ブロッサムブレイドと落とし前
格納庫にリリー専用機がある。色はピンクをメインに、白のアクセントを散りばめたデザイン。流線型のボディは淡いピンクのグラデーションで、関節部や装甲のエッジに白ラインを入れてシャープさを強調。全体的に可愛らしく華やかな印象を与える。大きさはピュアセレナーデと同じくらいだ。
「これがリリー専用機、ブロッサムブレイドだ」
「おおー! かっこかわいい! すごーい!」
「きれいな機体ですね。リリーによく似合いますわ」
2人からも好評だ。みんなで相談して外見を作ってきたから、こうして実物が出ると感動すらあるな。ノイジーがすかさず解説を入れる。
「ブロッサムブレイドは、腕は通常2本がメインで、背中から追加の2本が展開できます。4本の腕を備えた多腕形態に変形可能。当然ビーム・マニアクス・システム搭載です。リリーの超人的な空間認識と反応速度が前提であり、本人だけが好き放題使える機体ですね」
「頭部はリリーの銀髪をイメージしている白いデザインで、赤い目のバイザーだ。ピュアセレナーデと似た感じだな」
「いいねいいね、おそろいっぽいじゃん!」
早速乗り込んでマニュアル映像を見ている。チュートリアルは飛びながらでもよさそうだな。いつものようにビームフィールドで周辺宙域の隠蔽をしてから、リリーの発進を見送る。
「リリーちゃん、ブロッサムブレイド出るよ~!」
背中にピンクのビームウイングが展開される。ビームでできた光る翼のおかげで、圧倒的な速度で前進していく。俺たちも自分の機体に乗り込み発進した。初陣をサポートしてやろう。
「ふっふー、楽しいぞー!」
帰還しようとしている白い機体どもを発見。奇襲に入る。
「ブロッサムブレイドにはビームソードとビーム刀が搭載されている。どちらも実体剣にビームを纏うハイブリッド型だ。背中のでかいビーム刀も合わせて使え」
「了解! 一刀両断よらば斬る! 寄ってるのはこっちですけど」
剣に白とピンクのビームを覆う。宇宙の闇を美しく煌めき突き進む。そして接敵。あっちも気づいたようだ。
『ん? なんだあの機体?』
『ピンク? おいこっちに来るぞ、警戒しろ!』
「遅い!」
3機の白い機体をすれ違いざまに切り裂いていく。すらりと胴体を切断して爆散させ、立ち止まらずに次に行く。
「3機撃破! やってやったぞー」
『味方がやられたぞ! 敵襲!!』
敵部隊がリリーに向けて射撃武器で応戦し始める。流石に反応が早いな。
『モードチェンジだ。さっさと片付けるぞ』
敵機体の目に青い光がついた。例のモードに入ったな。いい判断だ。
「リリー、ビームウイングは移動以外にも使えるぞ。試してみろ」
「あいあーい! ビイイィィムウイイィング!」
光の翼が形を変え、ブロッサムブレイドを覆い隠す。ビームも実弾も全て止める鉄壁の盾へと変わるのだ。もちろんそのまま移動できる。
『攻撃が通らない!? 突っ込んでくるぞ!』
『撃ちながら退け! 無敵というわけではあるまい!』
「無敵なんだなあこれが!」
1チームの中央に移動して、翼を広げて横に一回転。翼がビームソードの役割を果たし、敵陣を切り崩す。
「うりゃうりゃうりゃ~!」
さらに無数のトゲとなって敵機に突き刺さり、機体が耐えきれずに爆発していく。ビームウイングは槍にもなる。これでさらに1チーム撃破。
『近づくな! 近づかなければどうということはない!』
「そうでもないんだぜ~。ビームフェザー!」
翼から膨大な量のビームが広がって、羽のように飛び回り空間を彩っていく。無論だが殺傷能力が高い。普通の機体のビームより遥かに火力は上だ。
『うわああぁ! なんだよこいつ!』
『直接斬っちまえばいいだけだ! 私に続け!』
3機が同時に仕掛けてくる。2機のビームソードを両手の剣で止めた。パワー負けしていないのは設計通りだな。
『もらった!』
「甘いよ!」
最後の1機が飛びかかるが、リリーはそれよりも速く背中のビーム刀を抜き放つ。そのまま隠し腕2本による切り下ろしで敵の頭部も胴体も焼き払った。
『ぐがああああ!!』
鍔迫り合いの状態から、ビームウイングを槍状にして突きのラッシュを放つ。残り2機も穴だらけになり爆散した。
「ふっふ~ん、その程度でリリーちゃんを追い詰めたりはできないのだよ」
『なぜだ! オレたちは無敵のチームになったはずだ!』
『たった1機にいいようにやられてたまるか!』
「火力アップ! ビームクロス!」
両手のビームソードを交差させて火力を増加。そのまま振り抜いて十字の巨大なビームが飛ぶ。
『装甲がもたん! うわああああ!』
「最速で斬る!」
斬撃でまた1チーム沈めていく。残り6機。全機同時に仕掛けてくるが、それでもリリーは余裕の態度を崩さない。そろそろ機体に慣れてきた頃だろう。
『誰でもいい! あいつを落とせ!』
『調子に乗るなよ!』
「斬るよ~斬るよ~、それそれ~!」
敵の斬撃が来るより先に、リリーの攻撃が腕を切り飛ばす。構えるよりも速くウイングで弾き、打撃が来る前に距離を取る。敵よりも認識スピードが速い。圧倒的な空間把握能力と操縦技術によって、リリーの行動は全行程が1段階速いのだ。毎日シミュレーターやらせたかいがあったな。
「これで、どうだー!」
全武装同時展開で一気に手数が増える。攻撃の嵐に対処できずにどんどん撃墜されていき、いよいよ黒い機体、ジェネラルだけとなった。
『まさかこんなことが……だが私がいる! 負けは許されんのだ!』
両肩のキャノンがリリーの機体を正確に狙う。だがそれを察して大きく旋回しながら追い詰めていく。ビームウイングによる高機動で撹乱可能なレベルだろう。
「おおっと、あっぶな~」
オートで光の翼が閉じて、ビームキャノンを吸収してくれる。翼がなくても吸収はされるが、あまり油断されるとひやひやするな。
「油断して撃墜されないようにするんだぞ」
「わかってまーす」
『おのれ、これでどうだ!』
ミサイルをばら撒いてくるが、そこはビームフェザーで潰す。爆風が大きく広がり、お互いの姿を視認できなくする。そこに正確にキャノンが飛んでくる。
「えー、見えないのはずるいぞー!」
旋回して煙の先へ行くも、敵はいない。別の場所からまたミサイルとキャノン砲で狙いを定めてくる。徹底して遠距離戦をするつもりだろうか。
『エネルギー切れを起こせ、それまで逃げ回ってやる!』
「なら一気に距離を詰める!」
驚異的な操作でビームを避け、ミサイルを振り切り、懐まで入る。だが敵のビームソードがやたら太い。
『この火力が止められるか!』
「火力でもパワーでも負けないよ!」
何度もぶつかる光の刃。だが膠着状態は長く続かない。一番長い刀にビームウイングが吸収され、戦艦を丸ごと飲み込めるほどの長さになる。見た目だけじゃない。火力も激増である。
『なんだとおおおぉぉ!?』
「いくよー、ファイナルアターック!!」
回避行動を取るジェネラルを丸ごと飲み込んで斬り捨てる。これにて終幕。全機撃墜だ。
「すごいわリリー」
「よくやった。戦艦は俺に任せて帰還しろ」
「了解! やったやったー!」
さて、こっちはこっちで落とし前をつけさせよう。敵の艦に近づき、ステルスをオフにした。
「音声を繋げ。声は変えろ」
「了解」
「聞こえるか? 科学者ども」
突然の通信に驚いているようだ。このまま俺のペースでいこう。
『何者だ貴様! なぜ我々の部隊を狙う!』
「お前たちはやってはならないことをした」
『やってはならないこと? 貴様、我々の研究をどこで知った!』
『この研究を非人道的だと非難するか? 素晴らしさも理解せず、ただ非難していれば満足か?』
「違う」
『何?』
これは俺個人の問題だ。どうせ伝わらない。誰も理解できない。だから語ってやる。せめて死ぬのはなぜか、答えをくれてやる。
「生体ユニットのことでも、ランカーを拉致したことでもない。そんなことはどうでもいいんだよ。人間なんぞ何人死のうが知ったことか」
『ならば理由は何だ?』
「5位だよ。あいつは、俺のせいで生き残ってしまった」
『しまった? あいつを殺すつもりだったのか?』
「違う。あいつは大人気競技の5位だ。生まれながらに才能と、それなりに見られる容姿を持って生まれた。今も大企業がスポンサーで、年収もあって、いい暮らしをしている。完全な上級国民ってやつだ。そんなやつを、よりによって俺は助けさせられた。この俺がな」
言葉にしていくたびに、俺の中で不快感と怒りが溢れてくる。パラドクスのオーラすらも溢れ出し、俺と呼応していく感覚があった。
『何が言いたいのかまったくわからん。貴様は5位の味方か? 連合の手先ではないのか?』
「俺は誰の味方でもない。正義のヒーローでも、人類の味方でもない。連合でも同盟でもない個人だ。死ぬまで搾取される、底辺の社畜として沈むだけだった下民だ。誰も俺を助けない。なのに、それなのに、俺はあいつを助けちまった。胸糞悪いったらねえよなあ。俺に……上級国民を助けさせたな……」
手のひらにビームボールを作る。俺の怒りに応えるように、解放の時を待つように、静かに凝縮されていく。
「俺の命を、力を、他人ごときに使わせたなああぁぁ!!」
頭上に掲げた力は、この宙域全体を吹き飛ばすには十分な大きさだった。
「落とし前をつけさせてやる! お前らの命で償え!!」
『狂っているのか貴様!』
「理解などする必要はない。求めていない。これがお前らの死ぬ理由だ!」
戦艦など軽く飲み込む大きさの火球が広がっていく。確実に、欠片も残さず消してやる。この世界に、俺の遊び場にこいつらは必要ない。
「地獄に落ちな!!」
『こんな、こんなところで研究が……馬鹿なああああ!!』
科学者たちは爆炎の中へと消えた。これで研究は凍結。俺も少し気分がスッキリして、楽園へと帰還した。




