一章~死にたいと言うのは心理的にはどんなモノ~第5話
精神と肉体が限界に近くなった時に終着地。コウグテンライと後に云われる建造途中の街の入口に着いた。
さっそく、一人が何処かへと飛び出していって、まあ、あの人なんだけど。
僕らは取り敢えず標的を探すことにした。
「どうなっている。まるで気配がない。」
「それどころか、人が生活していた痕跡すら在りませんね。」
そうそこは、建設中の人造島、教えられた島のはずなのに人、どころか、生物の気配がなかった。
音という音全てがしなくて生物の痕跡を感じさせなかった。
皆が戦慄している時に彼は何をしていたのか。後に聞いた話をすれば簡単なことだった。
実はあの街には入らず島の外周を転々としていたらしく、僕達が見つけたのは資材などを搬入して一時的に保管するための倉庫の一画だった。
でも、在ったのは大きな荷物一つだけで其処も生活の気配は無かった。
落胆した。もう手懸かりがなかったから。
誰が荒げたのかはもう忘れたけどそこから少し記憶が飛んでしまい気づくと皆さんが膝を折り、上体を地面と水平にして手を床について頭を付けていた。
そして、
「本当に、すみませんでした」と
僕に謝罪してきた。
困惑する僕を他所に皆さんが続けた。
「調子に乗ってました。これ以上はふざけたりしません」
見れば、四人の衣服とかが破れていたり、掠り傷が複数あったりと、また、僕の知らない間に何かがあったんだろう。
謝罪を早々に受け入れて、時間と現状を聞くと大分時間が経っていた。それでも手懸かり、ではなく本人を発見したと言う。
慌てて支度を整えてから見つけた場所まで連れていって貰った。
そこは僕達が乗り付けた港の正反対の崖を模した絶壁の中腹の穴。
崖の上から道があって、そこから穴へと行くともぬけの空で、肩を落としかけた時に僕達のいる位置の更に下から声が聞こえて覗き込むと人影が見えた。
僕は躊躇なく崖を飛び降りて影に突進した。
突発的な事に対して難なく対処した影は僕に向かって何かをするでもなく、と言って反撃するでもなく只々その場に立ち続けていた。
無言で僕を見ていて、その次に僕が飛び降りた所を仰ぎ見て、そして、納得言ったのか、それとも呆れたのかは知らないけど少しだけ、本当に微々たる動作で後ろに下がった。
「どうしてこんな所にいるのかは甚だ疑問を禁じ得ないけど。今は取り敢えず立ち話も、だから付いてきて」
その場を仕切るように僕の前を歩き出そうとして、そして僕はその襟元を掴んで引き戻して、尻餅着いて僕に視線を向ける前にその頭頂部に一撃を入れた。
頭上から騒めきが聞こえたけどそんなものは僕には関係なく、間を置かずにその頭を鷲掴みして、屈んで視線を合わせた。
「あのね。こんな所にきたのは君を連れ帰ってこいと僕に頼まれてね。それで君の事を探して此処まで来たんですよ。ふあ、疲れが、眠い」
四人が合流して穴に向かわず僕達は彼に付いて行き、着いたのは海が一望できる雨ざらしの島の淵だった。
「こんな簡素な物で暫く、その」
「はい、住んでいました。」
「それにしてもこんな所で何をしていたのかは、数日も開けて」
「くひは。こんなガキがどうしたのか知らないが、殺していいですか」
「唐突な発言は控えた方がいいよ。あの島の主様だから」
卑屈いた。
「で、貴殿方は僕に何か用ですか。其処の彼の目的は連れて帰るとか言っていましたけど」
咳払いを一つ、
「ああ、私は上陸するつもりは無かったのですか。この者達の監視の意味もあって付いてきただけでして」
「自分も同じだよ。本当は警告した後に仕事に戻るつもりだったんだけどね、どうしてか此処まで来ちゃった」
「ふむ、私は依頼をされたので来たのですが、途中で阻まれまして、勝ち目がなさそうなのでそのまま大人しく同行させてもらっているだけです」
「きひきひきひきひ、きひひひひひひひひひひひひひひひ。おれあ大金を積まれたからねえ、どこぞの主を殺せば使い尽くせない金額が入ると云われてなあ、来たんだけど。まさかこんな少年とはなあ」
「はあ、大分切羽詰まっているみたいだね。心配しないようにと頼んでおいたのに上手く伝わらなかったのかな」
「それはどうでもいいんで、早く帰ろうか」
話の腰を折るように切った。
「帰っても良いけど一つ確かめたいことが有るんだけどね。それが終わったらで」
血が沸騰しそうだった。
「そんなに時間は掛からないと思う。」
「それが終われば」
「うん、帰るよ」
「はあ。なら早く済ませて帰ろうよ」
「解った。じゃあ。君、僕と本気で闘ってくれないか。それで僕の気は晴れるだろうし」
「ああ、解ったよ。やれば、は」
何を言っとるのだろうと正直に思ったね。この時は。
何か罵詈雑言を浴びせたと思うけど。結局は喚いても時間の無駄だし素直に承諾した。
場所はあの湖の畔。時間も朝早くからにした。
その後は島の暗さに気づいて簡素な建物でご飯を食べてそのまま眠りに着いた。
長い1日がやっと終わろうとしていた。