Work1 秀雲学園風紀委員会
やっべぇwww全員で8なのに7にwww
「死んでしまえ!この#〇л$%≒д!!」
「お前こそ自分の仕事しやがれこの=ЩΗ%&#$!!」
鋭く痛い罵声が飛び交う、いつも通りの放課後だ。
え?いや、誰かが虐められているわけでもなく、虐めてるわけじゃないんだ。
そう、いたっていつも通りの風紀委員会だ。
「会長が仕事してないのは事実なんですから、何も言えませんねぇ。」
クールな顔をして、痛々しい喧嘩を眺めているのは風紀委員会の凍てつく会計『アレッサ・ヴィクトール』。
ここ『秀雲学園』は、日本の中でも1、2位を争う中高一貫型の私立校だ。
敷地面積は都心にあるのに関わらず、異様なほどに広い。
数年前に創られまだまだ歴史は浅いものの、世界中でその実績が認められ高く評価されている。
そして、この学校の特徴といえば学園生活の自由度だろう。
この学校に入れるということは、その時点でかなり頭がいいことになる。
中学1、2年で中学三年分のカリキュラムをすべて行い、3年は高校の基礎を学ぶことになる。
3年になった時、初めてこの学校の自由度が生かされることになる。
『自由選択制時間割』の導入である。
すべての時間割を、自ら編成するという制度だ。大学のようなシステム、と思ってくれれば間違いないだろう。
「義務教育さえ終われば、学ぶ内容は人それぞれによって異なる」という理事長の考えから導入されているのだ。
登校時間は何時でもいいし、いつ下校してもいいし、授業をサボってもよし。
事実、この学校では中間、期末試験と高等部での進級試験において、一定の点数を取っていれば授業に出る必要性すらなくなる。
そんな天才いるわけないって?
いや、いるんですよ。
ここに。
「この野郎まだわかんねぇか!俺が会長なんだから俺がルールなんだ馬鹿!」
我が秀雲学園の風紀委員会長、純白の肌に漆黒の髪、私服は大体きれい目『由良雲水』は、
授業出席率24.5%未満、登校率は100%だ。
授業出ないで何やってるのかというと、大体この風紀委員室にて茶を飲んで、テレビ見て、漫画を読んでいる。
何しろこの学校、母体が世界中の教育関係の大富豪達が作ったんで、設備はほぼ完璧クラス。
どの部屋に行っても冷暖房完備の大型液晶テレビ付き。
ゲームもやり放題、というわけで、成績に余裕がある奴はこのようにどこかの部屋でサボっているのだ。
俺『藤田良寛』は、そんなことができるほど、成績に余裕があるわけじゃない。
会計のアレッサと役員のアリスを除いて、俺ら風紀委員は今年の春に中等部の3年になり、高校の勉強等でいろいろと忙しいのだ。
もちろん俺は今まである程度の点数は取っているし、学園内でも成績は中堅クラスだ。
今会長と絶賛口喧嘩中の男、風紀委員の常識人兼書記『白石主水』も、
俺と同等の成績を持ち、だいたいテストの点数を競い合っている。
3年になったことで、自由時間割になってしまった今はクラスというのは本当に形だけになってしまったが、一応3年間同じクラスだ。
「主水、やめとけ。雲水にゃ、何言ってもきかねぇ。」
口喧嘩が永遠に終わりそうになかったので、俺とアレッサが止めに入る。
俺は何とか言葉で止められたが、アレッサの方は長い竹刀で雲水の頭を思い切り叩いていた。
よくあるギャグ漫画の表現技法として、眼が飛び出たりするが、ホントに飛び出るのではないかというくらい強く叩いていた。
「アレッサ!会長に向かって何しやがんでぇ!ブッ倒すぞコラァ!」
会長は痛みをこらえつつ、いきり立ってグルルルル、と謎の威嚇を交えながらアレッサに反抗する。
しかしアレッサは「ハァ……」と実にめんどくさそうな溜め息をついた後、
「女の子に向かって暴力振るうんですか。愚を極めた会長ならではの発想ですね。本当に学年トップですか?
良くそんな幼稚で単純な頭で今まで生きてこられましたね。私はこの不思議を世界七不思議に入れるべきだと思うんですが。」
ズバズバと自分の先輩に向かって毒舌を吐き捨てる凍てつく会計。
委員長はグサッグサッと何かが刺さったかのごとく地に伏していた。
その後も凍てつく会計による攻撃は依然として止まらず、会長は涙目で土下座していた。
「あぁ、今日も暇だねぇ。ホント。つかアリスはまだかよ。」
たまらず本音が漏れてしまう俺。
本当に暇なのだ。この風紀委員会というのは。
風紀委員会は俺らが入学するより少し前に一度廃止されており、これは2代目の風紀委員会という事になる。
なので、1年次より6年間、この風紀委員をやらなくてはならない。
皆が想像する風紀委員というのは、だいたい学校の風紀を守るために尽力し、悪を切り捨てていく、みたいな感じだろう。
実は初代風紀委員はそれに似たことをしていたのだ。評判は良かったのだが、とある事件に巻き込まれ廃止。
前にも言った通り、この学校は数年前に作られた新しい学校なため、教員の変動は全く無い。
なので、事件のことを考慮し、風紀委員新設に反対されたのだが、
今の会長である雲水が「生徒会がやらないような雑用は任せてください!」とか言いだし、
生徒会からの要望もあってか、やっと承認されたのだ。
つまるところ、この活動、ほとんど雑用係なのだ。
廊下の掃除、庭の整備、学園の資料作成等々……
思い返せば本当に雑用しかしていない。しかしそれが功を奏したのか、風紀委員は今や学園内で強大な権利を持ち、
生徒達に風紀を守るためにどうとかこうとか、などと風紀委員っぽいことができるようになっていた。
まぁ、我らが会長、由良雲水のカリスマ性と成績の良さがあってこそなのだが。
「こんちゃ!遅れたっちゃ!てへっ!」
そんなことを考えながら外を眺めていると、やっと風紀委員の明るく元気なおてんば娘『アリス・シュナイダー』が
ガラガラっと元気に風紀委員室のふすまを開け、畳の空間に飛び込んできた。
「藤ちゃん、ゆらりんは?くきたんは?いりりんは?」
ゆらりん……ゆらりん……どっちだろうか。
俺とアリスともう一人役員として由良雲水の妹、『由良凜』というのが居て、日頃からゆらりんと呼ばれている。
そして会長の雲水もゆらりんと呼ばれているのだ。
今、会長は丁度トイレに行っているため、俺の頭はどっちがどっちだか困惑してしまう状況だ。
ちなみにくきたんといりりんはどちらも副会長で、雲水を含めた学年TOP3の奴らだ。
「えっと、アリス。凜の方?雲水の方?」
「凜の方!」
あぁ、妹の方だったか。ホントこれから困るからちゃんと呼び方分けてほしいな。
ただ、由良兄妹はゆらりんのイントネーションでどちらが呼ばれたかがわかるようだ。
俺には分からん。
「お、アリスもいやがる。よし、副会長'sは今日はいない。なんか九鬼の方は眠いとかで、入江は死にたいからだそうだ。」
全くいつも通りのサボりの理由である。
会長が二人のサボりの理由を言った後、今日の会議に入る。
と言っても、かなり適当なのだが。
「よし、おまいら。明日は美化清掃の日だ!俺らはここ、風紀委員会の特設部屋の周りを綺麗にすることになった!」
この風紀委員室、実を言うと今まで茶道部が使ってきた和室を使っているのだ。
入学と同時期に、校舎内に新たな茶道部の部屋が新設され、この和室が空いてしまったので譲ってもらえたのだ。
秀雲の広大な敷地の中にあるこの部屋は、和の趣たっぷりの異空間で、他とは違う雰囲気を醸し出している。
庭はあるし、池もあるし、春になれば桜が満開になり、夏になれば熱さを感じぬ涼しげな部屋になり、
秋になれば紅葉咲き乱れ、冬になれば美しい透き通った空気を感じることができる。
京都にある有名な御寺のミニチュアがあると考えてもらっていい位、すごく美しい場所だ。
で、こんないい場所はもちろん敷地面積も広いわけで。
流石に全員揃っても8人だけの風紀委員が掃除しきれるわけがないのだ。
しかしその考えを先読みしたかのごとく、会長が言う。
「もちろん、あの広大なギアナ高地に匹敵するほどのこの風紀委員室を掃除しきれるわけがないので、
今回は特別に中等部の全学年より少しずつだが、助っ人を頼んでおいた。」
流石会長。ギアナ高地を例にしてしまったのはどうかと思うが、とてもいい仕事をしている。
「んじゃ、お前ら。あとは適当に考えといてくれ。俺秋葉原行きたいんだわ。」
さっきの発言を取り消したい。
待て!と主水が言う前に、会長はスタコラサッサと帰ってしまった。
大丈夫かな。明日。
こちらも、書いていこうと思う。
あの厨二と同時進行で。