ある日の胡桃沢の1日
有栖川に出会う前のめんどくさがり系強運女子胡桃沢のある日の1日
うーん…このプロジェクター欲しいなぁ…
お風呂上がりに、ポチポチとスマホでXを見ていたら、ホームプロジェクターの広告が流れてきた。Xは自分がなんとなく興味ある情報を垂れ流してくれるからありがたい。まあ時間が溶けていくけど。
ホームプロジェクターなんて大富豪のアイテムだと思ってたけど、今は2万もあれば買えちゃうらしい。家が映画館になるんだよ?安すぎない?
化粧やめて、1ヶ月すっぴんでいれば家が映画館になるんだよ?
ただ、私は就活中の身。バイトも減らしてるからお金も余裕ないし、化粧品も面接に必要だ。衝動的にプロジェクターを買ってる場合じゃない。
「お菓子でも食べて一回冷静に考えよう」
冷蔵庫から冷やしたたけのこの里を取り出す。因みに私はきのこたけのこ戦争には参加していない。平和大好き、無闇な戦争はやめるべきだよ。どっちも美味しいからね。でも今日はたけのこ。
一袋は流石に太っちゃうかな…?半分食べて残りは明日食べようっと。
袋を開けてサクサクと食べる。
「うん、美味しいなやっぱ」
もう一度プロジェクターの検討。
私は動画配信サービスを愛している。色々なサブスク登録をしてても、月額は一回飲み会行くのと同じくらいだ。お酒は好きだから飲み会自体は嫌いじゃないけど、やっぱり気は使うし家で動画観ながら飲む方が気が楽で好き。
将来OLになったら土日は1日外に出ず、風呂キャン(最早エントリーすらしない)して家でだらだら動画見てそう。
久々に友達と飲み行ったら、みんな家庭があるなかで、深夜アニメの考察とか語って、みんなが「最近時間なくてそういうの見れてないなー」って苦笑いした後、「みんな、何か追加頼む?」とか言って話を逸らされるのかなぁ。
うう…なんでプロジェクターの検討してたら絶望的な未来が…
でも、そうだよねぇ…
流石に買ったら家に篭りすぎて社会性消失しそう。観すぎて面接遅刻とかしそう。就活に集中できないどころか、これが原因で社会性消失して就活失敗するまで見えた。危ない危ない。Xは、私の心を見抜いて陥れてくる闇の組織だったみたい。
やめよう、よく耐えた。私は我慢できる女だぜ。
さーてじゃあ昨日から見始めた海外ドラマの続き見よっと。
お菓子に手を伸ばす。
ガサガサ…ん…あれ、ない?
あれ?え、うそ、半分って思ってたのに全部食べちゃった?
無理だよ…半分でやめるなんて…
我慢できる女は撤回することにしました
ーーー
ふぅ…やっぱ週一だと間隔空くから結構疲れちゃうなぁ。でも今日は新作の廃棄もらえたしいいか!レモンクリームのデニッシュ楽しみ〜アイスティースーパーで買って帰ろっと。
パン屋の朝勤を終え、そそくさと裏口から退散。店長にも一言挨拶しとこう。
「じゃあお先に失礼します〜」
「お疲れ〜。もっと気晴らしにシフト入ってもいいんだぞ?」
「朝じゃなくて夕勤なら考えますよ店長」
「夕勤は高校生で足りてるの知ってるよな」
「私は4年間バイトしてるのに、前日夜は早起きが嫌で全然気が晴れません。朝きついです」
「社会人なったら毎日だからな」
「う、うう…帰ります。お疲れ様でした!」
普通に尊敬だよ毎朝なんて…社会人務まるかな
時間は14時か。スーパーもこの時間なら空いてるかな。三軒茶屋は人が多い街だけど平日の昼はごった返すような事はない。地元民中心に買い物でそこそこ賑わってる程度だ。
パン屋からスーパーへ慣れた足取りで向かう。
「う、うぇえん…」
ん…?
なにやらスーパーの入り口で男の子が泣いている。迷子?小学校低学年くらいかな。大丈夫かな?
「ねぇ君、迷子?」
「う、うん…」
泣きべそかいてこっちをみてくる。
やっぱそうか。安心させてあげないと。
「そうなんだ。名前はなんていうの?」
「こたろう…」
「パパママとはぐれちゃったの?どのくらい前?」
「10分くらい前…お母さん買い忘れたものがあるから、少しだけ待ってて行ったきり帰ってこなくて」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう。…そうだ!これ食べる?一回おやつ食べて待とうよ」
さっき貰った新作のレモンクリームデニッシュを出す。楽しみにしてたけどそんなの大した事ではない。
「え、いいの…?」
「うん、食べて食べて。一緒にお母さん待とう?」
とはいえ、一応インフォメーションに伝えるべきだ。
「中で食べようか。ちょっとこのベンチで待ってて」
「う、うん…」
インフォメーションから目の届くベンチに座らせて私は端的に窓口の人に迷子アナウンスの依頼をして、すぐにベンチに戻った。
すぐさま迷子アナウンスをかけてくれた。
「良かったね。もうすぐ多分ママくるよ?」
「ありがとうお姉ちゃん。このパンもとっても美味しいね。」
「そう?私のバイト先のパンなんだ。すぐそこだから買いに来てね?」
レモンクリームは子供にはなかなか渋いかもと思ったが美味しかったらしい。よかった。
だいぶ落ち着きを取り戻したようだ。
リラックスしたのかポツリと喋った。
「僕もう今年から小学生になるんだけど、すぐ泣いちゃうんだ…恥ずかしいよ…」
うーん、可愛い悩みだな。
お姉さんとして何を言うべきか
気にしなくていいよ?軽いかなぁ。
「そうやって恥ずかしいとか思えるのは凄いよ?私がこたろう君くらいの時なんか毎日泣いてたよ」
私は泣き虫だったからね。
「みんなから馬鹿にされたりしなかった?」
「バカにされたなぁ。でもそんなふうに自分を変えようとか思いもしなかったな。偉いねこたろう君」
そう言うと少し明るくなって言った。
「そうかな…僕偉いかな?」
「うん、なかなかできないと思うよ」
ここは褒めてあげよう。
「あのね…僕の好きな今やってるフィロソフィー戦隊の赤が言うんだ」
えと…哲学戦隊…?戦隊モノのモチーフもここまできたか。
「男が涙を流していいのは…自分が自分でいられる事を誇りに思えた時だけだって」
…どう言う意味?深そうであんまり深くないがする!わからん!
「でも僕自分を誇りにはまだ思えないから…」
子供が見る内容にしては重そうだなぁ。
「誇りには思えなくてもさ、誇りに思えるように頑張ってるのはとっても偉いと思うよ?」
そういうと段々顔が明るくなってきた。
良かった…解釈外れてはなかったっぽい。
話していると、慌て気味に30後半くらいの女性がこちらに走ってやってきた。
「こ、こたろう!ごめんね!お母さんちょっと会社から電話きちゃって、通話してたら時間かかっちゃって」
「お母さん!」
駆け寄るこたろう
「でも俺泣かずに待ってたよ!このお姉さんのおかげ!」
さっきめちゃめちゃ泣いてたのは黙ってあげた。
可愛いやつめ。
「あ、すみません。さっき迷子っぽかったので窓口に連れてきました。あとパンも食べさせちゃいました。ごめんなさい。」
「なんで謝るんですか!むしろ本当にありがとうございます!こたろう御礼言って!」
素直にこたろう君は従う。
「お姉さん、ありがとう!泣かないように頑張るね!あとパン買いに行くね!」
「うん頑張ってね!」
お母さんがガサガサとバッグの中を探している
「あ、これ御礼ってわけじゃないんですけど…私達時間なくて行けないのでよかったら。
なにやら赤い紙の券を差し出してきた。
「これ3階で福引引けるの。良かったらどうぞ」
おお、なかなか面白い御礼だ。
「福引ですか!ありがとうございます!」
そういうと、何度か首を下げながらお母さんとこたろう君は去って行った。
一応福引券を頂いたので、やらない理由はなく、3階へ向かった。
エスカレーターを登ると真正面の特設コーナーで開催されていた。
1等はハワイ旅行、2等は北海道旅行、3等はニンテンドースイッチのようだ。その他も細々商品並べられている。
早速窓口のおじさんに券を差し出す。一枚勝負というのはやや心許ないが当たる時は当たるもんね。
「まだ全然景品あるからねー!がんばって」
おじさんが鼓舞してくる。
頼むー当たって!
くるくるくるくると回して、青色の玉がすぽっと出てきた。
カランカランカランカラン!
鈴を鳴らすおじさん!
「おめでとうございまーす!」
「え、当たり?」
青って当たりなんだ!
てか金色以外わかりづらいよ、福引!
色の序列が人それぞれ過ぎるって!
「青は4等です!おめでとうございます!」
4等!やった!でも商品見てなかったな。なんだろう!
「4等は…ホームプロジェクターになります!」
ホームプロジェクター?…ホームプロジェクター!
や、やったあ!
「ありがとうございます!今ちょうど1番欲しかったんです!」
「そうなの?!お姉さん、運がいいね!」
「はい!ありがとうございます!」
こたろう君で徳を積んだからかな!やったね!
うきうきで部屋に戻って早速セッティング。
部屋を暗くするうおおおんという起動音の後に、静かになり、画面が投影される。
すごい!やっぱ映画館みたい!
リビングの壁に投影されている。
本格的な設備はないが、壁が白かった事もあり見やすく
充分だ。作品を実際に観るとどんな感じなんだろ?
「あ」
そうだ、こたろう君が言ってたフィロソフィー戦隊、あれちょっと見てみたいかも。
検索で調べてみる。あ、あった。早速再生を押す。
画面が暗くなり、ゆっくり白い文字が流れる。
「他人に与えた優しさに見返りを求めてはいけない
それでも他人に与えた優しさはいつか返ってくるものだ」
え…?これ1話のタイトル!?
尖りすぎじゃない!?
…でも、確かにそうかも。だって今日はプロジェクター目当てじゃなかったけど、こたろう君助けたらたまたま手に入った。このタイトル通りだ。
それにしても面白いのかなこれ…微妙そうだけど
一応観てみようかな…
その後私はフィロソフィー戦隊で徹夜してしまい
翌日面接にばっちり遅刻した
外伝です




