表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/23

徹底的大蹂躙

 2人で店を出て走り去る途中、後方で店が爆発した。反射的に身をかがめて振り返ると、豪華なレストランが黒煙に染まっている。


「爆撃!? リゾートコロニー内で!?」


 信じられんな。制圧してもリゾートの機能は残さないとダメだろ。じゃなきゃこのコロニー自体が無価値になる。何を考えているんだ。


「ロック様、あれを!」


 俺たちの泊まっているホテルのてっぺんが爆発した。ガラスと鉄骨が火花を散らしながら崩れ落ちている。おいおいやめろよ、今日どこ泊まるんだよ。


「そんな……まだ残っていて!」


 急いで走っていこうとするシオンを止める。焦り始めているようだが、理由がわからない。


「落ち着いてくれエリザ。どうした? 何があった?」


「ぬいぐるみが……」


「ぬいぐるみ?」


「遊園地でもらった、2人の思い出の、記念のぬいぐるみが……お部屋に飾るって約束したのに……」


 あの白い虎のやつか。景品のぬいぐるみを、そこまで大切に想っていたんだな。生まれて間もないシオンにとって、あれはまだ数少ない思い出の、しかも形に残る品物だったのだろう。


「今から行くのは危険だ。落ち着け」


「私の身体能力なら、多少の無理はできるはずです! どうか!」


「ダメだ。まず無理をさせたくないんだよ」


 シオンを引き寄せ、頭を撫でながら言い聞かせる。こんなことで怪我なんてして欲しくない。お前以外に傷ついて欲しくない存在がいないんだ。


「ご安心を。荷物はすべて事前に転送しておきました」


「ナイスノイジー!」


「ありがとうノイジー。本当に……本当によかった……」


 ビルが揺れ、空中を特殊車両が飛び回っている。そして遙か先に光る何かが見えた。金色の西洋甲冑を着たような、巨大な物体だ。


「あれは?」


「このリゾートコロニー限定の、スーパーなロボットです。名前はロイヤルタイガー。剣、斧、ビーム、ミサイル、バルカン、火炎放射など武器は多彩です」


 ロイヤルタイガーは、頭がホワイトタイガーそのものである。金ピカの鎧を着た虎の獣人。それが第一印象だった。


「全長40m。コロニーの守護者として活躍しています。今回も警備部隊と共に出動しているのでしょう。コロニー内はすぐ鎮圧されるかもしれませんね」


「俺たちを転送しろ」


「了解」


 エゴ・サンクチュアリの司令室に転送されると、艦長の椅子にぬいぐるみが座っていた。


「無事だった……私の思い出……」


 ぬいぐるみを抱きしめているシオン。その目には涙が浮かんでいた。


「シオンはここにいてくれ。ぬいぐるみが逃げないように見張る係だ」


「ハヤテ様はどうされるのですか?」


「落とし前をつけさせる」


 シオンに辛い思い出を作りやがったな。徹底的になぶり殺してやる。俺の順風満帆な生活を脅かす害虫は、まとめて駆除しないとな。パラドクスに乗り込み、憎悪と殺意で心と体を満たしていく。


「コロニーの外部シャッター完全閉鎖。ビームフィールド5万kmまで照射完了。パラドクス、発進準備完了しました」


「皆殺しだ!!」


 宇宙へと飛び出すと、リゾートコロニーの外周部が完全にシャッターで閉じている。中から宇宙を見ることはできないだろう。これで暴れてもパラドクスを見られる住民はいない。気兼ねなく暴れられるぜ。 


「見つけたぜ」


「両軍とも40機を超えています。憂さ晴らしでも敵討ちでも十分な数ですね」


 モニターに敵機体が見えてきた。地球連合軍のバトルフレーム部隊と、コロニー同盟軍のコスモクラフト隊だ。戦闘が始まったばかりなのだろう。この手で殺せるやつが減る前でよかったよ。ぬいぐるみの仇討ちだ。奴ら全員、地獄でロブスターの殻剥きでもさせてやる。


「死んじまいなあ!」


『未確認機が突っ込んできます! うわあああ!』


 まずはコロニー同盟のコスモクラフト部隊に突っ込む。拳にビームを纏わせて一気に殴り抜ける。爆散する機体を振り返らずに、次の敵コックピットを蹴り抜いた。


『ぐべっ!』


『なんだ!? 連合の増援か!』


 両手からビームの奔流を放つ。光の洪水が一番近くの敵4機を飲み込み、装甲を溶かしながら貫通。機体は内部から爆発して散る。


『味方が! 反撃しろ!』


 敵が一斉にミサイルでロックオンしてくる。数十発の弾頭が弧を描いて迫るが、ビームバリアを展開し、ミサイルをすべて蒸発させた。


「ビームブレード!」


 コスモクラフトに肉薄し、右腕からビームブレードを形成。紫の刃が敵機の四肢を斬り飛ばし、動けない機体を地球連合の部隊の前に投げ飛ばす。追加で何機も蹴り飛ばしてあげた。


「煮るなり焼くなり好きにしな」


 目ざとく見つけた地球連合の機体が、宇宙を漂う機体に銃口を向けている。


『おっ、なんだこいつ? 手柄を分けてくれるのか?』


『こいつはありがてえ、やっちまえ!』


『待て! もう動けない! やめっ』


『撃つな! ぎゃああぁ!』


 ウッキウキで撃ってるやん。まあお前らもこのあと死ぬんだけどな。


「醜いねえ。嫌だ嫌だ」


『この野郎、許さん!』


『落ちろ!』


 ビームガンとミサイルポッドで攻撃してくる。高速で旋回しながら連射するが、パラドクスの機動性には追いつけない。急停止して敵機の背後を取る。


「痛かったら言ってくださいねー。俺が喜びますんで」


 両手から細いビームの棘を伸ばし、敵機5機のコクピットを串刺しにする。


『うげっ!? オレの腹に!!』


「ぐりぐりーっと」


『熱い! やめっ! ああああああ!』


 敵の腹に刺さったらしい棘を回転させて、内部を焼きながらドリルのようにかき回す。パイロットの悲鳴が長く続き、機体が痙攣するように爆発した。


『やられてたまるか!』


『囲んで潰せ!』


 ビームソードを構えた機体が俺を取り囲む。面白いじゃないか。その場で止まって攻撃を食らってやる。


『終わったな!』


『仲間の仇だ!』


「なんなんだ今のは?」


 ビーム系は質や大小にかかわらず一切通用しない。近づきすぎたアホどもを消そう。頭部、肩、肘、足、背中などあらゆる場所からビームを連射してスクラップに変えていく。


『そんなっ! 効いてないおわあああ!』


『なんだよこれ! どうすればうげえ!』


『下がれお前たち! ここは私がやる!』


 ノーマルよりでかいコスモクラフトだ。両肩のバズーカと実体剣のバスターソードが武器だろう。物理に絞っているのは褒めてやる。


『ぬうぅん!』


 剣の大振りを避けて距離を取る。追撃で放たれたバズーカをかわしてみると、背後で大爆発が起こる。なるほど、普通の火力じゃないな。どうせパラドクスに傷はつかないだろうが、ここで油断はしない。一瞬で肉薄して拳の連打を浴びせる。


「そらそらそら! 動きが遅いぞ!」


 敵装甲が折れ曲がり、部品と火花が飛び、徐々に動きも鈍くなる。


『ぬぐううう! この程度で怯むものかああ!』


 敵機がバスターソードを振り下ろす。右手にビームソードを展開して、振り上げることで応戦。剣ごと右腕を斬り飛ばした。


『私の剣を!? ならばこれでどうだ!』


 敵が動く瞬間には背後に回り込んでいる。やつはもう片方の腕でこちらに掴みかかりながら、両肩のバズーカで道連れにするつもりだったのだろう。


『そんな!?』


「悪いな。それは別の戦闘で見たんだよ」


『おのれ無念!』


 敵の背中に手を当てて、大出力のビームで大穴を開けてやった。頭部と四肢以外が完全に消え去り、爆発すら起こらなかった。

 次は敵艦だ。主砲を発射してくるので、その中を突っ切って砲塔の中へ入る。


「ビームドリル!」


 内部を掘り進めて上へ行くと、腕がブリッジを突き破った。


『のわあああぁ! どういうことだあああ!』


「爆発まで5、4、3……」


『退避! 総員退避……』


「ビームエクスプロージョン!!」


 パラドクスを中心としてビームエネルギーによる大爆発を起こす。敵艦と周囲の機体を丸ごと飲み込んで消滅させた。これで同盟軍の半分以上は消えたな。


『いいぞ! どこのどいつか知らんがオレたちの勝ちだ!』


「と思っていたのか?」


 近くにいた連合軍のバトルフレーム・セイバーをまとめて撃ち抜いていく。全く予想外だったのか、微動だにせず火花を散らしてから消えていった。


『おい、何やってんだ! こっちは味方だぞ!』


「いねえんだよ味方なんて!」


 巨大なビームの鎌を作り出し、10機くらいまとめて上半身を斬り飛ばす。ビームに大きさの上限などない。一振りで大量に巻き込むことも可能だ。


「死ぬがいい!」


 両腕で敵機体にラリアットをかまし、そのまま敵艦ブリッジに叩きつける。


『来るな! 来るなあああ!!』


『ぎゃああああ!!』


 戦艦も機体もひしゃげて火花が散り、爆発を起こすが敵艦はまだ沈んじゃいない。


「助かったと思ったか? あの世に行きなあ!」


 右手から戦艦を10は飲み込めるビームボールを出す。ゆっくりと紫の光が敵艦を飲み込み、爆炎すらもかき消していく。中々に美しい景色じゃないか。


「甘い」


 飛来するスナイパーライフルのビームをキャッチする。そのまま吸収して予測ポイントに撃ち返す。速度も威力も5倍にしてやった。


「着弾確認。やはり雑兵ではAIの予測を上回れませんね。おっと、通信が来ていますよ」


『所属不明機へ、応答しろ! どこの所属だ!』


 敵のバトルフレームから通信が来る。青くて角のついたアーチャータイプだ。両腰についている長い砲塔からして火力タイプだろう。


『こちらは地球連合所属ブルーフラッグ隊だ! 貴様の所属と作戦目的を答えろ!!』


 女の声だな。毎回のことだが通信などしない。俺たちの情報は渡さないのだ。


「通信は繋げなくていいが、俺らは所属なし。目的はシオンを悲しませた落とし前をつけさせるってとこか?」


「リゾートを台無しにされたことと、ロブスターも付け加えれば完璧ですね」


「なるほど、じゃあそれでいくか」


『応答しろ! でなければ一斉に撃つ!』


「今まで撃たなかったかのような言い分だこと」


 数十のバトルフレームが銃口を向けている。コロニー同盟の生き残りも隊列を組み始めていた。


『味方でないのなら投降しろ! これ以上の好き勝手はさせん! ただちに武装解除してコクピットから出ろ!』


 この惨状でどうして優位に立っている口調なんだこいつ。


「俺に指図すんじゃねえクソアマ」


 右手にビームボールを形成。頭上高くに打ち上げて、宇宙にビームの雨を降らす。


『回避だ! 総員回避!』


「無駄だ」


 縦横無尽に全方位から降り注ぐ雨は、普通の人間すら通る隙間がないほどの暴風雨だ。吹き荒れる雨粒は、一撃必殺の威力を持って襲いかかる。


『こっこんなのどうやってぎゃああぁぁ!』


『逃げられない! 助け……うわああああ!!』


『くるな! くるなあああ!』


 あらゆる装甲を貫通して暴れまわるビームは、ロボットの図体と機動力ではどうしようもない。青い機体を残し、戦艦も含めて全滅させた。


『バカな……こんなことが……こいつっ!』


「俺の気分で生かされたと気づいたか? さあどうする?」


 もうこいつに逃げ場はない。帰る場所もない。ここからどんな行動に出るのか純粋に気になる。動き出すまで待ってやろう。


『艦が……だが味方がコロニーを制圧してくれていればいい! お前を落とせば勝ちだ! 消えてなくなれ!』


 腰についている2個のロングカノンを撃ってくる。出力も連射力もある。だがビームだ。こいつ何も見ていなかったのか? 少し大げさに避けてみる。


『ふっ、この火力は怖かろう! 怯えろ!』


「火力で突破できると思っているのか……実際可能か?」


「宇宙が無に帰る力を一点に集中すれば可能では?」


 ノイジーが呆れている気がする。AIなのにめんどくさそうな口調である。急に無能が出てきたせいで毒気を抜かれてきていた。ビームを吸収しながら急接近して、砲塔を握り潰す。


『そんな!? 最新型だぞ!』


 殴りかかってくるので掴んで止める。ボディブローを入れて回し蹴りで大きく後退させ、高速で回り込んで逆側に殴り飛ばす。


『うがっ!? げう!? あがあ!?』


「終わりにしてやる!」


 ビームエネルギーを右足に収束。最大加速でコクピットを蹴り抜いていく。


「必殺! パラドクスキイイィィック!!」


『こんなことが、あってたまるかああああぁぁ!!』


 今日イチの大爆発とともに、両軍は完全に消滅した。

 これで落とし前はつけたし、リゾートコロニー内の動向も気になる。俺はステルスモードにしてエゴサンクチュアリに帰還した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ