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内見ってワクワクするんだが②

内見する2人。

担当の小笠原さんがなんだか頼りなくて…


店舗は駅の側の茶沢通り沿いの路面店。

11時少し前にに着き入店した。

いらっしゃいませー!元気な声が店内に鳴り響き出迎えられる。


「予約していた有栖川です」

「ありがとうございます。どうぞこちらへ」

スムーズにテーブルへ案内される。

ガラス張りで店外から見える設計だ。

オレンジの照明と木の温かなデザインで明るい店内である。


「本日、担当します小笠原と申します。」

小笠原花と、書かれた名刺を差し出される。

小笠原さんは胡桃沢と年齢は変わらないかむしろそれよりも年下に見えた。小柄で童顔だ。

新卒だろうか。丁重に受け取り、椅子に腰をかける。


「今日はご来店頂き誠にありがとうございます!」

「いえ、こちらこそよろしくお願いします。」

「えっと、内見の予約を2件でしたよね?柳瀬ビルと…えーと」

手元のノートPCをカタカタして探している様子。


店長らしく人が来て  

「申し訳ありません!!お茶も出さずに、お召し上がり下さい」

本来はお茶を出すはずが忘れていたらしい。

「す、すみません!どうぞ召し上がってください」


「あの、急いでいないのでゆっくりで大丈夫です!

お茶頂きます」

なにやらテンパっているようなので、少しゆっくりさせてもらおう。さっきコーヒーともゆっくり飲めなかったし。


「お待たせしました。柳瀬ビルとHLビルですね。

条件だけ再度お伺いしても宜しいですか?」


「そうですね、一応まとめてきたので…今小笠原さんのメールにお送りしました。」

「え、ありがとうございます。」


【希望概要】

業種:不動産(仲介/管理)+その他

敷金2ヶ月迄

礼金0ヶ月(最悪1ヶ月まで)

賃料25万迄

保証委託料1ヶ月

火災保険.鍵代等10万迄

初期費用合計150万目安

10坪(30〜40平米)1階店舗型


軽飲食調理可能

路面から視認性良好

間口は横広いと良い


大体賃料は月の純利益の20%以下が目安だ。

俺と胡桃沢が合わせても500万の売上がせいぜいだろうから25万が限界だ。

とはいえ、BtoC客商売なので、ケチってお客さんが寄りつかないところにするなら多少捻出してでも集客できるとこの方が良い。


不動産仲介は都心だと月の売上200万程度が平均だが、俺が本気を出したら1人で500万は出せる。命を燃やす青天井残業ありきだが。

胡桃沢がどれだけ働くか知らんがまあぐうたらを自覚しつつ、これまでの様子を見てると俺に働かせて家でぐうたらなんて罪悪感で多分居た堪れなくなって多少は働くだろうから。25万はおおよそ妥当と言える。


「私にも送ってくださいよ」

胡桃沢がそっと耳打ちしてくる。

「すまんすまん、今ラインで送る」

「ありがとうございます」


「あれ…軽飲食調理って何ですか?」

「いや、何でも屋だし。タピオカでも売ろうかと」

「本気で言ってますか?」

「半分マジだ。タピオカは一例だが路面店だし、適当にホットドッグとか極めてコーヒーとセットで売るとか。」


「なるほど、立地次第ですが確かにありですね。」


「どちらかというと原価が安く製造保管が容易なドリンクが最高だ。そのバーターでなにかおやつ的なもの売れんかなと」


「まさかそんな事考えてたとは」


「勿論サブのサブよ。あくまで不動産がメイン、便利屋がサブ、その片手間で今のだ」


「どうせ不動産は繁忙期以外は大してお客さんも来ないだろうし。1月〜3月、他の仲介が忙しくて断った客拾って稼いでくるからら4月以降その売上で検討してこう。」


「分かりました。」

素直に聞き入れる胡桃沢。

その間俺たちの会話なんか聞く余裕はなさそうに

俺の条件表を確認する小笠原さん。


「えと、条件は確認しました。では柳瀬ビルとHY早速内見に向かいましょうか?」

「はい。ではお願いします。」

どちらもここから歩いて10分もかからない。それぞれ歩いて向かう事となった。


道中、先頭に小笠原さん、後ろに俺と胡桃沢が続く形となった。柳瀬ビルは茶沢通り沿い。歩いて北に向かって、俺の家方面だ。


スマホの地図を見ながら小笠原さんは歩いていく。正直かなりたどたどしい。

「大丈夫そうですか?」


「はい。こっちであってます。」


「新人さん、って感じですね。」

「ああ間違い無いな。まあ見れさえすれば俺も大体わかるから」


柳瀬ビルの前に立ち、小笠原さんが内見用のキーボックスを探す。どうやらキーボックスの中に鍵が入っていて、暗証番号で開けるようだ。


…なにやらガチャガチャしてるけど一向に開く気配がない。


「番号開かないんですか?」

「は、はい。何でだろう。スマホの画面を見てみると柳川ビルと書いてある」


「これ柳川ビルじゃないですかね。」

「えっ…嘘、本当だ…。」

「今日内見できないって事?」

「管理会社は繋がりますか?」

「すぐにかけます!申し訳ありません!」


少し離れて電話かけて確認している。


「…新人ですね」

「ああ。多分あの様子だと見られないな」

「そんなー」

「まあまあ」


「申し訳ありません!今日営業してなくて繋がりません…昨日聞いた番号別の柳川ビルだったようです。ほんとうにすみません!」


何度も何度も頭を下げて謝られた。

ポニーテールがひょこひょこしている。


「分かりました。じゃあ柳瀬ビル大丈夫です。HYビルに行きましょうか。」


「本当にすみません。次はきちんとご案内しますから。」


「はい。宜しくお願いします」


そういってまた駅方面に戻る事となった。

小笠原さんはスマホを見ながらあるいている。

歩きスマホ危ないぜ。あまり意識がないので、

そっと俺が少しだけ前に行く形にした安全を保つ。


「あっー!」

大きい声で小笠原さんがまた慌てだした。

そろそろ見慣れてきたな。


「ど、どうかしましたか?」

「本当にすみません!2軒目もHYビルじゃなくてHMビルという横のビルで案内予約取っちゃってました!」


「そうですか…、今日は見られなそうですか?」


「調べたんですが、HYビルは内見の時管理会社の立ち会いが条件の物件なんですが…こちらも今日はお休みで、予約取れなそうです。。」


2タテされた。これが贔屓のチームじゃなくて良かった。


「と、とりあえず一回事務所戻って他の物件とかないか確認しませんか?」


空気を読んだ胡桃沢の一言。


「は、はい。すみません」

「全然怒ってないから大丈夫ですよ」


「え、はい。すみません」

もうすみません以外喋れなくなっとるな。

小笠原さんの横に位置するようにして話しかける。


「俺もね前職は仲介業者だったんだ。」

落ち着かせるようにゆっくり語りかける。


「あ、、やっぱりそうなんですね。希望業態見ました」


「賃貸だけど、新卒の時小笠原さんと同じで内見手配ができてなくて、わざわさ地方から内見のために出てきたお客さんに対して、部屋を見せられない事があった。」


こくこくと頷いている。


「別に仕事で手を抜いてたつもりも、お客さんを蔑ろにしてたつもりもないんだけど、ミスしちゃって。お客さんは怒って交通費返せと言われてしまったよ。」


「え…」


「小笠原さん今日の俺らの交通費返してくれる?」


「えっ…」

慌てふためき始める。


「ちょっと有栖川さん、私たち歩いてきて来てるから交通費なんかってないじゃないですか!」


「冗談だよ。別に交通費かかってないし何にも請求したりしないよ」


「す、すみません…」


「あー小笠原さんいじめないでください!気にしないで下さいね。この人ノンデリカシーなので」


「すみません。ふざけました。その時は謝罪として仲介手数料割り引いて、その後すぐに他の仕事をより優先して死ぬ気で物件調べて、結果お客さん好みの物件を見つけられて成約した。終わった後菓子折りも買って、お詫びしたら最後は感謝もされたよ」


「何が言いたいんですか?」

胡桃沢が割って聞いてくる。


「ミスをしない工夫は大前提だけど、もしミスしてもその後責任を持って、自分にできる事を精一杯やり続けたら大概は許してくれる。お客さんだって会社の人だって。無理な時もあるかもしれんが、そっからは上司がなんとかするろ。問題はミスした時、投げやりになったり、他人せいにしたりする事。それはミスよりも下手したら愚かだ。仲介は信頼ありきだから、そういう不義理は周りから見放される」


「なんで小笠原さんに先輩面してるんですか」


「小笠原さんずっと切羽詰まってる感じだから、なんか心配になった。余計なお世話かもしれないけど落ち込まないで欲しいです。業界の先輩としてね」


プルプルしてる小笠原さん


「有栖川さん…私この仕事多分向いてないんです…。いっつもミスしてるし」

どうやらミスはよくしているらしい。


「何年目なの?」


「1年目です…」


「じゃあまだまだじゃないか。見限るのは早いと思うけど。もうちょっとリラックスできるといいのかもなぁ。今迄はミスした時どうしてたの?」


でも胡桃沢と比べると全体的に幼く感じるな。

胡桃沢って顔が大人っぽい訳じゃないけど落ち着いてる方なんだな多分。


「謝罪して、怒ってたらすぐに店長が対応してました…」

まあ、まだ一年目でこの様子じゃ二次炎上を恐れてすぐに火消しに入るか。


「じゃあ、俺らでミスした時のリカバリーの練習するか」


「え…?」


「ミスした時に、自分でリカバリーできるって自信つけば普段ももう少しリラックスして仕事できるからミスも減るかもしれないだろ。自信にもつながるし」


「その理論は新しいですね」

胡桃沢が感想をこぼす


「でも、リカバリー経験がないって今後もあれだしさ。俺怒ってないし。リカバリーの練習だ」


「なんで有栖川さんが小笠原の指導してるんですか、迷惑ですよ絶対!小笠原さんいいですからね無視して」


「いえ…やらせてください!私もいつまでも店長に助けてもらってばかりではいけないので…。そう言っていただいてありがとうございます。」


少し考えている様子。間も無く店舗に到着する。


「じゃあ…明日までに私が全力で希望叶えられるような物件見つけてくるので…、1日頂けませんか?明日また必ずメールでご連絡します。可能ならそのまま内見します。」


「わかった。すみませんが待ってます。

胡桃沢明日時間あるか?」


「はい、私も明日は大丈夫ですよ」


「明日もお時間いただいてすみません」


「全然気にしないで下さい」


「いや、でもすみません。」

やれやれ大丈夫なんだよなぁ。


「時間ならありますよ。俺、無職なんで」


返事に困りすぎて、今日一小笠原さんがテンパってた。

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