暗殺からの大乱闘
地球連合のやりすぎ感溢れる作戦を潰そう。パラドクスに乗り込みコロニーを出る。さてどう混乱させるかだが。
「隊長と大砲だけ潰したら混乱するんじゃね?」
「面白い提案です。パラドクスならステルスで姿を消して接近できるでしょう」
「こういうゲームやったことあるぜ。忍び寄って一撃必殺だ」
機体を透明化させてゆっくりと敵に接近する。これマジ? バトルフレームに対して大砲がでかすぎだろ。
「ハイパーバスターキャノンはどう壊す?」
「モニターに設計図を出します。エネルギー炉を破壊するか、発射口を潰しましょう。もしくは逆流するようにすると、ドッキリするかもしれませんよ。心臓が止まるほどに」
「いいね採用。どうやる?」
「パラドクスで近づいて、ナノドローンを侵入させましょう。ハッキングしてエネルギー炉の制御回路に侵入。発射信号と回路を改変して、発射時に逆流を誘発します」
「りょーかい」
ノイジーの的確なナビによって、敵の少ない場所を通りながら進む。本当に敵はこちらを認識できないんだなと実感する。
「マジででっかい砲台だ。船ですらない。シンプルすぎる」
「敵機体が張り付いていない場所を発見。そこから指先にビームソードを出してください。出力は弱めで、ただ切れ込みを入れるようにです」
「逆に難しいな」
威力が大きすぎると破壊してしまうし、敵に気づかれる可能性が高くなる。想像よりも繊細な作業だ。そーっとそーっと、指先に細く長い刃を形成。
「ストップです。ビームをしまってください。ナノドローンを潜行させます」
ビームに関しては調整の幅がすごいな。もっとできることを試すべきだと痛感した。この機会にできることを増やし続けよう。
「ミッション完了です。素晴らしい。まるで機械のような正確さです。私の同類までもう少しですよ」
「ほほう、俺がコンピューターであるAIと同格だと」
「はい、いずれ私に追いつけるでしょう」
大砲から離れて、隊長機へと向かう。敵は5機。一定間隔で横に並びながら、ゆっくりと巡回している。
「いいねえ、マシーンのように仕事をする男。かっこいいじゃないか。追いつくだけじゃなくて、追い越してやるさ」
「500年後にお待ちしております」
「AIに寿命がなくてよかったな。さてさっきの応用といくか」
隊長機の背後を取った。右手に薄く、威力の高い刃を作る。さっきの応用だ。敵が探知できないギリギリを見極めて出力を上げていく。
『いいか、気を引き締めろ。この任務はコロニー同盟に大打撃を与えるために必要なのだ。終わったら昇進も期待できる。励めよ。死ぬのはどうせコロニーの宇宙人だ。せいぜい我らのボーナスになってもらおう』
『了解! 殲滅して気分よく凱旋といきましょう!』
『その意気だ。今日この日より、ネクサスは我々のものだ!』
「ところがそうはいかないわけだ。ビーム貫手!」
するりとコックピットを貫き、あとは音もなくその場を離れるだけだ。
「生命反応消失。今のオーナーは最高に輝いていますよ。熟練の暗殺者もかくやというところですね」
「いいぞもっと褒めるがいい。気分よく次の隊長機にいくぜ」
「超イケてるオーナー、ついでに通信傍受しておきました」
「ナイスだ、超イケてるAIよ」
素早く離脱してもう1機いるはずの隊長機へ。迅速に行動しよう。ここは敵地だ。
『隊長? 急に停止してどうされました?』
『おい、隊長機からなんか火花が出てないか?』
いまさら気づいたようだ。なるほど、停止しちまえば違和感が出るのね。参考にして次にいこうじゃないか。
「大砲のブースターチェック中のようですね。今度はどんな手段でいきますか?」
「俺の世界に有名な暗殺ゲームがあってさ」
「楽しそうな話題ですね。続けてください」
「そいつはあらゆるものを利用して暗殺するんだ。たとえばブースターをチェック中の隊長が、誤作動の噴射に巻き込まれて焼け死んだように見せかけたりな」
「乗りましょう。ハッキング終了。いつでも誤作動いたします」
隊長機は複数の随伴機と大砲のチェックをしている。うまいこと台座のブースター部分に近づくのを待ち、ノイジーに合図を出す。
「今だ!」
隊長機だけが青く美しい炎に飲まれて消えていった。
『うわああああ!?』
『隊長!? 隊長!!』
『おい何やってる! なんで作動させた!』
現場は大パニックである。こうもピタリとハマると楽しいな。
「はっはっはっは! よーし乗ってきたぜ。次のルートはどこだ?」
「次はコロニー盟主の娘が乗っている軍艦を狙う一派です」
「クローンのDNAサンプルがいる船だろ。絶対に止めるぞ。ブーストオン!」
全方位ディスプレイに映る暗黒の宇宙を駆ける。ハルカ・ステラヴィスはコロニー同盟の盟主の次女。ノイジーのデータベースでクローン候補の筆頭に挙がった女だ。銀髪ロング、身長160cm以下、頭脳明晰でパイロット能力まである。こんな上質な素材を、地球連合のクズどもに潰されてたまるか。
「もうじき発表会が始まります。モニターに出しますか?」
「頼む。ハルカは?」
「すでにコロニーの中です」
「それでも地球連合は軍艦を落とそうとするか。まずは逃げ道を消すってとこかね」
「軍艦2隻、バトルフレーム40機以上。隊長機は2機、特殊装備の高火力型と近接戦闘型が混在。コロニー同盟の軍艦を急襲する予定」
かなり多いな。敵のボスを潰せる機会なんだ、俺でもそうする。されると迷惑だから潰すけど。
「カイザーネクサスとコスモクラフト隊は?」
「我々とは逆側のコロニー外で戦闘中です。同行しているコスモクラフト30機。別の場所の警備に30機。コロニー内はコスモクラフト20機が警備しています。現時点での総戦力ですね。これは脅威と見られても仕方がないかと」
「そっちも敵はかなりの戦力だろう。こっちも敵が多くて面倒だ。半分くらい減らしてくれ」
「了解。ホーミングレーザー砲58門開放。ロックオン完了。発射」
ビーム1発につき1機撃墜されていく。効率的というか、なんかAIっぽいと思うのは俺だけだろうか。
「ビームバトルフィールド展開完了。お好きに暴れてください」
「よっしゃ、邪魔だどきな!」
『ぐあああぁぁ!!』
バトルフレーム・セイバーを盾ごと蹴りで粉砕する。胴体がちぎれ飛び爆散していくが、なんか脆くないか。両肩からビームを連射しつつ止まらず駆け抜けるが、当たったやつは全員貫通して爆発している。
『どうした! 何が起きている!』
『何者かに長距離から狙撃を受けています! レーダーに敵機反応なし! なにかがうわああああ!?』
『そんな馬鹿な……今何か光ってぎゃあああ!!』
「これはこっちの火力が高すぎるのか?」
「その通りです。博士の技術に比べれば、この世界の科学は200年は遅れていますから。健闘している方ですよ」
博士の科学力万歳ということでね。近くにいたセイバーの頭を掴む。さらにもう片方の手で別の機体を掴み、離れた位置の敵に向かって突進。ビームエネルギーをまとわせてぶつけてやる。
『うわああ! 機体が勝手に動く!?』
『こっ、こっちに来るなあああああ!?』
「はいどーん」
4機爆殺! ステルスを解除して乱戦に慣れよう。パラドクスが虚空に姿を現す。紫と銀の機体が輝き、全身からビームエネルギーが溢れ出す。両手から放たれたビームの奔流が、散開したバトルフレームを次々と貫く。
『未確認機が出現! 自陣のど真ん中です!』
『アサシン部隊は何をしていた!』
『アサシン機反応なし。ぜ、全滅しています!』
『ありえん!』
「さあ、あがいてみせろ。俺の糧となれ!」
セイバーの群れは、ビームサーベルとビームガンを装備。こちらに連射しながら距離を詰めてくる。
「遅い!」
すれ違いざまに3機切り裂いて離脱。念の為に背中からビームを出し、機体も爆破しておく。生き残りなど出してはいけないのだ。
『そこの機体止まれ! どこの所属だ!』
「ねえよ所属なんて。他人ごときと仲良くやりたくないんでな」
アーチャーは長距離ビームライフルで牽制し、両肩のロケットランチャーで仕留めるスタイルだろう。
「弾数で勝負か。乗ってやるよ」
周囲にビームを丸めたボールを出す。50個一気に出したら、ノイジーにコントロールを任せるのだ。
「演算よろしく」
「お任せください。AIの本領発揮の機会が来ましたね」
50個が完璧に計算された動きで相手に迫る。敵のビームを避け、確実に追い詰めるのだ。その間に俺はパラドクスを動かす。
『うわっ!? なんだよこれ! ぐがああああ!!』
「そっちばかり見ていていいのかな?」
パラドクスのビームソードが赤の隊長機のコックピットを一閃。光の刃が装甲を抵抗なく切り裂き、機体は火花を散らして消える。
『スナイパー隊がやられた! なんだこの機体!?』
「隊長機アーチャー撃破。残るは隊長機のセイバーと軍艦のみです」
随分あっけないもんだな。せっかくだし接近戦の練習もするか。セイバーはビームソード二刀流と胸のバルカンで攻めてくる。
『応答しろ。お前は何者だ』
「通信をつなぎますか?」
「いらん。死ぬやつと話しても意味がない。俺達は誰にも知られないのだ」
しばらく刃を避けつつ飛び回って訓練に使う。なるほど、隊長機ってのは動きが正確で思い切りもいい。普通に戦うのはお断りだね。
『速い! だが簡単にやられはせんぞ!』
「もう死んでいいぞ。データは取れた」
ビームソードの刃を掴んで握り潰す。ついでにエネルギー吸収もしておこう。
『そんな馬鹿な!』
「おらよ!!」
驚きで一手遅れた敵に殴りかかる。両腕でガードされるが、そのまま腕を貫通して頭を殴り飛ばす。
『どんなパワーだ! だがまだやれる!』
「ビームバリアを敵に張れ。丸く囲むようにな」
「なるほど面白いアイデアです」
パラドクスを守るのと同じように、分厚いビームのバリアが敵を包む。脱出しようとビームを放てば吸収するし、手を伸ばせば手の装甲が蒸発する。
『なっ! どうなってるんだ!』
「ぶっ潰れな!」
そのままバリアは小さくなっていき、敵機体を焼き潰しながら最後には爆発した。
『うがあああああ!!』
「さてあとは軍艦だけか」
「片方は消しておきました」
「仕事が早いぜ」
撤退の準備をしている様子がないな。むしろこちらに近づいているような。
「主砲がこちらに来ます」
「中を突っ切って脅かすってどうだ?」
「可能です。今日はサプライズ精神に溢れていますね」
戦艦の主砲がパラドクスに直撃するが、気にせずビームの中を突き進む。根本まで瞬時に移動して、戦艦のブリッジから見えるように上昇した。
「これから死ぬみなさまごきげんよう! そしてごきげんよう!」
「ダブルミーニングは無理して使う必要がないと進言します」
『こいつどこから!?』
右手にエネルギーを収束。紫の光が宇宙を照らす。
『待て! 降伏する!』
「残念、俺は軍人じゃないのさ。パラドクスを見た以上死んでもらう!」
ブリッジを消し飛ばし、戦艦をビームブレードで解体する。戦艦くらい縦にも横にも両断できるのだ。
「マグロをこういう風にさばくの見たことある」
「夕飯はお寿司にしましょうか」
「いいね。頼んだよ。そんじゃあ消えてなくなれ地球人!!」
最後に両手からビームの渦を出し、完全に消した。ノイジーに生き残りがいないことを確認してもらってから戻る。さてカイザーネクサスはどうなったかな。