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三題噺もどき4

クリスマス

作者: 狐彪
掲載日:2025/12/25

三題噺もどき―ななひゃくきゅうじゅうはち。

 




 外は雨が降り始めた。

 これが雪にでもなれば、ホワイトクリスマスになったのだが。

 そう簡単に事は進まないという事だろう。何でもかんでも思い通りにはいかないのだ。

「……」

 雪が降れば、景色は真っ白に染まり、白地図を広げているような気分になるだろう。

 歩いた後には足跡が残る。雪を固めて何かを形作ったり、洞穴を作ったり。

 今朝がた―正確には夕方だが―いつもと変わらずはしゃいでいた子供たちは、それ以上にはしゃぐだろうに。

「……」

 そういえば、今日は平日にも関わらず、制服ではなかったが……もう冬休みに入ったのだろうか。ランドセルも背負っていなかったようだし、そうかもしれないな。

 クリスマス当日に、冬休みを迎えると言うのも、いいのか悪いのか。

 気分的には、いいかもな。クリスマスプレゼントをもらって浮かれたまま、その気分のままちょっとした休みに入れるのだから。それでも、宿題はあるのだろうけど。

「……」

 しかし、彼らのところにサンタクロースは来たのだろうか。

 赤い帽子に赤い服で赤いブーツを履いて。真っ白な髭を蓄えた少し丸いサンタクロースが。

 まぁ、きっと。彼らはいい子だろうから。

 生憎、願い通りにとはいかないかもしれないけれど。そこは大人の事情だろう。

「……、」

 ぽたぽたと窓を叩く雨音を聞きながら、静かな雪に変わればいいのにと少し思う。

 冷えるのは目に見えているが、今は、その雨音が少しうるさい。

 今日はせっかくのクリスマスなのに。

 我が家にはサンタは来ない。

「……」

 今日には忘れると思っていた。

 今日には元に戻ると思っていた。

 今日にはいつも通りになると思っていた。

「……」

 もちろん、それなりに、今まで通りに戻って入る。

 起きてベランダに出て、街を眺めた。

 仕事をして、昼食を摂って、家の従者と一緒に散歩に行った。

 帰宅して、仕事をして、休憩時間にはいつもより少し豪華なショートケーキを食べて。

「……」

 そして、仕事をして。

 ぼうっと意識が逸れてくると。

 雨音が響くのと同じように、昨日の事が思いだされて。

「……」

 訳が分からないほどに、何かが抜け落ちたような感覚になった。

「……」

 アレにされたことを思い出してみても、そんな気分になるような関係でもないはずなのに。

 どうしてこうも、惜しいと思ってしまうのだろう。

 ただの、悪友のような奴でしかなかったのに。私の記憶を逆撫でするようなことをしてきたのに。おかげで、家の従者にも、唯一の家族にも、いらぬ心配をかけてしまったのに。

「……」

 何でこんな気分になるのだろう。

 あの真っ白な亡霊が、どうしてこんなにも引っかかるのだろう。

 挨拶だなんて言ったくせに、それらしい挨拶もせずに消えたあの亡霊が。

「……」

 訳が分からないな。

 やはり、何でもかんでも思い通りにはいかないらしい。

 ―目の敵のようにしか思っていなかった、アレが消えたことが、こんなにも引っかかっているのだから。

「……」

 そのうち、忘れるだろう。

 もう何度歳を重ねたのかも分からないほどに生きているのだ。

 忘れる記憶なんてたくさんある。忘れられないのは、二人で生きてきた記憶くらいだ。

「……ご主人」

「……」

 声のした方を見れば、記憶に残る大人の姿ではない、小柄な青年が立っていた。どちらも本人なのだけど、身長が変わるだけでこうも印象が変わるかと思ってしまう。成長というのは恐ろしいものだな。

「……お風呂、溜まりましたよ」

「……あぁ、」

 もう、そんな時間になっていたのか。

 今日はなんだか、いつも以上にあっという間に終わってしまうような気がする。

「……クリスマスですからね」

「……そうかもな」

 昨日の事は、少し忘れて。

 ほんの少し豪華な食事をして。

 クリスマスらしい雰囲気を楽しむとしよう。





「……また大量に」

「興が乗りました」

「……まぁ、食べきるからいいが」

「はい。どうぞ召し上がれ」












 お題:白地図・ショートケーキ・ブーツ

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