VSプロジェクトサバイブ
プロジェクトサバイブのコアとなっている白い機体を潰そう。それで終わるとは思えないけどな。素早く周囲を確認すると、部屋はあまりにも広い。ロボットが何十機も大暴れできそうだ。ならパラドクスで飛び回っても平気だろう。
「くらいやがれ!」
右手からビームを放つが、途中の床から大量の床板とケーブルが出て壁になる。着弾して爆発するが、貫通はしていない。
「ちょっと卑怯じゃないかい?」
「攻撃開始」
天井や壁からミサイルタレットが大量に出現し、縦横無尽に追ってくる。ブーストかけて旋回しつつビームで落としていくが、数があまりにも膨大だ。爆風で視界も悪くなる。
「本体を潰す!」
高速でサバイブ本機に突っ込むと、ケーブルと残骸の山が壁になる。
「邪魔だ!」
大穴を開けて通ろうとすると、中ボスの群れがこちらへ突撃をかけてきた。ビームで牽制して、近づいてきたやつに蹴りを入れて距離を取る。背後に迫る機体の腹に右ストレートを貫通させた。壊せないほどの強度じゃない。
「吸収開始」
「なにっ!?」
殴り抜いた機体からケーブルが伸び、パラドクスに迫る。急いでビームで焼き尽くした。こいつらこっちを取り込もうとしているようだ。全方位を囲んでじりじり距離を詰めてくる。
「こちらのデータを抜き取り、あわよくば取り込む算段でしょう。ご注意を」
「一撃でふっ飛ばせばいいんだろ。ビームボールだ。演算よろしく」
「了解。背後はお任せを」
数十個のビームボールを展開。背後をノイジーに任せ、俺は前方の敵の群れに集中する。全機が実体剣の二刀流で突っ込んでくるあたり、ビームは俺に効き目が薄いと判断できているのだろう。小賢しい。ビームの波でまとめて爆破させる。
「ちゃあありゃあああぁぁ!!」
両手から連続ビームを放ち、次々と爆散させていく。背後で爆音が続き、ビームボールの群れが慌ただしく動いては、敵がスクラップへと変わっていく。
「ビームトマホーク!」
柄の長いトマホークを作り、振り回して敵軍を切り崩す。こいつら耐久力が高いわけじゃない。ゾンビみたいな戦法が取れるだけだ。
「砕け散りやがれ!」
右手に今日一番の出力でビームを圧縮。一番奥のサバイブ相手に投げつける。
「障壁発動」
「無駄だ!」
中ボスの群れと壁に向けて、俺の投げた必殺技が炸裂。爆炎を撒き散らしながら大爆発を起こす。ここまでは読んでいた。ここでブースト全開。まだ光の竜巻が残っているうちに中心に突っ込む。
「トルネードクラッシュ!!」
ビーム竜巻の力をそのまま吸収して全身に纏う。さらに加速してケーブルや残骸の壁を突き抜けていく。
「遮断」
天井と床が俺を挟むように迫る。ビームエネルギーをさらに追加して掘り進んでやると、ケーブルと残骸の群れが両手となって掴みに来た。
「ビームハンド!」
お互いの両手ががっちり組み合う。こっちはビームでパワーも上だ。焼き尽くしながら正面突破だ。破壊音と焼き尽くす煙で周辺が満たされていく。突進かまそうとしたら、一番奥のサバイブ機が輝き出す。胸の部分が開いて、超高密度の熱線が飛んできた。
「効くかよ!」
ビームバリアを展開して吸収してやる。サバイブはすぐに照射を止めて、こちらに肉薄してきた。やっと戦う気になったか。凄まじい速度で直進してくる。パイロットがいないからGを気にしなくていいのだろう。
「くたばれ!」
やつの剣と俺のビームブレードが激突する。たいしたパワーじゃないか。何度も切り合って距離を取る。欠けもしないとは頑丈な刃だ。しかも本体が速い。壁や床から発射されるミサイルが邪魔で、ビームバリアを解除できない。視界も悪くなる中で、バリアを斬りつける音がするのはきつい。体力も精神力も削られる気分だ。
「あの剣はなんだ?」
「高周波振動剣ですね。切断重視の剣です。加えてビームも付加されていますから、パラドクスでなければ切られているかと」
「ほほう、面白い武器だ。武器ってのは興味とロマンがあるねえ。壊すのは残念だが、リミッター解除だ」
「了解。パラドクスリミッター20%解除」
今の俺が認識して操作できる範囲でリミッターを解除。超スピードでサバイブの背後に回り込み、横薙ぎに斬りつける。ヒット。だが浅い。すぐに距離を取られるので追いかける。
「遅いぜ!」
ビームナックルで頭部を破壊する。拳が頭部に半分ほどめり込み、爆裂して首まで消えてなくなる。胸のビームで応戦してくるが、吸収し続ける。両手でしっかりと本体を掴み、高密度のビームエネルギーを流し込む。
「このまま消えちまえ!」
「修復不可……進化……続行……」
大出力で放射することで、サバイブの体を丸ごと飲み込んでいく。大爆発を起こして跡形もなく消えた……はずだが。
「まだケーブルも壁も動いているんだなこれが」
「コロニーごと消すしかないようですね。残せばこちらの記録も残るでしょう」
「消しちまうか」
巨大なビームエネルギーの塊を作り、壁に向かって投げ飛ばす。爆炎が消えると、久しぶりに星の海が見えた。修復して閉じようとしているので、急いで脱出する。少し離れて外から見ると、コロニーそのものが生き物のように揺れている。キモい。
「ハヤテ様、ご無事でしたか!」
「安心しろ。なんともない」
シオンの声が聞こえる。なるべく優しく応答しながら、サバイブコロニーの異変を観察する。ケーブルと残骸が伸び、3つ首の龍が生えているように見えた。
「洒落た化け物になったじゃないか。ボスっぽくて嫌いじゃないぜ」
試しに高出力のビームを撃ってみるが、流石に敵の大きさが規格外すぎる。少し欠けた程度では動きが止まらない。お返しとばかりに、口からまばゆく光るビームのブレスが飛んできた。
「そんな大雑把な攻撃に当たるものかよ」
大きく旋回して回避すればいいだけだが、問題はどう消すかだ。パラドクスの全力を持ってすれば大ダメージにはなるだろうが、ここまで戦ってきて疲れた。さっさと倒して終わりたい。
「ノイジー、エゴ・サンクチュアリの砲撃で消せるか?」
「可能です。副砲2発で完全に消せる計算ですね」
消せるというのは、残骸を残さずしっかり焼却処分して証拠も消える、という意味だろう。ここでふと気になった。主砲って見たことないな。
「ノイジー、主砲ってどんくらいのもん消せる」
「月でしたら一撃で消せますが」
「単純な火力だけじゃつまらんな。なんか面白い攻撃あったらやって」
我ながらクソみてえな無茶振りである。だがノイジーは淡々と作業を開始した。
「では次元崩壊砲スタンバイ。ロックオン完了。射線に味方なし」
アホほどでかい主砲の先端に、黒と白の混ざったエネルギーの玉が形成されていく。バチバチと迸る何かと、膨大なエネルギーによって歪む空間が見て取れる。危険だと察知したのか、敵の龍が3匹ともブレスを吐いてくる。
「発射」
宇宙の闇を震わせながら敵の中心に着弾。敵コロニーを中心として空間が歪み、次元の裂け目ができていく。なんだか龍がもがき苦しみながら脱出しようとしているみたいだ。やがて小さな球体にまで圧縮されたコロニーは、次元の裂け目や歪みがもとに戻った瞬間大爆発した。宇宙に盛大な花火が咲き誇る。これだけの爆発だ。部品の一つも残っちゃいないだろう。
「おおー……やべえもん積んでやがるな」
「とてつもない破壊力ですわ」
「完全消滅確認。他コロニーへの通信記録なし。秘密は守られました」
「よくやった。帰還する」
部屋に戻るとシオンが待っていた。しっかりケーキと紅茶が用意されている。
「おかえりなさいませ、ハヤテ様。こちらの準備はばっちりですよ」
「ありがとう、いただくよ」
冷たい飲み物と甘いケーキが疲れを癒やす。今回の潜入は長かった。興味本位で冷やかしに行くのも考えものだな。
「ただ働きってのは虚しいが、シオンのケーキがご褒美になってくれたな」
「プロジェクトサバイブのデータと、自己修復・自己進化プロセスの解析は済んでいます。次に同じ敵が出れば、簡単にハッキングからの停止も可能でしょう」
サバイブは独自のシステムだったが、ノイジーと博士の科学力なら解析は容易だったらしい。全容さえわかってしまえば、いくらでも応用は効くんだと。便利だねえ。なら多少は戦ったかいがあったかな。
「色々と戦ったことで、ある程度クセは掴めた。自分のも敵のもな。経験が活かせる日も近いはずだ」
これからも戦いは起きる。人がいる世界から争いが消えることはない。俺達を知れば誰もが欲しがるだろう。だからこそ、誰であろうと殺せなきゃいけない。
「さて、次はシオンの専用機だな」
「はい、もっとハヤテ様のお役に立ちたいです」
「気負うなよ。気楽に生きていい」
「お世話するのは楽しいですわ」
「ならいい」
結構押しが強いな。自我が出始めているのだろう。ならばうるさく言わず、成長を見守っていくとするか。ついでに作るか? 2体目のクローン。いつも1人で留守番も退屈だろう。生み出す理由がしょぼいが、シオンが寂しくなくなるのはいいことだし、俺もあと1人くらいは欲しい。
「ハヤテ様? どうされました?」
「そろそろもう1人作ろうかなって。仲間のクローンがいたほうがいいだろ?」
「まあ、素敵ですね。どんな子になるのでしょうか?」
「シオンが黒髪ロングだから、白か銀で、肩にかかるくらいの髪で……胸はそこそこある方がいいか。あと目の色も考えないとな」
こんな感じで今後の話をしていく。今回はシオンも一緒だ。一切妥協はしない。専用機も新しいクローンも楽しみだ。まだまだこの世界でやりたいことは多い。本当にいい世界に来たもんだ。いや、いいコロニーに来たもんだ。明日からも楽しく生きていこう。そう心の中で誓った。




