白い機体を調べよう
謎の宇宙船を追いかけて半日ほど。自分の部屋でだらだらしながら様子を見続けていた。今のところ怪しい動きなし。なさすぎてモニターよりアニメを見ている。今回は異世界転生もの。ファンタジーだ。
「転生も転移もたいして変わらんが、いざなってみると不思議なもんだな」
「ハヤテ様はどのように転移されたのですか?」
「風呂上がりに部屋の扉開けたらここだった」
「ぷふふっ、なんですかそれ。もっとかっこいいのにしましょうよ~」
「俺が選んだわけじゃねえって。脱衣所でパジャマ着るタイプでよかったよ。最悪全裸だったぞ」
「それは恥ずかしいですね……」
俺はまだ運がよかった方なのだろう。もっと過酷な環境に転移とか最悪だからな。などと考えていると、敵の宇宙船が止まる。
「やっと次のイベントか」
この宙域も岩が多いな。隠れるにはいいだろうが、飛び回るなら邪魔になる。そして地球連合軍の戦艦が止まっている。
「また連合狙い? 同盟軍の組織だったりしちゃうんですかね?」
「かもな。おっ、出てきたぞ」
また白いバトルフレームだ。装備が少し変わっている。
「右腕に剣、左腕にビームガンが取り付けてありますわね。両手がフリーなのが特徴でしょうか」
岩陰に隠れながら、戦艦にビームを当てていく。だがブリッジを狙わない。あくまで外壁や先端部分などを撃っている。敵の部隊が出るまで待つつもりだろうか。
「今回は10機くらいいますね~。さあがんばれ生体ユニット!」
前回は機体の性能任せの戦い方に近かったし、今回も接近戦がお好きなようだ。右手についている剣は2本の鉤爪のようになっていて、敵に刺さると簡単には抜けなくなる。そいつを利用して引き寄せ、膝蹴りから左ストレートを打ちつつビームで頭部を破壊していく。格闘技というか、アサシンの出てくるゲームのステルスキルに近い挙動を示す。
「前回より殺意が高い印象を受けます。より破壊を突き詰めているような気がしますわね」
素早く蹴りと斬撃を浴びせて破壊していく。包囲されそうになると、鉤爪で敵を捕獲し、盾として使いながら距離を取る。同士討ちをためらっている機体に接近してコクピットを潰し、牽制でビームを撃つ。
「1機でよくがんばるもんだな」
「もう6機撃破ですか。確かに強いとは思います。けれど、これでは熟練パイロットを使っても同じに思えますわね」
「誰でも熟練者みたいに動けるってことかな? だったら便利だねえ」
だが被弾ゼロというわけじゃない。ある程度破損も見える。やはり1機で戦艦と部隊全部を破壊するには、もっと圧倒的な力が必要なのだろう。
「あっ、目が青くなりましたよ!」
白い機体の目が青く光る。そしてあの獣のような動きが再現されていく。だが今回は前回よりさらに速く、正確に動いている。柔軟に対応しつつ前回の反省を活かしているような気がした。
「学習しているのかもしれませんね」
「賢いんだ。けどやってることは獣っぽいよね」
「これであいつが勝ったら、まーたなんにもわからんままだな。よし、パラドクスで出る」
観察していても状況は変わらない。これ以上の繰り返しは飽きる。いい加減正体を掴んでやろう。
「やつらに正体がバレちゃうんじゃないですか?」
「ステルスで可能な限り近づいてみるさ」
「まだ敵の数も目的も不明です。どうかお気をつけて」
そんなわけで展開が停滞しないように、俺がそっと出撃した。白い機体は右腕が破壊されているが、まだまだ動ける。ビームガンで敵艦を完全に破壊しているところだった。
「もう少し近くに行くか」
パラドクスで近づけば、より正確にノイジーが解析してくれる。戦闘の邪魔をしないように気をつけながら、白い機体を観察しよう。
「白い機体より生体反応を2個確認しました。1個はボディのパイロットのもの。もう1個は頭部です」
「頭部? そういや前回は頭が残っていたな。そっちがメインか?」
さて頭部にいるのは無事な人間なのかな。どんなのが出てくるか興味がある。どうにかして奪うか。いや楽園に持ち込みたくはない。
なら逆転の発想だ。あの宇宙船のハッチに小型ドローンを仕掛けて、内部を見てみればいい。メンテの様子でも見りゃわかるだろ。
「予定変更。小型ドローンを宇宙船に仕掛ける。やつが出てきたハッチを探すぞ」
「了解。ポイントまでご案内します」
やつが戦艦を破壊して戻って来る。ハッチが開くと同時に、そっとドローンを滑り込ませた。あとは帰還して様子を見よう。
「内部映像を出します」
ボロボロになった白い機体が運び込まれている。両腕のパーツは破壊されており、コクピットも剥き出しだ。あれでは死んでいるだろう。
格納庫には白いやつが何機もいるし、機体の量産はできているらしい。バトルフレームの長所を活かしているな。
「パイロットが運び出されていますが、あれはもう生きてはいないでしょうね」
「あっ、ロボの頭が開くよ!」
そこにはチューブに繋がれた人間が格納されていた。頭から胴体まで何本もの配線が伸びていて、まさに生体ユニットという感じ。研究者たちは熱心にデータを取っている。どうやらまだ生きているようだ。
「照合完了。ランキング82位です」
「ほほう、あっちが本命か」
82位は機械が繋いであって、反応がよくわからない。苦しんでいるかどうかすら不明だ。機体から頭パーツだけ外して、頭の並ぶ場所へ移動させている。ああやってメンテしているのか。少し面白いな。
『成長が見られた。やはりあの理論は間違っていないのだ』
白髪でメガネの老人が嬉しそうに何か話している。音量を上げて周囲の会話を拾ってみよう。
『82位ですら奇跡のようだった男が、戦艦を落としたのだ。この研究には価値がある。上もそれは認めるだろう』
『ですがパイロットが死んでいます』
『パイロットなどいくらでもいるさ。何度も言わせるな。人間のアシストに生体ユニットを使うのではない。機械に人間を使わせるのだ』
『了解。データ収集を続けます』
『次の実験までに整備を終わらせておけ。次は2機出して反応を見る』
『もう1機はまだ調整中です』
『調整は私がする。すぐ取り掛かるぞ。研究記録を読み直しておけ。あの男の理論はプロジェクトの鍵だ』
白衣を着た連中が奥へ進んでいく。ずっと会話を聞いていると、まだ5位の拉致も諦めていないらしい。あいつそんな欲しいか?
「引き続き調査を続けます。白衣の男の身元照会も並行して行います」
「頼む。バレないように研究が見たい」
艦内をそっと探索させる。白衣の連中を尾行するのだ。一見普通の廊下だが、軍人のような連中と研究者が混在している。軍の機関である可能性が濃くなってきたな。そしてベッドで寝かされ、点滴などの薬品を大量に投入されて眠っている男の部屋に来た。
『手術は完了しております。プログラムに組み込んでも脳が死にません。こんなことは奇跡です。心が拒否しているのに、戦闘で拒否反応が出ないのですから』
『私も恐ろしいよ。1度はありえんと切り捨てた。今まで限界から諦めていた研究に、急に正解が現れたのだからな』
『ですが危険です。高度に専門的すぎて、我々ですら完全には理解できていない。ブラックボックスを理解せぬままに使っているのと同じです。いつ暴走するか……』
『ジェームズ・スミスの研究はパーフェクトだ。どれほどの苦難と苦悩の日々から生み出されたか検討もつかん。あれは天才の発想だよ。腐らせるにはもったいない』
「ジェームズ・スミス?」
ノイジーが反応した。俺はこちらの有名人も偉人も知らん。だって異世界人だもの。素直に聞いてみよう。
「有名人か?」
「博士の偽名の1つです」
雲行きが怪しくなってきたな。だがどうも博士の協力者ではないらしい。話の流れからすると、偶然論文だか研究データだかを見つけたらしい。
『最早美しさすらある。おそらく血反吐を吐くような苦闘の果てに手に入れた技術なのだろう』
「そうなん?」
「研究サーチ完了。夏は股間が蒸れて痒いなあと思っていたら、なんとなく思いついて論文にした模様」
「しょーもな」
だが博士が人間を部品とはいえ頼るとは思えんな。まだ何か裏がありそうだ。引き続き調べてみよう。




