着々と準備は進んでるんだが①
師走の終わり。色々と手続きを進める有栖川。
胡桃沢に共有しつつ順調な様子。
12月23日
無事審査が通り事務所の契約手続きも完了した。
とめやも先日閉店に至り、今は厨房の撤去など貸し出し区画を空にする工事が行われてる真っ最中である。
俺は空になった店舗に何回かお邪魔して
レイアウトや搬入備品などの見積りをしていた。
それほど大きく無い区画だが、カウンターと椅子、打ち合わせスペース、PCやプリンターなど必要な機器を設置してもまだ少しスペースにゆとりがあるな…
1人で考えを整理していると、店内に入ってきた胡桃がこちらに近づいてくる。
「ごめんなさい、また遅れました」
「遅刻多いなお前」
「遅刻は悪、時間泥棒ですよ?気をつけましょうね?有栖川さん」
「なぜ俺がしたみたいになってる。その通りだから気をつけようね」
今日は、ファミレスで打ち合わせだ。
色々進めてはいる中で、共有事項もあり時間を貰った。卒論の提出が1月の頭だからどうと思ったんだが、卒論は大体目処が立ったそうだ。
「急に呼び出してすまんな」
「いえ、いいです。卒論も概ね完了しましたし。今月は有栖川さんの相手あまりできなくてごめんなさい」
「相手にされてたのか俺は」
「寂しかったでしょ?無理しなくていいですからね」
「はいはい。今日は進捗確認と店舗の詳細について相談したくてな」
スルーして話を進める。
ここのところ作業は殆ど俺1人で進めていたので、現時点での進捗確認をした。
定款の作成、資本金の払込、登記申請、印鑑届出、法人設立届出、保険関連と年金の届出、一通り済ませた事を伝え、後は各所からの確認完了待ち。来月中旬には無事始められそうだが、事務所のレイアウトが1月末ぐらいになりそうなので、仕方無し2月1日を開店目安として進めることにした。
「ここまでで質問あるか?」
「ないです。ありがとうございます」
注文していたフライドポテトと唐揚げが猫ロボによって届く。
この猫ロボ、凄いんだけど俺の料理を載せたまま知らないおじさんに突進を繰り返してた事があり、まだ少し信用してない。
特段質問もなく聞いていた胡桃沢だったが、ここで一つ質問を受ける。
「あの…諸々やってくれてありがとうございました。ちょっと気になったんですけど…実際は働く事になった時…私って何すれば良いですか?」
「なんだ胡桃沢、働いてくれる気になったのか」
「なんか社長室でネトフリ見てるつもりでしたが、諸々の諸経費や実際に事が進んでるのを見たら、失敗しないように出来る事はするべきだなと。働いたほうがいいなと。」
「最近寒いからな…熱でも出たのか?確かおじやあったぞさっきメニューに」
タブレットを操作したぽちぽちする。
「別に調子悪く無いです。少し頑張りたくなったんですよ」
「じゃあ、この後病院に連れて行かなくてもいいんだな。助かる」
「そんな重症かな私の怠惰って!?」
「胡桃沢にやってもらう仕事ねぇ。宅建も取ってくれたし、普通に不動産周りはがっつり内見〜契約までやってもらえると嬉しいな。なんだかんだ暫くは1番単価の高い仕事は仲介になるだろうし」
「わかりました。実際宅建の勉強してて少しやってみたいと思いましたしやりますよ」
「OKだ。じゃあ次は店舗営業に関して何だが、まず休業日なんだが、これは水・日でいいか?」
「えっ…土曜日はお仕事ですか?なぜですか嫌がらせですか??」
「不動産仲介で休日定休はないだろ。まあでも俺も日曜は休みたいから間をとって水・日だ」
「まあ仕方ないですね…土曜日も働くか…」
「便利屋もどちらかというと土日の稼働が多い気がするんだよな。ここは最悪適宜休日出勤という事で」
「頑張ってくださいね」
「そんな笑顔で見ても無駄だ。場合によってはお前も出ろよ」
「次に収入源の仲介の報酬はまあ仲介手数料原則0.5ヶ月だな。あとはオーナーからの広告宣伝費で」
「広告宣伝費ってなんですか?」
「まあ平たくいうと、物件に設定されてるオーナーからの報酬だな。でも名目上報酬を払えないから、広告宣伝費としてお金を貰うんだ」
「何から詐欺みたいですね」
「慣習だよ慣習。賃料の1ヶ月前後が多いな。だから10万の物件成約したら仲介手数料で5万+広告宣伝費で10万で15万ぐらいかな。」
「へぇーまあ悪くないですね」
「ファミリー物件や広告宣伝費2ヶ月なら1回で50万近く稼げるからな。都心なら営業マン一人当たり、月200万ぐらいが平均の売上だったはずだ。俺は200万〜300万で稼働する予定だ。胡桃沢も少し稼いでくれるとありがたい」
「なんかそう聞くとそこそこ稼げそうですね」
「まあ家賃とか交通費とか保険とか諸々差し引くと意外と残らないのが現実だ。サボったらサボった分だけ売り上げが落ちるからな。ハードワークだよ」
そう。常にノルマに追われながら働き続けなければいけないのが仲介のキツイところだ。
「ええと…次にレイアウトなんだが、こんな感じでいいかな?」
業者とのやり取りでもらった図面とパース図面を見せる。
「…この奥の小部屋はなんですか?」
「社長室」
「えっ!?せまぁ!重罪人の独房ですか?」
「我慢しろ、本当はいらないと思ったんだがお客さんの前でサボられてもよくないからな」
「個室あてがってくれたのはありがたいけどサボり前提だからですか…。まああるだけマシか!カウンターがあって打ち合わせのテーブルがあって、裏側にパソコンとかですか。シンプルですけど了解です」
「じゃあレイアウトもOK…不動産周りはもう大丈夫かな。業務に必要なシステムも宅建業界の免許番号取れたら申請しておく。1月中には間に合うだろう」
「何ですか必要なシステムって」
「業者用の物件検索サイトだよ」
「ほぇーよくわからんが了解です」
「まあやる時に説明するから。じゃあ仲介周りの確認は以上。あと便利屋の方なんだけど、依頼料ってどうする?」
「依頼料ですか?」
ポテトを食べながら聞いてくる。
「基本料は人工考えると1時間あたり2000円、業務によって+αと思ってるんだけど」
「安くないですか?バイトに毛が生えたような」
「でもイメージ草むしりとか結婚式の人数合わせとかそんなんだぞ。あんまり高くしても来ないと思うんだよな」
「不動産の人脈作り+片手間ですからね。まあそんなもんかなぁ」
「OK。じゃあその前提で看板とか予算組みしとく。ついでホームページとSNS作成の話だ。ネット集客がかなり大事だからな。ホームページ作って、その後SNS回してホームページからお客さん取ってくぞ」
「ホームページ作成ですか…有栖川さんが作るんですか?」
「簡単なのなら作れるけど、きっちりしたのがいいから業者に頼むよ」
「どれくらい?」
「安いとこで20万位かな。特に拘りなければ俺が進めとくけど」
「ごちゃごちゃしたよりシンプルな方がいいですね。私の好みだと」
「安心しろ俺もそっち派だ。年明け何回か業者と打ち合わせあるから来てくれよ」
「了解です。1月10日以降なら卒論終わってほぼ空いてます」
「おう。まあレールは作ったし諸手続きも概ね完了待ちだから。あとは1月はレイアウト工事とホームページぐらいかな」
「助かりますねぇ」
「そういえばお前、年末年始は実家に帰るのか?というか…今更だが胡桃沢って1人ぐらいだけどどこの出身なんだ?」
会ってから数ヶ月経つが、そういえば聞いた事がない。知るタイミングもあったのかもしれないが、関係は歪にしろ女子大生のだいぶ年下という事でなるべくプライベートな事は踏み込まないようにしていたからだ。本来俺とは関わりを持たない人種。探られても嫌だろうが、話の流れで聞いてしまった。
「私ですか?出身東京ですよ」
「そうなのか、じゃあ東京出身なのに一人暮らしさせて貰えてるのか」
出身こっちで三茶で1LDKとかなかなかの贅沢っぷりである。こいつ、選ばれ者か実は?




