二章~夜の声、夢の導き~第一話
強襲するためのこの部隊は通称も正式も名前は無く、編成も時代によって変わり、その内容は作戦終了と共に全て破棄されてしまう。
知るものはその当事者のみ。
しかし、それを知ろうとする者は何故か皆無だった。
事態に気づくには遅すぎた。
この時の主任務は陰からの護衛であり、少数での展開を行っていた。しかし、その小さな穴から綻びが生じ、次第に大きな穴へと変貌していった。
その時には全てが手遅れで、手の施しようが無かった。
だから、全てを放棄して、部隊生還を最優先にして、撤退した。
帰還して、周囲からの風は当然のように強く、それは見えない形で悲劇を幾つも起こしていった。
自身に関する情報の漏洩。信頼していた親友の裏切り。血縁者も次々と不幸な目に会っていった。
それは、世界の底を体現した様相だった。
逃げ出したかった。
逃げて楽に成りたかった。
だが、何かがそれを赦さず行き着いた先にはもう、全てが剥ぎ落とされて残ったのは空っぼの動かない肉塊が闇の中でズットずっと、時を忘れるほどに佇んでいた。
肉塊の奥底に残っていた微かな存在は差し伸べられた光を掴んで世界から消え失せていった。
それは、微笑みと共に。