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Heart of 6 〜黒と試練〜  作者: 十ノ口八幸
一章
18/47

一章~????~

何度も感じる浮遊感とその後の乱雑な扱い。

僕の体は意識を戻してからどう云うわけか動かせないでいた。

波が船体を叩く音以外は何も聞こえなかった。


軽い恐怖を覚えた。


静かな足取りだろうか、床を擦る音が少しした。


唐突に動力音が響き、船が動いた。


今まで、多分感じた事が無いような重くのし掛かって来るような空気を感じていた。


このままでは何もできそうに無かったから、僕は動かずに眠ることにした、はずだ。たぶん。



声はするけど解らない。意識は有するのに、そこには存在しているとは思えなかった。

違った。思わなかった。

意識は遠くから聞こえる声に寄せられる。まるで、光に群がる羽虫のように。

男か女か若いか老いか。加工されたような声が身体を持たない自分を捕食するために呼び寄せているような。

しかし、怯えというのは無かった。

聞こえる聞こえる聞こえてくる。その声の主は何を言っているのか。

答えは解らない。

近づく近づく近づいていく。

声が少しずつハッキリと確実に耳に聞こえてくる。

そして、

『おマえのがらだ・ヨごヱ』



重い空気が僕の体にのし掛かった。

目覚めた其処は後で判ったことだけど何処かの病院だった。

いつもと違い、拘束されてるわけではなくベッドから起きて閉められていた布を開けると窓の外には絶景が広がっていた。

窓は嵌め殺しされていて開けることは出来なかったけどその景色に気分が晴れていった。

息を一つ吐き、景色を暫く眺めているとドアが開く音がして、僕はいきなり床に押さえつけられて、何処かへと連れていかれてしまった。

抵抗する気も失せていて、と云うよりもまず、何回こんな事をされているのか、流石に慣れてしまって成り行きのままに任せていた。


連れてこられたのは、独房だった。

そこで、こう言われた。

「暫くは此処に居てもらう。事が整えば直ぐに出ることができる、あまり気負わずに待っていてもらいたい」

と、まあ、これだけ言って、出ていった。

呑み込んで、精査して、理解する頃には何日か経っていた。

「待たせたな。出ろ」

扉を開けて、一歩だけ出るとシンと静まっていて、その直前まで騒いでいた声や音が止んでいた。

「妙に静かですね、今日は」

「あ、ああ、まあ、な」

歯切れが悪いなと思いつつも僕は後に付いていき、その道すがらで布と耳栓を渡された。

視線を合わせ、差し出された2つの品を見て、黙って受け取って目を覆い、耳に詮をして腕を捕まれて、服の裾を掴むようにと指示され、その状態で何処かへと連れられた。


目が見えず、耳を塞いでいるせいなのか異様に空気が重くて、床と足が縫い付けられているのではなかろうかと考えるほどにその一歩が重かった。

不意に耳栓を取られ、耳許で椅子があるから其処に座れと言われて、素直にしたがった。

当然だけど目が見えないので椅子に座るまで幾らかの時間が掛かった事は・・・言わなくても言いかな。

それで、どうにか椅子に座って、打ち付けたところを擦りながら待つことにした。

それと、不思議なことに、何故か違和感があった。


じっとしていると忠告をされながら目隠しを外されて、開けても良い、と言う言葉に瞼を開ければ其処は。

擂り鉢状の空間に隙間なく周囲を、人の壁に囲まれ僕はその中央に座っていた。

規制線のための柵はあったけど、意味をなしていなかった気がする。


僕を視るそれは、奇異、殺意、好奇、侮蔑、畏怖、屈辱、嫉妬等々あらゆる感情が向けられていた。

生きているはずなのに、微動せず目が見開かれている。その瞳には確かに生きている感じはしたけど、その視線は僕から外れることは無かった。

その状態に違和感の理由を考え付いた。

それは、強力な見えない拘束に縛られていたことに行き着くしかなかった。

それ以外の理由が思い付かなかったのもあったけど。


一際高い前方には席があって、少ししてから、

「これより、議会を始める。議長以下入会」

席の脇にある扉が軽く開くと若い人を先頭に数人が入ってきた。

静寂に包まれたこの空間に乾いた足音と小さな息づかいが鳴り響く。

衣擦れの音に椅子の音。腰を下ろして再び椅子が鳴る。全体を見渡して、深呼吸を一回。

「それでは、改めて、これより議会、臨時裁定会を開始する」

もう混乱していた。


「まず始めに、主文。これより入場する者たちは世界機関令違反を起こし、厳正なる審議の後に処罰とする。」

響き渡る突如の音。開く扉、金属同士が()つかる音。乾いた重い足音。

座っていた僕の前に大勢が立たされた。

「それでは、始めはこの組みからか。書記官」

「ええ、では、報告を。この者たちは4月の頭から数日の間に事前通知が配布されていたにも関わらず彼に危害を加え、数日もの間監禁したという報告が複数あります」

それから、詳細な分単位で報告された。


「以上が各部門における報告になります。この内容に異論がある方は挙手で発言をお願いします」

二人が挙手した。

「では私から発言させていただきます。先ず、この者に対する発令は当該の島に入ってからであり、私たちは職務を全うしただけであり、私たちは除外されて然るべきではないかと」

「確かに書類ではそうですが、しかし、各部門には更に記述されています。『以下の者に対しては審査不問にして厳重な対処と島までの渡航期間内は絶対に保守するように名は、州環光魔。』と記されています。これは、どう考えても」

「待ちなさい。そんなもの書かれてなかったと記憶しているが」

「貴殿方に配布されたデータを全て見せていたただいた処、最後に記されていましたよ。失礼ですが、最後までお読みになられたのですか」

そうやって、大きな画面に映し出された映像には誰かの画像が映され、そこには確かに、一番最後に僕に関しての記述があった。

「言っておきますがこれは、つい先程貴殿方に渡されたその場で確認したときの映像ですから細工はしていません。」

それを裏付けるように画面が動いて、僕の前にいる人達を映し出した。

「さて、これで、貴殿方の言い分に対する事には納得していただいたと思いますが。他に反論は有りますか。無ければ控え室で待機を」

一組目が退出すると間を置かずに入ってきた。

「では、次に当該の島内での事案ですが。此方は剰りに多いので幾つかに分けて行います。」

僕の前に連れてこられた人達は見たこともある人もいれば、知らない人もいた。

「彼らは明らかに島内で危害を加えており、その様子は監視映像にもハッキリと映っていました。これは逃れ様のないことです」

再び大きな画面に映し出されたものはえらく懐かしさを感じる映像だった。

歩いていた人影に周囲を囲むように高速で移動する複数の影。

それらの中から一筋の攻撃。それは逸れたけど大仰な格好で人影と話すと腕を挙げて、合図と共に襲いかかり暴行を加えていき最後には動かなくなった人影を何処かへと連れていった。

「大変惨たらしい場面ではありますが。此方は特務区画の映像です。その中で歩いていた者に、このようなことをしでかした者達が此方にいる者達です。」

指された人達は震える体をして、

「お、お願いだ。お、俺達は知らなかったんだ。本当だ。上も確認したから確かだ。俺達はこい、この人がそんな重要な存在だとは知らず。」

「だからと、見逃せと。はあ、それは無理なことですよ。諦めなさい。では、同じく控え室で待機を」

引っ張られながらも更に抗議する人達を見ながら強制退室させて他の残った人達に移った。

「では、少し騒がしかったですが。続けましょうか」

一回睨みながら、

「あなた方は勿論、知っていたはずですね。知っていて彼を負傷させ、更にその場に放置した。全く、悪逆非道、言語道断。庇う気も失せますね」

「し、知らない。私たちはそんなもの」

三度目の画面には三つの影が廃墟の屋上で喋っている様子が映され、そこから一人が何かを見つけて、その場に向かい、そして、一言発してから見つけた人影に問答無用で危害を加えていった。

一通り終えると、動かなくなった人影を放置してその場を後にした。

残った人影は動く気配が無かった。

「これを見て、まだ反論出来ますか」

歯軋りと苦悶の声を出し項垂れた。

「では、控え室で待機していて下さい」

項垂れながら出ていった

「次、入りなさい。」

三組目は前の二組と違って多かった。

「別に君達には彼に対する危害の報告は成されていませんがそれ以外で彼の手を煩わせた事は島内警備に対しての疑問を払拭するために来ていただいた。」

それは、僕が学園へと向かう道中の映像だった。

幾つか省かれていたけれどゲート周辺でのイザコザが長時間映されていた。

「このゲート襲撃関連では彼のお陰で未然に大惨事を免れましたが、問題はこうも容易く入っていると云うことが問題であり、今回だけでは終わりとは行かないでしょう。」

どうしてか反論せずそのまま黙っていた。

「これに関しては綿密に協議せざるを得ないので別に設けて結論を出しましょう」

手を後ろにして静に出ていった。

「次、入りなさい。」

四組目。胸を張ながら堂々と入ってきた。

「御島主、アナタには複数の罪状が科されています。島内の出来事には我々は干渉しない事に成っていますが。本件に関しては別になります。そして、後ろのお前たちも同罪だと知りなさい」

ああ、見たような気がすると、この時思っていたら、あの良くは解らない行事に関係していた人達かと、ちょっとしてから気が付いた。

「御島主、アナタは知っていましたね。正直にお答えください」

「正直に言えば、僕は、全く知らされていなかった。知ったのもこの者とあの島を出てから初めて知らされた。僕に落ち度は無いとは言えないけれど、何処かで潰された可能性を指摘したい」

「それで、それを証明する事は出来ないでしょう。」

「たしかに、そうだけど、誰かが握りつぶしたとしか考えられないのは」

「はあ、そうやって時間を延ばすだけ延ばして、どうにか突破口を見つけようとしているのでしょうか。それは無理ですよ。」

「で、でも、」

「解りました、それを踏まえて審議しましょう。退出して控え室へ。」

複数の足音を響かせながら反論も余りせず、出ていった。

「それでは、五組目ですね」

小さく何かを呟いた。

五組目が入ると剰りの臭気と楽しげな雰囲気を出しながら僕の前に座った。

その一人が振り向いて、

「やあ、暫く振りだね」

「黙りなさい。発言は赦されていませんよ」

「くく、偉くなったねえ。」

「そうね。あの頃に比べれば立派に成ったものだし」

「まあ、進めたのはあたしらだけどね」

「心外です。今回は関係ないですよ自分」

「まあまあ、連帯責任ですよ。そもそも、あれは、と今は言っても意味はないですね」

「黙れと」

「ああ、黙りますよ。ね、皆さん」

本当に黙ってしまった。

「相変わらず、腹立たしい人達だ。」

頭を抱えて深く息を吐いた。

「あなた方には彼に対する大きな罪が報告されています。逃れられると思わないで下さい。」

「・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・、・・・・、・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・」

「あなた方は人の神経を逆撫でするのが、本当に好きですね」

疲労しているように机に手を置き、額を押さえて、

「あなた方に対する処罰は追っ手報告します。本日はもう、帰って下さい。」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・」

「・」

「・・・・・・・」

「・・・・・、・・・・・・・、・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ぐ。い、い、か、ら。早く、出ていけえええぇ」

机を叩き、退室を命じた。

皆さんは意気揚々と軽やかに出ていきました。

「はあ、失礼しました。柄にもなく取り乱しまして。ふう。では最後の組になりますか」

最後の組は、あの人達だった。

「では、皆様が呼ばれた理由は理解しておられますね。」

「はは。俺がこんな所に出る日がくるたあな。人生、何が起こるか予想できねいから面白い」

「ふう、まさかこんな事態になるなんて、やはり、断れば良かった」

「仕事上、内容は喋れないんだけど」

「きひきひきひきひ、ひひひひひひひ。」

「良くもまあ、これだけの者たちを相手に平気で居られたものですね」

「で、我らに対するその、罪とは、何なのかな」

「そうだな、俺は、このボウズに危害は加えてないし」

「私は一応、加えたのですかな」

「何もしていないのに、連れてこられるのも心外だけとね」

「ききききききききき。」

「まあ、お二方には無いのですが、問題は後の二人ですね。それに対する正確な報告と依頼した者たちの詳細な報告の再確認ですかね。手元の資料には詳細な報告があります。それを元に依頼した者たちを拘束して更なる調査をするつもりです」

「そうかい、なら話は早い方が良いよな、なあ」

頷く。

そして、これも長時間問答して、終わる頃には船長が胡座(あぐら)を掻いていた。

「報告は以上になります。ありがとう御座いました。それでは控え室で待機していて下さい。お疲れさまでした」

眠っていたり、挙動不審だったり、端末を弄っていたりと、真剣に答えていた人は船長位だったけど、それを咎めもせずに退室させていた。

「以上を持って審議会を」

「はい、待って」

「何ですか」

「まだ、他にもいるでしょう。」

「ほう、例えば」

「ほらあの最後の組の人達の前に僕を襲った集団とかさ」

「あれについては、もう、終わっています。気にする必要はありません」

「え、でもどうなったのか気になるし」

「そんなに知りたいですか」

僕の目を反らすことなく見つめてきた。

「それは、知りたいですよ。あの人達はちゃんと回収されたのかなとか後始末はどうなっているのかなとか」

「それに関しては問題なく終了しています。あの者達の後ろに付いていた者もそれに連なる所も全て完了していると報告されています。勿論我々も現地に行き、その目で確認していますから間違いは無いでしょう」

「あ、そうですか」

「それだけですか」

「あ、はい、ありがとうございます」

「別に君に礼を言われる筋合いはない。」

「それも、そうですね」

腕が僅かに動いた気がしたけど。

「それでは、これを持って臨時裁定会を閉会します」

そして、僕は促されて退室した。


出ると船長以下四人に先生達が待っていた。

「どうだい少年。」

「どうだい、と言われても僕には解りませんけど。」

「そうねぇ。こんなややこしい事に巻き込まれているなんて予想が外れたねぇ」

「きひは。コイツに取ってそんなものは些細なこと。それよりも我らの処遇が気になりますがね」

「そうだな。これからどうなるのか。下手をすればもう終わる可能性も」

「それは此方も困るんだけど」

「どうでも良いけど。早く帰りたい」

「ん。どうしたんだい。州環くん、何を」

「あの、このいきなり始められた事は何時まで続くんですか」

「うん。そうだね。一月かもっとかな。正直なところ、我々にも予測できないな。」

どうしてなのかを訪ねると、

「何せ君に対するあの令状を無視した形になりますからね。それも大勢がです。まあ、例外は有りましたけど。それでも、相当な時間を掛けるでしょうね」

「そう、です、か。解りました。それじゃ帰りますか」

僕はそのまま寮に帰るつもりだったのだけど、出口で呼び止められ、ある個室へと案内され。これから終わるまで此処で寝泊まりしてほしいと。

もうね、疲れましたよ。

だから直ぐに行動しました。


その翌日、指定された時間より前に、僕はある人に会うためその部屋を訪れた。




























一章~臨時裁定会~終

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