Work3 お昼休みロワいやる
結局、昼の休憩までに会長が戻ってくることは無かったが、俺達風紀委員は約1/3ほどの掃除を終えていた。
9時から始まり、12時までにこれだけの量が掃除できたのだ。
会長が戻ってきたら金巻き上げるどころか全財産を貰った上で1ヶ月ほど雑務をすべてやらせたい。
まぁ、実際そんなことはしないのだが。あぁ、1ヶ月雑務はやらせようか。
「会長の事は置いといて……昼になっても九鬼先輩は来ませんか……あの人自分の役職が分かってるんですか?
まぁ、三馬鹿の内の一人ですし、七不思議入りも目前の人のお頭にそんなことは求めませんけど。」
凍てつく会計は昼食を口に運び、茶を飲みながら呟く。
そう、副会長たる『九鬼咲苗』は未だに顔すら見せていないのだ。
勘違いされると困るので言っておくが、咲苗は男である。いや性格が、とかじゃなくて男である。
名前だけで判断されるのが嫌いだそうだ。女装すればそれなりにイけます。いや、そういう変な趣味じゃなくて。
とまぁ、アレッサはいつも通りの毒舌を吐き捨て、すっと立ち上がる。
「何処行くんだ?」
「女の子に言わせないでください。」
あぁ、スイマセン。
「あはははははは。今咲苗に電話したけど、アイツもう着くって。アイツ掃除好きだからなー。」
「雪夜、その言い方だと咲苗は今日のことを知らなかったのか?」
「そうみたい。あはははは。」
学校来いよ………
まぁ、掃除大好き人間の咲苗が来てくれるのは嬉しい事だ。
事実、咲苗は去年の美化清掃大会で、一人で2学年の全教室を掃除してしまったほどだ。
勿論、大会では優勝。学年で喜ぶ者もあれば、ポカーンと口を開けていた者もいた。
「………(クイクイ)」
不意に標準服のシャツを引っ張られる。
横を見ると、凜ちゃんが俯きながらシャツを引っ張り続けていた。
この子、喋れないのかな?いやそんなはずないんだけどなぁ。
「どうしたの?」
「………兄ちゃん……」
ボソッとだが、確かに凜ちゃんは兄ちゃんと呟いた。
あぁ、兄ちゃんね。死んだよ。
そんなこと言えるはず無いので適当に「多分……帰ってこないんじゃ……?はは……」
と流したら明らかにガーン!という表情を浮かべ「orz」の体形になり紫色の縦線を何本も纏わせていた。
ごめん………
まぁいいや。
そんなことより昼飯………
「昼飯……あれ?ここに置いといた……はず……」
おかしい。
無い。
さっきまであったはずの俺のすき焼き弁当(950円)が何処かに消えている。
おいだれだふざけんなおいふざけんなおいふざけんなおいふざけんなおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。
落ち着け良寛熱くなるなクールダウンだ落ち着け。
俺が凜ちゃんと話してる隙に消えた……?
という事はアレッサの可能性は無い。確実に白だ。
もちろん凜ちゃんも白。
残るは雪夜、アリス、主水………主水は除いても……いやわからん………
「あははははー、悩んでんのー?悩み相談に乗って上げよーか?」
そうだな………ってダメダメ良く考えろ良寛。
雪夜のペースに持ってかれたら何が何だか分からなくなって錯乱させられてしまう。
多分……というよりも絶対コイツが俺のすき焼き弁当(950円税込)を食った犯人だろう。
紅ショウガが歯に挟まってやがる………!
こうもまぁ抜け抜けと………!!!!!!
だがだめだ落ち着け良寛。今直接聞いたら愚の骨頂。
忘れるな良寛。どんなに馬鹿でもコイツは学年第3席……
冷静に難しい日本語を連発されてフルボッコに論破されるのは眼に見えてる……!
ならば……!ならば心理戦……!コイツがボロを出せばそこを容赦なくつける……!
「あー、にしても……俺のすき焼き弁当何処だよー。雪夜、知らないか?」
嘘を言えばそこを突きまくってボロを出させてやる……
さぁ言え……お前のDEAD ENDは既に決まってるんだ……!
希望の船はもう来ない……!一度限りの人生をお前は無駄にした……!!
「あぁ、俺が食った。あははは。」
は?
ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!??!?!?
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!
お前が食ったのは知ってるんだけどさ、悪びれずになんでそう言うかな!?
え?もしかしてこれって雪夜のペースにはまった?え?マジ?
俺が算段してたのをすべて見破ってこの発言……?
こうもどうどうと言われると反論の余地なくね……?
え………もしかして俺……
負け……た……の……?
俺は何か、大切な物を学んだ気がする。
深読みしすぎるとかえって相手のドツボにハマるという事を……
恐ろしい奴だ。