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知ってること、できること

「そりゃあまあ・・・こうなるよな」

 ここは春日山城にある一室。

 そこには景綱さんをはじめ数人の長尾家の重臣と思われる方々が集まっていた。

 そして俺はこの前の評定では下座に座っていたが、今回は上座、しかも景虎の隣に座らされている。

「御大将、いくらなんでもこんな話が通るとでも?」

「ええそうよ。だって私がもう決めたんだもの」

 それだけで何でも決まるわけがない。

 そもそも何の話をしているかというと・・・景虎と俺の祝言についてだ。

 家臣の方々からしたらどこの馬の骨ともわからない昨日今日やってきた男が急に御大将の夫になるかもしれないのだ、もちろん反対するし景虎が決めたからといって話が決まるわけがない。

「刺しますよ」

 あれー、景綱さんは武闘派じゃないと思ってたのに何かものすごく物騒なこと言ってる。

「へー、景綱が私を殺せるの?」

 景虎は余裕綽々だ。

 きっとそれほどまでにに景虎と景綱さんの実力に差があるのだろう。

「まさか、御大将に危害を加えるわけがないじゃないですか」

 やっぱりそうなのか~。それじゃ刺すのって・・・。

「刺すのはお隣の婿殿ですよ」

 ですよね~、わかってますよ、わかってますとも。

 でも実際にはやらないでね? 俺動けないから、物理的に拘束されてるから!

 実は春日山城に着いてすぐに景虎は主だった者にすぐ来るようにとの通達を出した、その後そのまま評定の間に入って嫌がる俺を景虎の隣に座らせて両足の親指を縛っている。

 この状態で俺が景綱さんの攻撃をかわせることはないだろう。

「ならやってみる?」

 おい景虎、何を言い出してるんだ。

「やらせてくれるんですか?」

「私を倒してからね」

 ・・・仕方がないと分かっていはいるが・・・・・女の子に守られるというのは複雑だ。

「・・・御大将、こんな我儘を続けていたら私たち家臣はもちろん、民衆の心も離れて行ってしまいますよ」

「ならどうして貴久を私の傍に置くことを認めたの」

「そばに置いておいたら私が楽になると思いまして」

 え、景綱さん本当にそれが目的だったの?

「ならいいじゃない、実際に昨日一日は楽だったでしょ?」

「それはもう、昨日は屋敷からここまで走ってくるだけで他の時間は全部私個人の仕事を片づけるのに使えましたから」

 すごい幸せそうに言ってるよ景綱さん。

「ですが、祝言まで行くと話は別です」

「いいじゃない、私がうつけだと思われるくらいしか害はないでしょ」

「『しか』じゃありません。そこが重要なんです。

 御大将がうつけだと思われると困るんです。北条や武田に舐められるんですよ? 尾張の織田みたいに言われるんですよ?」

 あ、そういえば尾張の織田、主人公は何してるんだろう? 今度景虎に頼んで調べてもらおう。

「それこそ願ったり叶ったりじゃない、そうやって世の雀の歌に騙されて舐めてかかってきてくれるなら、それこそ100戦100勝も夢じゃないわ」

 わお、史実の信長と似たようなこと考えってるよ。

「民衆のことはどうするおつもりですか?」

「そこは頼れる婿殿の出番よ」

「え、俺?」

 突然指名されてしまった。

「婿殿は何ができるというのですか?」

「ん~、たぶん越後をより住みやすい国にしてくれたり、楽して稼げる方法を教えてくれるわよ」

「・・・本当なんですか」

 景綱さんが景虎に驚いたふうに聞いてくる。

「できるわよね?」

 景虎が俺に聞いてくる。

「ん~~~」

 正直迷う。

 歴史には修正力があるとか、過去をいじったから未来が大変なことになるとかいろいろ気になることは多い・・・あ、でも俺が生きているうちに未来がどうこうっていうことはないよな、それに歴史に修正力があるかどうか実験してみたくなってきた。理系の発想だ。

 変わるとしてもそれは本の歴史だし、存分に変えてみよう。

「貴久、できるの? できないの?」

「実際にできるかどうかは分からないが案を出すことならできる」

「たとえば?」

 何を言ったらいいだろうか、案を出しても結果が出るのに何年もかかってしまっては検証できない。割とすぐに結果が出て越後が住みよくなるかお金が手に入る方法・・・あれかな?

「景虎、ちょっと聞きたいんだけど」

「何よ?」

「こっちよって」

 他の人に聞こえないように少しだけ近寄ってもらって小声であることを確認する。

「そんなこと、簡単に言えると思ってるの?」

「そこを何とか、最初の一文字だけでいいから」

「・・・な」

 よし決まった、『な』なら大丈夫だ、俺の考えている地名は『さ』だからな。

 やっぱり大きな声では言えないことなので俺も小さな声で返す

「景虎、たぶん佐渡に行けば金がざくざくと出てくる」

 この時代の越後は鳴海にある金山が主な金の採掘源だ、佐渡の金に手を付けるのは上杉景勝の時代に入ってからだから、今から採掘を始めて佐渡の金を手に入れれば越後は恐ろしいほどの金を手に入れることができるはずだ。

「・・・それって本当なの?」

「たぶん出るはず」

 景虎は腕を組んでしばらく考え込む。

「御大将、どうかなされましたか」

「景綱、ひとまず貴久の言ったことを確かめるわ。後で詳しく話すからすぐに確かめなさい」

「分かりました」

「悪いけど、今日の評定はこれで終わりよ。

 祝言の話は次の評定で決めるわ」

 景虎が祝言の話を後回しにして評定を終わらせた。

 やっぱり俺はかなーりすごいことを言ってしまたらしい。

 景虎が祝言の話をやめたからか、気迫に押されたのか、集まっていた人たちはさっさと出て行ってしまった。


「それで御大将、確かめたいこととは」

 みんなが出ていき今評定の間に残っているのは景虎と景綱さんと俺だけになった。

「今すぐ佐渡に行ってきてほしいの」

「佐渡ですか、それはまたどうして」

「貴久の話だとそこに金が眠っているそうよ」

 景綱さんの顔が険しくなる。

「それが本当なら確かにとんでもないことですが・・・」

「だから、早く行って確かめてきなさい」

「分かりました、では10日後までには報告いたします」

 そういうと景綱さんはすぐに出て行った。

「こういうことは教えない方がいいものなのかな」

「どうしてそう思うの」

 俺のつぶやきを景虎が拾う。

「景虎だから言うけど、佐渡の金山で本格的に金の採掘がはじまるのはもう少し後なんだ。具体的に言うと景虎の跡継ぎの時代かな。

 俺は先のことを少しだけ知ってる、だから今佐渡のことを教えた。でもこうやって先のことを俺が前倒しにやっていくと少し困ったことになる。たとえば史実で本当に改革とかをやるはずだった人たちが埋もれていってしまうかもしれない」

 そう、たとえば俺はこの先に直江兼続が行う改革のことを調べたことがあるから結構詳しく知っている。もし、今からその改革を行えばもっと越後を繁栄させることができるだろう。しかしそのせいで景勝の忠臣である直江兼続が歴史の表舞台に出てこないなんてことが起こったら、先々のことを考えると結果的には史実通りに事を運んだ方がよかった、て事になりかねない。

「そんなこと、別に考えなくてもいいんじゃないの?」

 景虎が俺の懸念を一蹴した。

「いやよくないだろ」

「いいのよ、その程度で埋もれるような人材ならいらないわ」

 そんなことないだろ、もしかしたら人生でそのたった一回しか無かったかもしれない好機を俺が潰すかもしれないってことだぞ? 信長が桶狭間で義元の首をとる好機を俺のせいで潰していたらどうなるのか考えてみろ、そんなことが起きるかもしれないってことだぞ? わかるか?・・・あ、まだ桶狭間の戦いは起こっていないか。

「まあ、景虎がそういう考えならそれはそれでいいけど(いやよくない)。

 それとは別に景虎に聞きたいことがある」

 本当はもっと話し合った方がいいのかもしれないが、俺はここで評定の途中からえらく気になっていたことを聞いた。

「尾張の織田について詳しく教えてくれないか」

「どうしてそんなこと聞くの」

「確かめたいことがあるんだ、それ次第で今後の日ノ本の運命が変わる」

 主人公が尾張にいるなら放っておいても日ノ本は平和になるだろう。しかし、もしも主人公が尾張にいなかったら日ノ本は秀吉が天下を統一するまで長らく戦乱の世が続くことになる、そのあとには豊臣対徳川の戦いも待っている。

 もちろん主人公がいたからといってすぐに天下が太平になるわけではないだろう。桶狭間の戦いまでに2年もの月日が開いていたように天下が太平になるまでにはそれなりの時間がかかると思うがそれまでの道のりで流れる血の量は減らせるはずだ。

「そこまでの力が織田にあるとは思えないわね」

 景虎がもっともなことを言ってくる。

 確かに今の織田家は北に斎藤、東に今川、上洛しようとすれば六角も黙ってはいないだろう、そしてどこと戦っても織田の負けは確実だと誰もが思うような状況だ、しかも当代の織田信長はうつけと罵られている。景虎の言うことはもっともだが。

「本気でそう思ってるわけじゃないんだろ」

「どうしてそう思うの」

 景虎が少しだけ笑顔になって聞いてくる。

「さっき自分で言ってただろ、『世の雀の歌に騙されて舐めてかかってきてくれるならそれこそ100戦100勝も夢じゃない』って」

 景虎は今度はしっかりと笑みを浮かべた。・・・あ、これは可愛い時の景虎だ。

「いいでしょう、教えてあげるわ。それで、具体的には何が知りたいの」

「織田信長の夫について知りたい」

 本田元亘ほんだもとのぶ、俺が読んでいた『戦国伝奇』の主人公。あいつは今頃桶狭間の戦いに備えていろいろと頑張っているのだろうか。

「・・・何で夫なの」

「な、何で・・・」

 ここが本の中かどうか知りたいから、とは言えない。

 どう答えたものか悩んでいると景虎が折れた。

「言えないことなら無理には聞かないわ。

 えっと、信長の夫ね。確か名前は本田元亘、つい先日夫になったばかりの奴ね。素性はよくわかっていないわ、一応農民の出ってことになってはいるけど。他に分かっていることはないわ」

「いや、それで十分だよ」

 やっぱりここに本田元亘はいた。

 ならこの先起こる大きな戦いといえば本に書いてあったものだと「桶狭間の戦い」、「野良田の戦い」「川中島合戦」くらいだろうか。

 もちろん他にも戦はあった、しかしそれは名前がついていないような小規模の小競り合いか空想のものだったので詳しくは分からない。もちろん書かれていないからといって起こらないとは限らないが。

「それで、本田元亘のことを聞いて何がわかったの? あと今後の日ノ本はあなたの知るところではどうなっていくの?」

「とりあえず今分かっていることは約2年後に起こる戦の勝者と、今後の日ノ本については割と早く太平の世が訪れるだろうってこと」

 2年後に起こる戦はもちろん桶狭間の戦いだ。天下太平については早くといったがあくまで『景虎たちの代で』という意味を込めただけで実際に何年かかるかは分からない。

「2年後ね・・・それまでは大きな戦はないの?」

「いや、主だったもので言うと尾張国内での戦と毛利と尼子の戦があったはず」

「つまり2年後の戦まで越後で戦は起きないのね」

「ああごめん、勘違いさせたかな。俺が言った2年後に起こる戦は越後で起きるわけじゃないよ。越後が関わる大きな戦は3年後かな」

 これはさっき挙げた「川中島の戦い」だ。

「じゃあ2年後に起こる戦はどことどこの戦いなの?」

「織田と今川の戦いだよ」

「・・・さっきの言い方だと織田が勝ちそうね」

「・・・」

 調子に乗ってしゃべりすぎたかも。

 織田が今川に勝つとか、3年後まで越後で大きな戦が起こらないとか、絶対に起こるわけじゃないこと、景虎のためにならないことをを言い過ぎた。

「まずいこと言ったみたいな顔してるわね、でもそんなことないわよ。それを信じるかどうかは私が決めるし実際にあなたの言ったとおりになるとしても3年も戦がないと思って腑抜けたりはしないわよ」

「やっぱり景虎に話しても何の問題もなかったか」

「当り前よ、もう少し私のことを知りなさい。

 それよりも、どうして織田の夫について聞いたの? さっきの聞き方だとあなたは本田元亘のことをあまり知らないみたいだったけど、それなのにどうして本田がいるってわかっただけで今後の日ノ本の情勢が予測できるの?」

 ・・・景虎たちが女の子だったことは実際に見たことのある人が生き残っているわけじゃないから何とでも言える、しかし本田元亘がいることは間違いなくここが過去ではなく本の中か俺の全く知らない異世界だと言っている。

 実際にどれなのかはわからないが、俺がさっき言ったことの論拠は「本に書いてあったから」だ。今更史実通りだからだと言ってもそれだと本田元亘の名前を出したことに対する説明が思いつかない。

「言えないなら言えないって言いなさい、さっきから言ってるけど無理に聞き出したりはしないから」

「・・・ありがとう、景虎」

「別に礼を言われることなんてしてないわ」

 こういうところで器の違いを感じる。

 確かに何でもないと言えば何でもないことだが本当に佐渡に金山が見つかれば俺の言っていることの信憑性は増す。そうなれば俺を拷問してでも自分たちにとって都合のいいことを聞き出した方がいいに決まっている。

「さあ帰るわよ。屋敷に帰ったら織田が勝った時に備えて今後の方針を考えないといけないわ。あんたも考えるのよ」


 見事に草履取りの役目を果たしつつ景虎の屋敷に到着。

「で、とりあえず景虎は2年後に備えて何をするんだ」

「まずは佐渡の金山を何とかしないとね、無ければ無いであんたに代案を出させることにしてるけどあったときは佐渡の扱いが難しくなってくるわ」

 代案・・・無かった時のことを考えておかないといけないな。

「そこのやり方は俺には分からないから景虎に一任」

「そんなこと期待してないわよ」

「あっそう。他には何をするの」

「あなたはどうすると思うの?」

「景虎が最終的に何を求めているのかがわからないと何とも言えないな」

「私が求めているのは越後の平和よ、神や仏じゃないんだから他の領土の面倒までは見ていられないわ」

 あら、天下統一とか言われると思っていたのに。

「ほー、てっきり天下統一とか言ってくると思ったのに」

 あまりに意外に思えたので思ったことを口に出してみた。

「別にそんなことに興味なんてないわよ」

「戦が好きそうな感じがするけど」

「それはまあ当たってるわね、たくさん集めた刀や槍の試し切りもしてみたいし」

「おい、越後の平和を願うならそんなことで戦をするな」

「大丈夫よ、私は気に入らない相手としか戦はしないから」

 そこがどう大丈夫なんだろうか。

「具体的には武田ですか」

「分かってるならいいわ、どうせ3年後の戦も武田となんでしょ」

「よくお分かりで」

 出来れば武田とは戦いたくないんだけどな~。本の登場人物としても歴史上の偉人としても武田信玄のことが好きだからな~。

「そのために、今のうちから北条を何とかしておく必要があるわね」

 景虎が真剣な顔をして悩み始める。

 ・・・ん、北条・・・小田原・・・あ。

「景虎、今の関東管領は誰だ」

「上杉憲政ね、確か今はまだ上野にいたかしら」

 しまったー! 川中島より先に小田原城の戦いがあったじゃん!

 小田原城の戦いは小田井原の戦いに敗れた上杉慶政が景虎に関東管領の座を譲った後に景虎が北条討伐のために起こした戦だ。あれは確か・・・1560年だから2年後の出来事、桶狭間の戦いと同じ年だ。

「ごめん景虎、武田との戦いの1年前に北条と戦ってた」

「関東管領のことを聞いてきたところでだいたいわかってたわ」

 景虎は真剣な顔のまま言ってきた。

 俺は景虎に小田原城の戦いについて説明する。

「たぶんだがこの戦は避けては通れないと思う」

「なら武田をどうにかしないといけないわね、佐渡の金山を今年中に軌道に乗せれば来年武田とやれるから・・・」

「まて、それはまずいんだ」

 もしここで景虎の言う通りに事を運んで長尾が武田に勝ってしまうと上杉慶政が景虎を頼ってこなくなるかもしれない。そうなると景虎は関東管領になれない。

「どうまずいの」

「景虎を関東管領ににしようと思うとまだ武田には元気でいてもらわないといけない」

「なら関係ないわね、私は関東管領なんかに興味ないもの」

「でも箔がつけばそれだけで戦の数自体を減らせるかもしれないぞ」

「先に武田をたたけば北条と戦わなくて済むんでしょ」

 言われてみればその通りだ、確かに先に武田をたたいておけば上杉慶政が景虎を頼ってこないかもしれない、つまり長尾家が北条家と戦う理由はなくなる。

 先のことばかり考えて目先のことに目が向かなくなっていたようだ。

「理解したみたいね、それじゃあ今後の方針としてはまず佐渡の金山を軌道に乗せる、その後晴信のやつを私の下僕にする、佐渡が間に合わないかそもそも金が出なかったときはあなたに知識を使ってまた別の方法でお金を稼がせてもらうわ、そして武田を蹴散らして晴信を私の下僕にするってところね」

「待て、何で晴信をお前の下僕にしてるんだ、武田家を滅亡させる気か? あと、確かにお金を稼ぐ手段はあるがそんなにあてにするな、佐渡と同じで絶対じゃないんだから」

 たたくって、滅亡まで考えていたとは・・・そこまで晴信のことが嫌いなのか。

「今のは聞き逃せないわね、今明らかに武田のことをかばっていたわよね」

 いやだって武田だし、晴信だし、信玄だし。

「なに、あなたもしかして晴信のことが好きなの?」

「ん~どうだろ?」

 実際分からない、景虎と同じく本の中の晴信なら好きだが実際の晴信には会ってみないことには何とも言えない。

「あんたね~、そこはきっぱりと好きじゃないって言うところでしょう?」

 景虎さんが怒っている。

「でも実際に見てみないと何とも言えないだろ? ついでにだが、景虎の気持ちを聞いたときに『他の女の子のことを好きになるかもしれない』って言っただろ、その好きになるかもしれない子の一人は晴信のことだ」

 俺が殺されるかもしれないが、俺個人の願いとして武田家には滅んでほしくないので言っておいた。

「ますます生かしておくわけにはいかないわね、そんな奴の首は私が叩き落としてやるわ」

 火に油を注いでしまったようだ。

「いい、あんたの奥さんは私よ! 間違っても武田になんか渡さないわ。それにその好きになるかもしれない子をすべて消せば何の迷いもなく私と暮らせるでしょ」

 あれれ~、景虎ってそこまで過激な人だったっけ?

「待て待て待て、まだ俺はお前と祝言なんて挙げてないぞ」

「佐渡で金が出れば10日後には挙げられるわ、たとえ金が出なくても武田とやるまでにはあなたに頑張ってもらうつもりだからどれだけ長くても1年後には夫婦になってるわよ」

「俺はまだ祝言を挙げることを認めていないぞ」

「あら、貴久は私と祝言を挙げたくないの?」

 景虎がニコニコしながら聞いてくる。

「そりゃあ・・・挙げたいけど」

「ならやっぱり恋敵は少しでも減らしておかないとね」

「それでも・・・」

「そんなに嫌ならあなたが自分で何とかしなさい。

 私は私のために武田と戦うわ。あなたが武田と戦いたくないのなら、あなたが自分の力で何とかしてみせなさい」


 困った事になった、残念ながら今の俺にはなんの力もない。景虎と話はできるが身分は草履取りだ、人を動かす金も権力も人徳もありはしない。

 このままでは間違いなく来年には景虎は武田との戦に臨むだろう。

 俺の勝手な願いだが武田家が滅ばず、それでいて北条との戦を回避できる何かいい手を考えなくてはいけなくなった。

佐渡の金山について触れているのでわたしが参考にしている勢力図について載せておきます。

http://www.geocities.jp/seiryokuzu/

(注)この先進んでいくにつれて参考にしている勢力図とはかなり違っていくと思いますのであくまで参考程度にご覧ください。

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