おっさんの正体
なんとか野宿を回避した私は先行きの不安から眠れないでいた。
目が覚めたら全部元に戻っていて欲しい。
ここはあまりにも現実からかけ離れていたし、夢落ちならばどんなにいいだろう。
そんな事を考えていると、窓の外から声がきこえた。
「カール、本当にこんな所にいるのか? 」
「あぁ、何度も目撃されているし間違いないだろう」
「居たぞ!!」
「追いかけろ!!」
私は胸騒ぎがしていた。
魔王の追っ手が私を狙っているのかもしれない。
だとしたら外にいるおっさんが危ない。
私はとりあえず、部屋から出て外の様子が見えるように移動した。
そこには浅黒い肌の男が居た。
まだ年齢は20代そこそこの若者で、細身だかアスリートのように逞しい肉体だった。
あんなのに捕まったらおっさんもただじゃすまないだろう。
だが、おっさんは特に焦る様子もなく、若者と話していた。
距離があったので会話までは分からない。
そして、あまりにもそちらに集中していたので、もう一人の男が背後に近付いていたことに気付かなかったわ。
先程の男とは対照的に、白髪で利発そうな子供がそこに立っていた。
肌は女性のように白く、ひょろりとした印象を受けた。
「だ、だれ!? 」
「あ、君が例の勇者さまかな」
「だったらどうするつもりなの!!」
「いやね、うちの王様があんたに興味があるらしくて」
やはりこいつは魔王の手下なのだろう。
「何よ、私を連れ去る気? 」
「連れ去りはしないけど、あんまりレオン王にうろうろされても困るんだよね」
「はぁ? 」
なんとなく会話が噛み合わない。
「イヴァン、なにやってる? 」
黒い方がこちらに向かってきたので、私は逃げ場を失ってしまう。
「あぁ、これが例の勇者か」
「お前たち、勇者様に向かってあまりに失礼過ぎないか? 」
おっさんも何故か、この男達と一緒に現れた。
「そもそも、レオン様が急に城を脱け出されたのが原因です」
「そうそう、後は任せたなんて書き置き残されても困ります」
「こっちにも事情があってな」
どうやら状況が解っていないのは私だけらしかった。
「じつは、わしこのレオンパレスの王様をやってるんじゃ」
随分といい加減な言い方だが、おっさんはただのおっさんじゃなく王様だった。
「えぇ、そんな事一言も言わなかったじゃない」
「黙ってたほうが面白いからな」
何故か嬉しそうにおっさんは言った。
「やっぱり黙っておられたんですね」
何が何だか分からない。




