二章~夜の声、夢の導き~第三話
目を覚ますと少年は目を泳がせている。
ああ、病院か。と思い至って体を動かしてみる。
まあ、当然のように動かせはしないのだか、直ぐに諦めて瞼を閉じる。
結局、助かったのか。と意識が沈んで行く前に呟いた。
どれくらい寝ていたのか検討も付かないが今は夜だと云う事だけは理解できた。
しかし、それ以外に現状を知る術は無く、どうせ動かせないのだからと頭を空にして天井を見続けてみた。
これと云って、変化を期待していなかったが、少年は微かな何かに気が付いた。
個室の中には自分の息づかいしかないはずで、それでも全身が騒ついている。
どうしてか汗が止まらない。
強く目を瞑る。
なのに、不思議と心が落ち着いている。
時間の経過と共に何処からか音が聞こえてくる。
それが何処から聞こえているのか、小さすぎて解らない。
それでも遠い場所から聞こえているのは理解した。
集中するように聞き続けていると次第に強力な睡魔が襲い、抗う間もなく意識を飛ばす。
痛い。次に目覚めた切っ掛けはその思考だった。全体がぼやけている。
仕方なく目を瞑りまた、意識を手離した。
どれだけ眠っていたのだろうか。
次に目覚めると全身を覆っていた物は無くなり、自由に動かせるように。
肉体の虚脱感があり、上体を起こすことは諦めた。
不意に、窓が開いていたのだろう。一筋の風が少年の髪を優しく揺らした。
その心地よさに少年の頬を涙が零れ伝い布団に幾つかの染みをつくる。
それから院内での複数の不運が重なり、気力を入れず。誰とも関わらずに過ごすことにした。
そして、心が抜けるように身体に力を入れず怠惰に過ごしていく。
年の暮れに退院し、寮に戻っても自室に籠り、外部の音を全て遮断し、そして、そのまま年が明けてしまった。
この間にずっと続いている音は、徐々に少年の意識を磨り減らしていく。