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内見ってワクワクするんだが①

12月上旬、事務所探しをする2人。

10時ですら遅刻する胡桃沢。

待ち合わせは三茶のマックの前10時。

もう時間を過ぎてるが胡桃沢は現れない。

LINEも未読のままだ。死んだか?香典だせませんよ?


12月上旬今日は事務所兼店舗の内見をする日である。卒論で忙しそうだが、来月からの稼働に向けてそろそろ事務所の契約進めたく胡桃沢に時間を貰った。

事前に三茶の仲介業者には、俺が内見の予約をしてる。

朝マックで軽く話してからという事にして、予約は11時からにしている。

余裕がまだあるとはいえ、食うならゆっくり食べたい。

今日のポイントをスマホのメモにまとめていると

胡桃沢の姿が見えた。走ってこっちに向かってくる。


「ごめんなさい〜遅れました」


今日はもふもふすぎるでっかい起毛の白ブルゾンに

マフラーをしている。

確かに寒いけど、もふもふすぎて羊のようだ。

とりあえず香典はいらないようで良かった。


「寝坊か?一言LINEくれよ」


「いえ寝坊ではないんです。このアウター着たかったんですけど見当たらなくて探してたら遅れちゃいました」


それで遅刻とは微妙に舐められてる気もするが。


俺が失った10分の引き換えがもふもふ胡桃沢を拝めるというのは正直負けトレードなのだが、争うとより傷が深くなりそうなのでここで利確するぜ。


「もふもふだな」

「可愛いでしょ?めっちゃあったかいですこれ」

腕の起毛部分をファサファサと見せつけてくる。

尚、俺はエアコン無しで生活してたせいで、

寒さに異常に強くなったので、さほど羨ましくはない。


「胡桃沢って意外と服好きだよな。ズボラな人って服に無頓着な事が多いけど」


「…そうですね。好きです。」

なんか歯切れが悪いな。別にいいけど。


「まあいいや、注文しよう」


俺は朝マックでコーヒー飲むのが好きで詰み期間中も頻繁にきていた。出社前の時間を活用し新聞読んだり、PCで作業するビジネスマンの中で飲む、焦る必要なんて何一つない成功者の佇まいでコーヒーを楽しんでいた。実際には失うものが無さすぎて、最早焦る必要が無くなってただけなんだが。生と死は紙一重とはこの事かな?


「私はソーセージエッグマフィンとカフェオレで」

「俺はソーセージマフィンとブラックコーヒーで」

「上司より良いもの食べちゃいけないから気を遣ってエッグ抜くとかいいですからね?」

単純に資金力の差だ。朝飯で500円は超えられん。


「ああ、そうだ。俺は気が使えるんだ」

「流石社会人の先輩です!節約してて偉いですね」

バレとる


注文直後ほぼノータイムでキッチンにいた、感謝のオーダー提供1万回をこなしたであろう熟練おじさんアルバイターが、音を置き去りにする速さで2人の商品を作り上げ提供してきた。

気のせいかもしれないが小さい声で「もう、後には引けんのよ」って言ってた気がする。ネテロ店員だ。


めっちゃすげえと言う気持ちと、早く動いても時給変わらないんだからむしら搾取されてるだけでは?という気持ちが同時に湧き起こる。


「2階席行きましょう」


俺がおじさんの速度に思いを馳せているとさっさと上にいって、席を確保していた。


窓際の席を確保して胡桃沢が一言。


「あのおじさんの速さやばくないですか!」

こいつも感動してたっぽい。良かった、

あれにノーリアクションはちょっと寂しい。


「熟練の技というやつだろうな。俺もびびった」

エッグマフィンを大きい口を開け頬張りながら

胡桃沢が聞いてくる。


「何事も極めるってのはあるもんですねぇ。

有栖川さんにも不動産業に熟練の技はあるんですか?」


「熟練ねぇ…そんなんないけどお客さんとやたら仲良くなることは多かったな」

「えーそうなんですか?神接客ですか?」


「いやそんなつもりはないんだけども。仲介ってお客さんにまず信用してもらう事が大切だからな」


「ふーん、じゃあ信用させて稼ぎ良い物件騙して借りてもらうんですか?」


「世の中の仲介業者に謝れ…といいたいとこだが、そういうやつも多いな」

「正直不動産はフィクションですか」

「いや、俺も正直不動産寄りだぞ。金より大切なものはいくらでもあるからな」


「えー有栖川さんに金より大切なものあるんですか?」 


「俺借金持ちだが、銭ゲバキャラなのか?」


金より大切なものなんかいくらでもあると、割と本気で思うが、いざ問われると言葉にするのが難しい。


「なんだろうな。思いついたらいうわ」

「うわーはぐらかされたー」

リアクションをとりつつ、食べ進めている。

一区切りついたので、今日の内見の話を始める。


「候補は2つ、ラインで今図面を送った。やっぱ、集客性、つまり人通りと動線、と明るさを大事にしていきたいな。」

早速スマホを見る胡桃沢。


「一つ目が茶沢通り沿い、二つ目が駅前の仲見世通りですか?」

茶沢通りは三茶から下北の北側に伸びる商店街。

仲見世通りは、三茶駅の真上にある小さなアーケードが立ち並ぶ区画だ。

一つ目が柳瀬ビル、二つ目がHLビルという名前である。


「どっちが本命ですか?」

「柳瀬ビルかな」

「なんでですか?」

「俺が通勤しやすい」

「ふざけないでください」

「それを省いても柳瀬だな」

「なんでですか」

「シンプルだが賃料だな。どちらも10坪で1階だが賃料が柳瀬が月15万に対して、HLは月25万だ。この差は大きいだろう。駅前なのは良いけども、10万差は大きい。」

「それは大きいですね…」

「まあ実際見てみないと分からんけどな」


胡桃沢が遅刻したせいでもう45分である。


ゆっくりとコーヒーを飲む時間はなくほぼ一気飲み。

あっつぅ!罰ゲーム??胡桃沢のせいだ。


ちらっと見ると胡桃沢も同じくあっつぅ!していた。

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