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多分先輩はこんな私に呆れてしまったんだ。
そう思うと何だか悔しくて寂しくて昨日の夜は眠れなかった。
だから先輩が「みさちゃん」ともう一度声をかけてくれるなんて思わなかった。
しかも図書室じゃなくて教室までわざわざ顔を出してまで。
「みさちゃん、これお土産ね。」
と私が昨日考えていたことをまるで無にする笑顔で小さな袋を私に渡してきた。
「え、お土産ですか。」
と今一状況が掴めず驚きを隠しきれない私に先輩は少し不安げな顔をした。
「やっぱ迷惑だよね、こういうの。」
と先輩は真剣な顔をしてそっと呟いた。
私は少し戸惑った、別に迷惑だなんて思っていない。
そしてむしろ嬉しいということを伝えないとと思った。
私が言葉を選んでいる間に先輩が先に口を開いた。
「要らなかったら捨てていいよ、返されても困るしね。」
気のせいかもしれないけど先輩の声が少し震えていた気がした。
「大切にします。絶対大切にします。」
と私は初めて先輩に自分の意思を伝えられた気がした。
先輩は私の言葉を聞いてかは分からないけれど、笑った。
「そっか、ありがと。」
と呟いてから、先輩は手を振りながら廊下を歩いて行った。
私は教室に入って自分の席に座って袋の中身を確認しようとした。
「田端さん、田端さん。」
と普段は注目されない私に教室全体の視線が集中した。
「田端さん、田端さん。」
と教室のあちこちで囁かれる私の苗字はなんだが妙な違和感があった。
まるで自分の苗字なのに自分のではないような不思議な感じがした。
そして一人の女子が近づいてきた。
「田端さんってさ、多部先輩と仲いいの?」
と話しかけてきたのは教室の中の中心的な存在である、橘沙織さん。
出席番号が前後だから度々話すことはあったけど彼女が私に質問をしてくるなんてことは勿論初めてである。
「いや、そんなことはないと思う。」
と私は仲がいいなんて勝手に私が言ったら先輩に迷惑だと思ってそう答えた。
彼女の返答は意外なものだった。
「いや、そんなことはないと思う。」
と私が言ったことと同じ言葉が返ってきたのだった。