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Work12 二時限目-理科- Hot and Cool

もう、やってる姿はペンを動かす姿しかわからないので何とも言えないが、

あの2人、一向にペンを止めない。


もう2、3枚は終わらせている。

もちろん先ほどのルールは続いているので、既に日本語以外の言語に突入しているはずだが。


「この程度のロシア語じゃ、小学生でも解けますね。」


とアレッサ。母国ロシアのキリル文字を日本語と同じように読んでいく。

対するマリアも母国であるイギリスの言葉、つまるところ英語を超高速で解いていく。


更に二人はヨーロッパ圏に非常に強いようで、ヨーロッパ圏だけを選出してどんどん解いていく。

これを見ると、さっきの主水が全然ダメに見えてしまう。ダメでは無いのだが。


だが、ヨーロッパ圏が終わってしまうとたちまちペンが止まる。

会長クラスにでもならないと終始ペンが止まらない、なんてことはない。


しかし、アレッサはペンを再び動かし始める。

そこに書かれている文字はドットとハイフン。モールス符号である。


少しずつ、少しずつ解読していく。

マリアはもう間違え探しに必死である。

流石の彼女でも、モールス符号は読めない。これはもう完全に趣味の範疇である。


残り時間はあと3分。

5分かけてやっと文章の半分しか解読できていないアレッサの表情には確かな焦りが浮かび始めた。


一問でも多く、一問でも多く。


そんな思いが伝わってくるほどの必死さ。

いつも冷たい彼女が、これほど熱いとは。


そして、3分は過ぎ去ってしまう。

ゴォォオオン……という再び豪奢な音がする。

「うんしょ」という声も聞こえる。

あー可愛い。


「えー、先ほどのテストの結果ですが、マリアが324、アレッサちゃんが321。総合得点では今のところ我々生徒会の方が有利ね。」


アレッサよ……負けてしまっても仕方ない。

お前より1年間生きている年数が多い相手だった。


と心の中で呟くが、アレッサは心底落ち込んでいた。


「ま、まぁ、なんだその……主水よりはすごかった!おぉすごかった!」


「そ、そうだアレッサ。俺より全然すごかったぞ!?半端ねぇぞ!?」


会長と主水が必死にアレッサを慰めている。

確かに引きずられても怖いな。何されるかわからんし。


「…どいてください……」


少し涙目だった。会場、である大ホールのギャラリー席に座りこんでしまった。

なるべく、皆から離れたところに。


「しょうがねぇなぁ……」


俺はそう呟き、ホールの入口にある自販機でアレッサの好きなココアを買ってアレッサのところの持っていった。

冷たいココアの缶をアレッサのおでこにコツンと当ててあげた。


「……ぅぅ………」


アレッサは泣きながら俺を見ている。

俺の知ってるアレッサと違う、脆くて崩れやすそうな華奢な女の子だった。


キレられるのを承知で頭を撫でてあげる。

なるべく俺も、アレッサの目線と同じくらいの高さまでしゃがみ込む。


「大丈夫大丈夫。アレッサはよく頑張った。」


はい、とココアを渡してあげると、下を向きながら黙り込んでしまう。

でも、カチカチっと頑張って缶を開けようとしていた。

どうやら力が入らないらしい。


見ててキリがないので缶を開けてあげると、アレッサは小さな声で「ありがとうございます……」と呟いた。


「んじゃ、俺戻るね?」


そう言い残し、ギャラリー席を去ろうとすると、


「行かないで……ください……」



………フラグ?

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