5位が勝手についてくる
さっさとアリーナを出よう。目立たないように多少早歩きで移動する。背後から5位がついてくる気配がある。マラソンランナーってこんな気持ちなんだろうか。
いくつか扉を開けて進むが、さっきと同じ黒服がうろうろしている。皆殺しは楽しそうだが、目立つし区別がつかない。無関係な人間は殺すとめんどい。
「だめだ。どこも人がいる。敵かどうかわからないと始末もできない。5位を囮にして逃げよう」
「やめてくださいよ!? なんかこう、がんばって役に立ちますから!」
役に立つと言われても、狙われている理由さえわからんらしい。どうしようもないので、表まで連れて行くしかないのだろう。うざい。
「じゃあ秘密の通路とかないの? 従業員用のやつ」
「そこはやつらが張り込んでると思うんだ。君たちも気をつけて欲しい」
「使えない5位だなもう……うわ、ほらこの先黒服がいっぱいだー。さっさと捕まってもらいましょ。わたしたちはその隙に逃げるんで」
「頼むからなんとかしてください。お礼はしますから」
こいつからのお礼なんて欲しくもないし、俺のせいで他人が得をするのが気に入らない。なんとかこの邪魔なオプション外せないかな。迂回して歩くの飽きた。
「仕方ありませんわね。5位さんに手榴弾をつけて突撃してもらいましょう」
「この人もやべえ!? そんなおしとやかに特攻要求しないでください!」
邪魔だなあ5位。リリーがいいこと思いついたみたいな笑顔を向ける。
「5位の人の護衛ですよーみたいな感じで堂々と出ていくっていうのはどうですか?」
「ありだな。一般人用の通路から出れば誘拐はできないだろ。それならどうだ?」
5位はほんの少しだけ悩む仕草を見せるが、すぐに顔を上げる。
「わかりました。協力します。ですから……」
「いたぞ、こっちだ!」
黒服たちが迫る。適当に頭を……いや胴体を連射モードで肉塊にした。こいつらのサングラスがあれば顔が隠れるぞ。
「よっしゃサングラスゲット。これつけていこうぜ」
「スナック感覚で人殺しますねあなた」
サングラスかけると、なんかスパイとかガードっぽい気分になれるから不思議だ。
「あとは5位が目立つけど、近づかれないようにするとベストだ」
「ここに台車ありますよ。これ乗っけちゃいましょ」
「オレを……台車に……?」
そして一般人の多い場所を台車に乗せて通っていく。5位は体育座りだ。
「うわ、なんだあれ……あれ5位のやつじゃん」
「なにあれ、自己顕示欲の塊ね」
「5位の人承認欲求モンスターじゃんウケる」
「ウケるってか滑ってね?」
人目を引くが、黒服は近づいてこない。この状況で誘拐は無理だろう。さっさとタクシーにでも乗せよう。
「はい5位通りまーす。見ないであげてねー」
「人気出したくて必死じゃん5位」
「もっと硬派かと思ってたのに。目立ちたがりなのねえ」
通行人も足を止めてみている。近寄ってこない程度には民度あるらしいのは助かるね。このまましれっと通り抜けたい。
「オレボロカスに言われてない? これ失敗だよね? イメージダウンだよね?」
「死ぬよかマシだろ。さっさとマネージャーなりに電話しろよ」
「イメージが死ぬよねこれ。なんか電話にも出ないんだ。何かあったのかも」
「台車乗ってる人と知り合いに思われたくないんでしょ」
「だったら君らのせいだよね!?」
めんどくさいので警察に電話させる。同時に館内に警報が鳴る。なんか警備員がせわしない。黒服の死体が見つかったかな。
「ちっ、俺たちも逃げる必要があるな」
ちょうど警察が来ている。大きな会場だし、近くに交番でもあるんだろう。なら5位を引き渡せば終わりだ。
「さようなら5位。これがアリーナ名物、5位流しだ」
そっと台車を押すと、ゆっくりと台車が警察に向けて進んでいく。俺たちはそれを黙って見送った。
「そんな名物ないからね。でもありがとう……必ずお礼はするから、ぜひ会社に来て……あっ」
台車が黒服に掴まれて運ばれていく。俺たちはそれを黙って見送った。
「いや助けてよ!? 頼むから! すいません拉致されてまーす!」
周囲がくすくす笑っている。完全に余興だと思われているのだ。めんどくせえなあもう……黒服にスライディングかまして台車を強奪。シオンに向けて強く押す。
「こっちですわ、急いで」
「急いでって言われてもオレが動かしてるわけじゃ……あっ」
途中で黒服に台車が奪われた。だがリリーがタックルして割り込み、台車を持って走る。
「よーしこのまま警察に届けるぞー」
「ナイスだよ。本当にありがとう」
だが黒服が2人、リリーの前に来る。咄嗟に台車を反転させ、離れたシオンへ飛ばす。それをしっかり受け止めて、警察の元へと転がしていく。
「なんだか楽しくなってきましたわ。それっ」
黒服の追跡を逃れ、さらに台車を俺に渡してくる。ここでノールックで背後のリリーに飛ばしてフェイントを掛けた。
「おっけ~い。いっくぞ~」
キャッチしたリリーが近くの警察に運び、5位が事情を説明している。俺たちは素早くタクシー乗り場へ移動し、乗り込んで脱出。宇宙港へ戻ったところで、そっと物陰で転送された。これで追ってくることはできないはず。
「はー……無駄なことしちまった」
「結構楽しかったですよ~」
「ふふっ、まるでアニメみたいでしたわね」
こいつらが楽しいならまあいいか。着ていた服や装飾品をすべて焼却処分しながら、今後の予定を考える。証拠品はすべて消し炭にして宇宙へ。こういうのは徹底することで意味が出るのだ。
「燃やしちゃうのもったいなくないですか?」
「だめだ。あの場で目立ちすぎた。靴まで全部消して、同じものは身に着けない。プロはそういう細かいところから気づいて追い込んでくるぞ」
慎重になりすぎることはない。俺たちの技術は誰にも渡さない。使わせない。足取りを追うことを許可してはいけないのだ。
楽園のありがたみを感じながら、みんなで俺の部屋に集まりごろごろする。
「あんな堂々と誘拐なんて、何があったんですかね?」
「報告。同様のパイロット誘拐と見られる事件が複数存在します」
「ほほう、話せ」
ノイジーがモニターに詳細を出してくれる。だいたい100位以内を狙って、複数の行方不明者が出ているらしい。身代金目的ではない。犯行声明もない。そんな謎の事件だそうだ。
「犯人は黒服なのか?」
「監視カメラと軍のデータに侵入しましたが違います。5位のように会社の護衛を装うパターンが多いようです。犯人は不明です。パイロットそのものに価値を見出していると推測されます」
パイロットを奪うことで、ランキングを操作したいのだろうか。どこかの敵対企業なのかもしれないが、あんまり特定の順位を狙っている雰囲気じゃない。
「これでどういう利益が出るのかしら? 労力に合わない気がするのだけれど」
「5位だけなら6位のせいだー、とか言えるんだけどねえ」
「面白い。しばらく調べるか。どうせ他に行く場所も思いつかんしな」
ノイジーに調べさせておいて、こちらは部屋でのんびりバトルを見よう。犯人が見つからなくても、別に問題はない。俺たちの存在を知るものはいないのだから。
「5位を捕獲しようとした黒服の足取りを追っています。コロニー外に出ていくようですね。追跡にエゴ・サンクチュアリを使いますか?」
「行くか?」
「面白そう! 行きましょ行きましょ!」
「ハヤテ様の判断に従いますが、見てみるのも面白そうですわ」
「バトルはモニターでも見れるか。よし、バレないように追跡だ」
「了解」
こうして宇宙を飛び回り、尾行してみることになった。連中の狙いが何なのか、気になったなら調べてみるのもいい余興である。モニターでバトルを見ながら、ゆったりと次の楽しみを待つことにしよう。




