/00 Able(1)
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田端 美里(16)
多部 啓人(17)
薄暗い放課後の図書室が私の一番居心地のいい場所である。
私はここで本を読んだり、宿題をしたりして放課後の大半を過ごす。
でも最近それ以外の図書室の利用方法が増えた。
「みさちゃん。」
と静かに小声で呼びかけてくる優しい声。
「こんにちは、多部先輩。」
と冷静を装って返答をしてみるも私の心情はいつも高鳴りに満ちてます。
「今日の宿題は数学か。」
と何かと私の読んでいる本や宿題について話題を振ってきてくれる。
私は少しそのことに期待感を持つようになり始めていた。
でも私はそこからいつも言葉が続かない。
それは私と先輩は宿題の解き方を聞ける関係なのか、どうかがわからないからである。
世間一般の高校生なら気にもとめないのだろうが、私は本当に憶病なものである。
先輩に初めて話しかけられたのは2ヵ月前の春の終わりごろ。
多分先輩は運動部で、引退したのをきっかけに図書室を訪れたのだと思う。
その時期は沢山の先輩方が図書館を訪れたが、すぐにほとんどが訪れなくなった。
私の居心地のいい場所が捕られた気がして少し寂しい思いがしたが、すぐに元の図書室に戻った。
でも一人だけ図書室に居ついた先輩がいた、それが多部先輩である。
「サッカー関係の雑誌が置いてあるって聞いたんだけど。」
と私がいつも図書室に居るから図書委員だと勘違いしたらしい先輩が話しかけてきた。
実際私は図書委員ではないし、文学作品しか読むことない私は非常に焦った。
それ以上に男子と頻繁に喋ることなんてないし、喋り方なんて分からなかった。
「部活関係の本のところにあると思います。」
とあるかどうか分からなかったけど、何か答えないとと思って伝えた。
「声小さいね、図書室は静かにが原則だもんね。」
と先輩は小さな声で子供の様に無邪気な笑顔を見せながら答えた。
私、あの時声小さかったんだな、図書室だったから小さくなったわけじゃないと思うけど。
先輩はそのあと雑誌を見つけたと小さな声とあの時と同じ笑顔で報告してくれた時から
私は多分先輩を気にしていたのだろうが、そこからはこの憶病な性格が邪魔をして何も進展しない。