Work14 筆箱ミステリー
あじゃねーよこのバ会長が。
「どーすんだよ……途中退場出来ないしなぁ……かといって誰かにお使い頼ませるのもいやだしなぁ……これ俺ら負けじゃね……?」
「おい会長テメェ!俺は100点と微力かもしれんが、他のメンバー達の努力をパァにする気か!」
主水はいきりたって会長を責める。
会長も会長でわーわー言いながら反論。しかしどれも虚しく聞き流されてしまう。
「事情を話せば出してくれるんじゃ……」
一応俺も提案してみるが、会長はうーん……と考え込んでしまった。
そこで自分も気付いたのだが、生徒会からしてみれば何とも好都合。
抜けさせなければ勝利が近付いてくるのだ。どんな馬鹿な奴でもこれくらいは分かるだろう。
今まで気づかなかった俺も俺なのだが。
「やっぱ誰かに取りに行かせるしかねぇ……おい良寛、取りに行け。筆箱の中は絶対に見るなよ?」
結局俺かよ………まぁ俺ぐらいしかいないんだけどさ。
アリスに取りに行かせたら絶対中開いてあははとか言いそうだし、帰ってこなさそうだし。
ということで、中央講堂、通称大ホールを抜け、敷地内にある風紀委員室目がけて校内を駆ける俺。
一応、場所的には大ホールの近くにあるのだが、如何せん遮蔽物が多い。
かなり回り道しないと風紀委員室にはたどり着けない。
まぁ、飛び越えればいいわけだが。
そんなこんなで数十秒で風紀委員室に到着。
風紀委員室の会長の座、つまるところの会長の席に筆箱がポツリと主人に取り残されていた。
そこで、俺の中の悪魔が俺の耳元で囁いた。
え?筆箱の中を見ろ?
いやいやいやいや。
見るなと言われてるんだから見ちゃいけないだろ。
え?そう言われると見たくなる?
デスヨネー。
ジジジジ……
いつの間にか俺の手はジッパーを開いていた。
そして中には写真が一枚。
見ていいのだろうか。
信頼しているから、俺に頼んだんじゃないのか俺。
まぁいいや。
いつも俺らは迷惑被ってるわけだ。
少しぐらいならバチは当たらんよ。
写真には、腕を組んだ白い髪の会長と、一人の女性。
生徒会長に見える………が、ところどころ違う部分がある。
例えば髪の色とか、眼とか、口元。
パッと見生徒会長に見えるのだが、よく目を凝らして見るといろいろと違う。
それに、胸元の勲章が「III」だった。確か会長が髪の毛をブリーチしてたのは二年の時だった。
という事は、今は高等部に居る人なのか。
誰なんだろ……
会長とは長い付き合いだが、この人と居るところを見たこと無いし、それに誰かが見た、なんて話を聞いたことも無い。
しかし、写真を撮った場所は南校門だ。あそこは常に生徒が出入りしている。部活動なんかでも南門から出て校外を回って北門から南門というルートがよく使われる。
一年通して完全に部活動が無くなる日というのはテスト期間だけだ。だがテスト期間なら全員が同じ時間に帰るはずだから見られてないとおかしい。
写真を撮った時刻は昼頃だ。テスト期間中でも風紀委員の活動が必ずあったので帰りは絶対に夕方。その頃の会長には外出癖やサボり癖も無い………
なにこのミステリー。
あぁ、よくよく考えてみれば夏休み以外の休暇期間なら部活動無いじゃないか。
あったとしても昼までだし。
それにしても………仲良さそうだ。
この人、高等部に居る……んだよな。
今度名簿を見てみよう。
そんなことを思っているともうそろそろ雪夜のターンも終了する。
次は凜ちゃんで、その次が会長だ。
「急ぐ必要は……無いか。」
そう呟き、風紀委員室を後にする。
………おおっと、筆箱忘れるところだった。