「装備されますか?」「いいえ」
私はおっさんと一緒に、最初の町に行く事になった。
幸い一歩あるいただけでモンスターに出会うという悲惨な事にはならず、スムーズに町にたどり着けるかに思えた。
「最初の町で装備を整えたほうがいいじゃろう」
「言われなくてもパヂャマで冒険する気はさらさらないわよ」
「ちなみにセーブと生き返る呪文とか有り得ないものはないぞ」
「!?」
「そんな非現実的な事があったら苦労はしんわ」
「この状況が既に非現実的なんですけど」
この先の冒険への不安を胸に抱きつつ最初の町『レオンパレス』へと到着した。
「ようこそレオンパレスへ、ここはレオン王の支配する緑豊かな王国の町です」
緑豊かなというわりには、建物はコンクリートでできており、王宮も要塞のようだった。
「ねぇ、この格好で王様に会うわけじゃないわよね」
「王様は今、人間不振に陥っていらっしゃり誰とも会おうとなさらない」
「謁見しないのね? 」
「そうじゃ、暗殺を恐れて近しい者すら王様には会う事ができないのじゃ」
魔王以前に王様がこんな状態じゃ平和なんて訪れる訳がない。
「王様を暗殺しようとしているのはやっぱり魔王なのかしら」
「それは分からん。他国の王かもしれんし、財産目当ての身内のものかもしれない」
「うーん、その辺りは魔王を倒してから考えましょう」
「そうしていただきたい」
おっさんに案内されて入った防具屋はかなり高価な服を売っているようだった。
「わしが持っているお金はこれだけじゃ」
価値は分からないがおっさんは銀貨を三枚カウンターに置いた。
店の主人は驚いてこう言った。
「あんた、今は防具も武具も高騰して値段がつりあがってるんだ。銀貨三枚じゃこの布の切れ端しか買えないよ」
店主だけじゃなく、店のお客さんからも嘲笑されていた。
私は顔から火が出るぐらい恥ずかしくなりおっさんを引っ張って店を出た。
「ちょっと、あんたのせいで私まで恥をかいたじゃない」
「すまんすまん、何しろこの町に来たのは10年も前の事じゃから」
「それでよく私を案内する役になれたわね」
「わしはじゃんけんで負けて選ばれたのだ」
おっさんは何故か誇らしげにとんでもない言葉を口にしていた。
私はこのおっさんに期待するのは止めた。
どうみても小者だし、頼りにならないし、金銭感覚すら持っていない。
「もういい」
「なんじゃ」
「もう嫌だ、沢山だわ」
「おいおい」
「このままパヂャマで冒険に出るくらいなら何もしない方がましよ」
「じゃが、何もしなければ宿屋にすら泊まれないんじゃ。たしか銀貨四枚で一泊朝食つきだったかのう」
「10年前はでしょ? 」
「ああそうじゃ」
この状況は最悪過ぎる。
結局、着の身着のまま冒険に出る羽目になるのか。
とりあえず公共の施設や他人の住居に侵入してタンスや壺を漁るしかないか。
「ちなみに窃盗は斬首じゃ」
「やっぱ最悪よ」




