Work10 テストバトル勃発 一時限目-数学-
決戦の日、来たり。
「今日のテストバトルだが、お互い全力を尽くし、各々の学力向上に精を出そう!」
会長が生徒会長にごもっともなことを言っている。
いつもこんな人だったらよかったのに………。
まぁ、馬鹿なところもあるから話しやすかったりするんだけどさ。
それはさておき我が風紀委員サイドは、珍しく全員参加。
えー、相手が6人しかいないので二人抜かなくてはならない。
抜くのはアリスと、俺。
え?
マジで俺?
俺抜かれるの?主人公なのに?
まぁいいか。
ここで下手こいて負けでもしたら後が怖い。
「では、最初は私達生徒会が科目を選ばしていただきますね。科目を決めた後に選手を決めていただいてもかまいませんよ。
もちろん、相手の選手を確認してからでもかまいません。原則として、科目を設定した方が先に選手を選んでもらいますね。」
とのこと。ルールはカンニングすんな、きっかり15分、どれだけの問題を解けるか、最終的に総合点で争う、だけらしい。
後はこのアドヴァンテージシステムくらいか。
生徒会の面々はゴニョゴニョと雑談中。対する我が風紀委員会はそれを眺めながら、イヤホンをしている者が一人。
我らが会長、由良雲水である。何か嫌な予感がしたので近づき、イヤホンをむしり取って聞いてみると、
『科目は数学で行きましょう。選手は誰に?』
『会長は由良サンと当たっていただく必要がある。此処は私、副会長である佐倉が出向こう。』
『いや、佐倉っちは英語で行ってもらいたい。このメンバーの中で英語が一番得意なのは佐倉っちだからさ。』
『そうか。では、数学は八柳でいいのでは?』
『俺か。良いだろう。』
『じゃあ、八柳で決定だな。』
「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオイ!!!会長テメェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!」
あろうことか、相手の雑談をすべて盗聴していた。
という事は釣られて聞いてた俺も共犯じゃないか!
「良寛静かに。盗聴ぐらい、戦場では日常茶飯事だ。奴らがシグナル、隠語、モールスで話さなかったのが悪い。」
そんな軍隊じみたこと誰が「-・-・- ・- --・-・ -- -・・・ ・-- ・-・ -・-・・ ・・ -・-・- ・-・-・ ・・-・- -・ ・- ・-・-- ・・ ---・- --・- 」するっ「--・-- ・- ・--・ -・・・ ---・- ・-・・- ・-・・ ・・ ・・・- ・--・ -- ・- ・-・・ ・・・ ・-・ 」てん「・-・・ ・- ・・-・ -- ・-・・- ・-・・ ・・ ・-・-- ・・ ・-・-- ---- ・-・ ・-・・ ・--・ -・ -・ ・・ -・-- -・・- --・-・ 」だよ「あんたらなぁあああああああああああああ!!!」
「まぁそう言うなって。お前もやれよ。モールスぐらいできるだろ?」
そう、咲苗が言うが、
「いや、できるけどさ。」
言葉を濁しながらも拒否しておいた。
めんどくさそうだし。
そしてなぜできるかは聞くな。
若かりし頃の思い出だ。
ちなみにさっきのは「最初は八柳さんみたいですね。」「あいつは数学強いからな。」「会長が出てこなかっただけまし。」
だと思う。聞き間違えが無ければ。
「で、こっちは誰にするんだ雲水。数学なんて誰投入しても同じだろ。主水は数学だけなら学年で7位に入る成績だし。」
「じゃあ主水でよくね?」
「俺……まぁいい。数学は得意だしな。」
「八柳先輩は5位のはずですが。」
「得点差じゃ10点、五問分だ。それに、計算スピードなら負ける気はしない。」
その後もいろいろと話し合い、結局主水に決定したようだ。
対する生徒会役員は、心優しき和みの会計『八柳一休』。
所属は弓道部。なので、凜ちゃんとは同じ部活である。
凜ちゃんは尊敬からか、律儀に頭を下げる。八柳も眉一つ動かさず、凛とした表情で一礼していた。
後輩に対しても、深々と頭を下げるあたり、本当に礼儀正しい人だなぁ、と同学年なのに年上の印象を持ってしまう。
この人、ほとんど無表情ですごくクール。
しかし制服は紅い和服を着ており、落ち着いた表情に反し派手な印象がある。
「では、始めましょうか。」
生徒会長はそう言うと、近くにあった銅鑼を力いっぱいにたたいていた。
「うんしょ……」と声が漏れていて、なぜかキュンとしてしまった。
「あー可愛い可愛い可愛い」
いや何でもない。
これは心の声で「漏れてますよ先輩。」マジかよ。
豪奢な銅鑼の音が響き終わると、二人は一斉にテスト用紙を開き、すごい勢いで数式を書き始めた。
どちらも負けず劣らず速い。
これは、すごいのを目にしてるぜ、俺ら。