エレジー
貴方と会うのはいつもその橋の上だった。
「俺、とうとう父さんの跡を継ぐことになったよ。」
彼はある日静かにそう告げた。
「継承式は何時なの?」
「…明日。」
「そっか…おめでとう。」
それはとても誇らしいこと。
だってあなたが認められた証しだから。
これは貴方が一番幸せになれる道だ。でも心の中で素直にそれを喜べない私がいる。
「ありがとう。
…あのさ、君を困らせるだけかも知れないけど、伝えたいことがあるんだ。」
「何?」
私が尋ねると、彼は俯いて口をキュッと結んだ。
そしてその後、意を決したように口を開いた。
「君のこと好きだったよ。」
「…っ!!」
その言葉はすごく嬉しかった。
だって私も彼と同じ気持ちだったから。
でもそれと同時にとても哀しかった。
だって私たちは決して結ばれないー…
此処は天界と地界を繋ぐ橋。
唯一天界の者と地界の者が入ることができる場所。
あなたは神の息子で、私は魔王の娘。
だから私たちが逢えるのはこの橋の上だけ。
けれど、もうそれも終わる。
彼が父親の跡を継承することは天界を統べるものとなるということ。
即ち神になることだ。
そして、私もいずれはお母様の跡を継ぎ、地界を統べる魔王となる。
そんな私たちが結ばれれば、世界の摂理は崩れ、壊れてしまう。
私たちが結ばれる代償はあまりにも大きすぎた。
「…私もあなたのことが好きだったよ。」
でも、それは過去となる。
短い恋はもう終わりを告げた。
「さようなら、だね。」
「うん。」
私がそう告げると、彼は悲しそうに目を伏せた。
解っていたことだ。
この恋は実らない、すぐに終わってしまうと。
「君と過ごせた時間は決して忘れない。たとえ父の跡を継いだとしても。」
「うん。」
「さようなら」
「さようなら」
私も忘れないわ。
彼は私に背を向け、自分の行くべき場所への道を辿った。
次に会うときはもう私たちは敵同士だ。
せめて最後に、この声を彼に届けて…
去っていく彼を見送りながら私は旋律を紡いだ。
それはとても哀しい唄。
fin
こんにちは
このたびはエレジーをご覧いただきありがとうございます。
この小説は昔突発的に描いた小説を少し修正したものです。
驚きの短さで申し訳あ有ません。
固有名詞すら出ていないという。
エレジーは天界・地界のお話を書きたく書きました。
天使と悪魔ならぬ神の子と魔王の子。
結ばれるはずのない二人です。
小説の中には掲載していないですが、この二つの世界には因縁があり、戦争を何度もしています。
そのためこの二人は次に会うときはそれぞれの軍の長として、戦うことになるのです。その部分のお話は皆様の心の中で。
それではここまで読んでくださってありがとうございました!
また逢う日まで!
2015.11.8 結海




