失礼ですがこの状況を聞きたいのですが、良いですか」
小さく頷いてくれた。
「近場の駅から乗って、暫くしたらいきなり前の方で爆発があって、かはっ。ごめん。それと同時に数人の客が懐から何かを取り出して、凄い光が出てその影響で・・・」
気力が切れたのか気絶してしまった。それと同時に体が徐々に薄れていって、完全に消えた後、其処には肉塊が現れた。
この時、これで一つの謎が解けた。なんでこんな状況で肉塊が辺りに置いてあったのかと。
まあ、それは置いといて、これで少しだけど状況は掴めた。
ようは、僕が寝ている間に、事件的な事に巻き込まれてしまったと。そうして更に何かがあってこの状況に至ると。そういう事になる。
でも、此処から出る方法は判らずじまい。それならば暫く此処で動かずにいたらどうなるのか、試しても良いけど、これは結果的にめんどくさい事になりました。
結論から云うと、不意に重症を負い、どうにか事を終わらせ、そのまま意識が飛ぶ。
そして、気がつくと普通に座席に座っていた。外を見ると空の一部が暗くなっていた。
あれは夢だったのか今ではもう解らない、それでも夢じゃないとどうしてか確信していた。
一つは異様に生々しかった事を肉体的に覚えていて、凄い疲労感があり腹が凄い音を出していたから。二つ目は他の乗客も僕と同じ表情をしていたから。
そして、恥ずかしい思いをしながら揺られること数分、次のゲートに着く。
ゲート横にあった建物に入ると時間的な事もあってか人は疎らで閑散としていたと思います。受付に近づくと全てが固く閉ざされていて手前の方にデジタル掲示板に本日の受付は終了しました。と表示が流れて落胆しました。
項垂れて出ようと顔を上げたら何かが見えて、掲示板を暫く見ていたら続きが表示されてた。
『なお、お急ぎの方はカウンター備え付け端末でお呼びください。』
カウンター端末は何処にと考えながら見回すと受付の端に見たこともない機械があった。
近づいてみるとそれは、一本の捻れた紐に繋がった黒光りする機械でした。真ん中には幾つもの穴が開いた黒く丸い板が嵌め込まれていてその回りには模様が書かれていた。
何これ。と、疑問を湧かせながら端末と表示されていたのでとりあえずどうにかしようと機械に触れようとしたら大音量で鳴り響き、驚いてすぐに外に出て、何だったのかと一息吐きながら静かに扉を開けるとあの音がまだ鳴っていた。
どうやら音の発信源はあの不可解な形の機械から出ているようで
気絶しそうな音が響く室内を耳を塞ぎながら進んでいたけど、傍までいくと塞いでいてもその大きさは耳を突き、破れるかもしれないと考え、我慢して近くを見回せば機械の横に一枚の板が置いてありそこには、『鳴り響く頂に横たわる物を取れ』と書いてあった。
この状況でその答えに行き着かなかったらその人は相当に残念な思考。
その板に従って、僕は、頂に横たわる物を取り同時にあのけたたましい音が止み、何処から誰かの声が聴こえた。
その声はどうやら僕の持っている物から聴こえてくるようで其を耳に当てると声が聴こえて、そして・・・・・。
「つ、疲れ、た」
自然とその言葉が口から出て肩をガックリと落としながら振り返ると、ゲートが閉ざされていくところだった。太陽光が目に刺激を与え、寝不足の頭を無理やり起こして次へ。
何故かあの不可解な機械で話していると、突然足下の床が光り、気がついたらそこはありとあらゆる機械部品がギッシリ埋め込まれた機械の下。
右往左往していると後ろから声をかけられ、振り向くと制服をきた一人の若い人がいて説明をしてくれた。
それは、説明が下手なのか、それとも僕の理解力が足りないのかその人の説明は難しく、説明が終わり考え、要約するとゲート通過の手続きをしてくれるという事だった。
でも、ここからが凄く長くて促された椅子に座っていると混乱した声や音とかが耳に入り。心配になって見れば、予想通り、違うか。
それ以上に悲惨な光景が目に入ってきた。
この人もしたかして不幸体質。と頭に浮かんがそれを振り払い、助けてあげて少し手伝ってみた。
「助かりました。あと、ごめんなさい。ミスで機械が壊れてしまって。あと少ししたら代えの部品が届くからそれまで休んでいて」
言い終わると突然何かの音がなり、その人は慌てて何処かに急いで何事かをしていると突然、悲鳴に近い驚きの声をあげ肩を落としながら戻って来ました。そして、二度目の謝罪を言った後こう言った。
「発送ミスで交換部品が紛失して新しい部品は最低でも1ヶ月は掛かると言われまして、それで」
「それはつまり、此処を通れないと」
否定され、
「一応は、緊急のために手動で動くことは出来ますが、その、」
「簡単じゃあ、ないと」
これも否定、続けて「ゲート両側の装置を動かせば出来ますが、何分古く、最後に動かしたのは百年近くも昔で、どうなっているのか見当がつきません」
少しよろめきました。実際は座っているので意識が飛びかけただけなんだけど。
「あの、あと、どれだけ昇れば良いんですか」
『えと、ごめんなさい。自分が行ければ良かったのですけど。足を痛めてしまって』
「別に構いませんけど。どうして昇降機まで使えなくなっているのですか」
ここで、言い訳みたいな事を言われるだろうと気づいたので、「あと、なぜ他の人がいないのですか」
最もで的確な質問だった。
でも無言だった。この理由は後で知りました。
応答を待っても返答は無かった。
こんな所で割く時間はないのでとりあえず進むことに。
どれだけ昇ったのか解らないけど、そこには幾つもの壊れた箱や何かの部品が乱雑に積まれていて。正直、汗と埃で服は汚れ、疲れも限界に達していたので目に入った時には軽く心が折れました。
どうにか折れた心を奮い立たせて積まれた物を脇に置いていくと
終わった頃には体力など残っていなかったのでそのまま倒れて寝てしまった。
埃で噎せた勢いで目覚めると眠る前と何ら変わらず僕の目の前には古い扉がそこに鎮座していた。
戻った体力は少しだけだけど幾らかはましなので僕はその扉を目一杯の力で開けてみたら以外とすんなり開き、その中には床に固定された半楕円形に長い棒が刺さっていてそれ以外の物は在りません。ええ、それはもう綺麗なほどに。
あの人に連絡をとるために耳につけていたインカムのスイッチを押してみたけど反応がなく、仕方なく目の前の物を調べてみました。
どうも、これが目的の手動で動く物らしく試しに動かしてみたのですが固すぎて動かすことができなくて、頭を抱えて絶叫していると。
「よ、良かった。」
いきなりの声に体がビクついて、振り向くとそこには一人の陰がありました。
「ここまで何とか出来ましたか。お礼を言います」
「うあ、何で此処に」
「あの、君だけに起動装置を動かしてもらうのは忍びないので自分も何か出来ないかなと考えて、あのこれを」
手に持っていたのはフックのついた太い紐とそれに繋がった装置。これはという質問に、
「此処から向こうの装置まで時間が掛かりますからコレを使って向こうまで行けると思います。」
正直、迷う時間はなかったから即決して使うことにした。
あの半楕円形のものはやっぱり起動装置だったらしく、二人で頑張って動かしました。その後部屋の外に出てあのフックの装置を使って反対側に行くとやっばり中には同じような物があって、そちらは簡単に動かすことが出来た。
破裂音と頬に走った痛みでよろめき、状況が呑み込めず混乱していると。少しの笑いと二度目の破裂音と何処かに当たった音。
「ふむ。やはり、飛び物は慣れないな。」
何かを言った気がします。
「これでも我慢したのだがもう無理だ。でも何とかこの鬱陶しい物を動かして同士を呼び込める。感謝するよ少年」
その言葉で状況が瞬時に呑み込めた。口から出たのは「反団体ですか」だった。
その言葉に相手が軽い反応を示し、その隙に相手の首もとを掴んで思いっきり投げ飛ばし、中へ繋がるだろう扉を引き開けてそのまま逃げ。
体力が少し戻っていたとはいえ流石に限界が近く、足が縺れて、そのまま一番下まで転げ落ちていき、最下まで落ちきったとき不思議と痛みはなく全身打撲と擦り傷だけで済んだ。
もう、この時は無我夢中で逃げて、あの最初の部屋に飛び込み、奥の物陰にに逃げ込んで息を殺し震えながら隠れていると、扉を開ける音がして足音が室内に反響していました。
「あーららどこにい、グフア」
大きな音と相手の言葉が中断して少し顔を出して見たら、相手が大きな何かの下敷きになってどうやら気絶しているようだった。
恐る恐る近づいていると声をかけられ、見れば其処には職員さんが疲れはてた様子でへたりこんでいました。
「よ、よかった。どうにか無事で」
それだけ言うと、手を床に着いて息を整えていました。
聞いてみると、実は僕がくる前にあの気絶した人が侵入して職員さんを拘束、成り済まして装置を起動させようとしたら破損していて動かせず手動で動かそうとしても時間が掛かり、思案している所に僕が入ってきて、誘導させて装置を起動させて、あの状況に至りこの状態で現在。
それでもどうにか目的を果たして、ゲートが開けられるようにはなりました。助け起こして開閉ボタンを押してもらい僕はゲートに向かいました。
綺麗な服に涼しい風が心地よく、優しく頬を撫でてくれていました。出る前に貰った包みを開ければ色々な具を挟んだサンドイッチ。それを頬張りながら歩いていると、簡素な駅に着きました。
思い立って端末を見てみると表示されていた場所からルートが示されて僕は。
僕は走っていました。逃げているのですが。振り向くと、鋭い目付きと犬歯。四対の足と側面から伸びる長い腕。ヨダレを振り撒きながら集団で追いかけてきている怪物。
距離はあるのにその鼻息が凄まじく響き、それは充分に恐怖を刻み付けていました。
お腹は満たされていたけれど、どうにも眠気は振り払えず、一定の周期で襲ってくる。
ここで転倒でもしたらあっという間に僕は餌になってしまうのだろう。考えたら身震いがして頭から振り払い、ひたすら逃げ続けた。
何かを感じ取っていたのだろうか。距離を詰めるでもなく、一定の距離を保ちながら僕を追いかけていた。
この事に気づいたのは随分と経ってからで。
どれだけの時間を逃げ続けているのか正直どうでも良かったけどこの時、限界が近くて、このまま全てを投げ出してしまおうと思っていたはずなので。
だから、もう、人目のつかないような所に逃げ込んで、そのままうつ伏せに倒れて、意識が飛んだ気がして、だから。
寒気がして、起き上がり体を調べると何ともなく、首を傾けてから捻ると、表現の仕様のない光景がありました。
とりあえず、あれこれ聞かれても面倒なのでその場を離れる事にした。
案の定、遠方で色々な音が僕の方まで届いていました。
ふと、端末を取り出して確認すると、後二つで目的のエリアに着くようで正直に嬉しかったです。
端末を頼りに進んでいくとゲートの一部が見えてきて。安堵と不安が混ざった心境で傍まで軽く走っていきました。
不安が的中しました。
今度はゲートの前に人の壁ができていて、その向こう側に大きく古風な看板が建っていました。
遠くて読めないので端末の望遠機能を使って看板を確認して書かれていることに驚きました。
『これまでのご利用有難うございます。しかしながら、先の事件を鑑みまして、此方のゲートを含めたゲートを数機運転停止いたします。つきましては、区画間の往来手続きは下記に記載の臨時施設にて承っております。』
つまりは、ゲートが使えないと。
ここまで来て最悪の事態。此処だけならまだしも、ほかの所まで停止とか。
この時ほど衝撃が僕の心を粉砕した事はなかった。近くの壁にもたれ掛かり、ゲートを見た。だからって、どうにか成るとかはなかったけど、たしか、この時は。
端末を手に教えられた順路を辿り、ついた先には一人の番人らしき人陰が見えました。
その人に教えてもらった物を端末に表示させて見せると何処かへと案内されました。勿論、別の人と交代してからですけど。
案内された場所は錆びた鉄で建てられた小屋でした。促されるまま中に入ると、古い珍しい木製の椅子が一つあり、どうやら座れと云う事らしいのでとりあえず座ることに。
何も起きなかった。深いため息を吐くといきなり、足を固定され、床と一緒に空高く跳ばされてしまった。
空の頂点に達したとき当然、落下。そのまま地面に叩きつけられるのかと思ったけど不思議と痛みがなく、顔を上げるとそこは地面ではなく、柔らかな物に包まれていました。
「おう、大丈夫かい、兄ちゃん。まあ、見たところ大したことはないな。それじゃとっとと退いてくんな。撤収するからよ」
退きたくても、と言う前にいつの間にか足枷が外れていたので直ぐに立ち上がり、軽くふらつきながらその場を後に。
現在地確認のため端末を見ると、ゲートの反対側に来ていた。少し乱暴な気もしたけど、でも何とか通過することができたので良しとして、最後のゲートに向かった。
茫然自失。正にそれを体現している人達がいました。僕もその中の一人になっています。
目の前には、無残に破壊されたゲートがありました。頑強が幸いしてかはたまた災いしてか、最後で一番最悪な状況に遇ってしまったのです。
ゲートに着いてすぐに建物に入り、手続きを済ませ、後は順番を待つだけとなり、手持ちぶさたになったので周辺を散策しようと外に出ると、複数の爆発の後、壁の一部が崩壊して瓦礫の山を幾つか作り、ゲートへ向けて何かが撃ち込まれました。でも完全破壊は免れたけどゲートの形が歪になり、開閉が出来なくなった。
不意に何処からともなく声が響き渡り、そちらに視線をほぼ向けました。
向けた先には数人の人影が壁の対岸の建物が見て取れたとか。そして、長々と口上を述べて群衆に向かって放った一発はあろうことかどうにか保っていたゲートに止めを注してしまいました。
暗く澱んだ場所に僕はいた。注意深く細心を払って進んでいるところで、壁に貼りつくように少しずつ足を前に出し、壁の途切れから顔を出して、その先には人陰の集団が歩いていた。
そういえばなぜ僕がこのような場所にいるのか、それは。
あの爆発の時、僕の位置から何かを擦る音が聞こえたので音のした方に行ってみると何も無かったんだけと、近づいてよくよく見ると地面の一部が微妙にずれていた。なのでそこをどうにか動かすと地面の下に鉄の扉が現れて。
慌てていたのかそれともする必要が無かったのか 今では分からないけどとりあえず扉を開けて中に侵入して集団の後ろまで来てみた。
距離を取っていたので細かい事は知りようもなく。でもこれだけは言える。
『ああ。この人達はあの時の人と同じ人種だろうな』
スッッッッゴク長く深い息を吐きながらじっと見て姿が消えてから端末で時間を確認すると時間が迫っていた。
もう一度息を吐く、そして意を決して・・・。
ふう。と一息入れて端末で1通のメールを送ってから地上に続くであろう梯子を昇り簡単な操作をして扉を開け、脱出しました。
どれだけの距離を移動したのか。何で手続きにこんなに時間が掛かるのか。
はあ。正直、疲れました。
でも、それも、これで終わります。だって、やっと着きましたから目的の桜学園に。